レンジマトリクス方式による賃金管理とは(3)

レンジマトリクス方式による賃金管理とは(3)

 

(2)より続く

 

以上が、いわば定期昇給だけの昇給の仕組みです。

ここからは、ベースアップがあった際の取り扱いを説明します。

 

 

 

表3:表12%のベア2%があった場合の例

 
           

40

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-1.0%

-0.5%

2.0%

4.0%

6.0%

37

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-0.5%

0.0%

4.0%

6.0%

8.0%

34

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0.0%

0.5%

6.0%

8.0%

10.0%

31

 

 

 

 

 

 

     

 

 

D

C

B(標準)

           

 

 表3は、表12%のベースアップがあったものとして標準的な昇給率を4%にアップさせて、昇給率を展開したものです。

さきほどと同様に、賃金が33万円で考課結果がAだった場合、翌年の賃金は33万円の8%昇給で、356,400円となります。賃金が38万円で考課結果がCの場合は同じマイナス昇給が適用されて、翌年は378,100円となります。1回の昇給考課で、5万円あった賃金格差が、21,700円に縮小したことになります。

1では金額差がまだ28,300円あったのに比べて、表3ではベースアップの効果が加わり、より小さくなったことがわかります。

 

次に、表3を昇給金額で表示してみましょう。

 

 

 

表4:表3を昇給額で表示したレンジマトリクスの例

           

40

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-3,550

-1,775

7,100

14,200

21,300

37

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-1,775

0

14,200

21,300

28,400

34

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0

1,775

21,300

28,400

35,500

31

 

 

 

 

 

 

     

 

 

D

C

B(標準)

           

 

ここでも、賃金が33万円で考課結果がAだった場合と、賃金が38万円で考課結果がCの場合を見てみると、5万円だった賃金格差が、19,825円にまで縮小したことがわかります。

 

このように、表3や表4はベースアップを直接反映させているため、賃金格差の縮小という面では効果的ですが、その半面、すぐに昇給が頭打ちになる傾向があります。

ここに例示した表でも、一つのバンドにおける3万円のレンジに対して、標準以上の考課結果であれば1万円を優に超える昇給があるため、標準域にいると12回の人事考課で減速域に入ってしまい、昇給が抑制されます。

ここに、人材戦略上、考慮しなければならないポイントがあります。

一般に、標準以上の昇給考課の社員であれば、現在の賃金レンジに相当するレベルから、より上位のレベルに昇進・昇格していくことが期待されていることになります。そうであれば、昇給が抑制されてもあまり問題はありません。より上位のレベルに上がっていくことで、再び適切な昇給が行われるはずだからです。

もし、上位のレベルに上がることができないというのであれば、昇給考課の結果も芳しくないはずです。場合によっては、戦力外通告の対象となる社員であるかもしれません。そうであれば、昇給が抑制気味な(ときには昇給させない)のは、賃金管理上、適切なものといえるでしょう。

要は、人材戦略上、このレベルはどの程度のペースで昇進・昇格していくことが想定されているのか、そのペースと予想される昇給のスピードが一致しているのかが問題となります。これがずれているならば、レンジそのものを見直すことが必要かもしれません。

この課題について、次に検討してみましょう。

 

(以下、続く)

 

作成・編集:人事戦略チーム(2015331日更新)