レンジマトリクス方式による賃金管理とは(2)
はじめに、レンジマトリクス方式のイメージをざっと掴んでいただくため、表1をご覧ください。
表1:昇給率で表示したレンジマトリクスの例 |
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-1.0% |
-0.5% |
0.0% |
2.0% |
4.0% |
37 |
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-0.5% |
0.0% |
2.0% |
4.0% |
6.0% |
34 |
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0.0% |
0.5% |
4.0% |
6.0% |
8.0% |
31 |
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D |
C |
B(標準) |
A |
S |
この表は、縦軸に金額(ここでは万円単位の月額)、横軸に人事(昇給)考課の結果をとって、標準(縦軸の中央のバンド=34~37万円の間=でB評価をとっているもの)で2%の昇給率を基軸として展開した昇給表です。
レンジマトリクス方式は、もともとの賃金の金額によって、高いほど昇給しにくく、低いほどより多く昇給するのが、特徴であり期待される効果です。また、昇給考課が標準以上であれば原則的には昇給しますが、考課が標準に達さない場合は昇給がない(表1では僅かながらも賃金が減少するケースもある)のも、この方式の特徴です。
金額も考課も標準的という中央のボックスにおいて適用される2%という昇給率は、毎年安定的に実現されるのであれば、定期昇給に相当するものとみなすことができます。
さて、レンジマトリクス方式では個々の昇給は次のようになります。
現在の賃金が33万円で考課結果がAだった場合、翌年の賃金は33万円の6%昇給で、349,800円となります。賃金が38万円で考課結果がCの場合、マイナス昇給が適用されて、翌年は378,100円となります。5万円あった賃金格差が、1回の昇給考課で28,300円に縮小したことになります。標準の昇給幅が大きいほど、もともとあった賃金格差は考課結果に応じて縮小していくことが可能となる仕組みです。
この表では、より高い賃金(上方)ほど昇給しにくく、より低い賃金(下方)ほど昇給幅が大きくなるように、昇給率を設定します。したがって、右下の(縦軸は下方のバンドで横軸は最も右=考課結果が最も良い=に位置する)ボックスでは、標準的な2%の4倍に相当する8%の昇給率となりますが、同じ考課結果でも、右上の(縦軸は上方のバンドに位置する)ボックスでは、半分の4%の昇給となります。
ここには、もともと賃金が高かったのであれば考課結果は良くて当然、もともと賃金が低いのに考課結果が良ければ、大きく昇給させないと、同じ考課結果の社員に追い付けない、という考え方があります。そうした考え方に基づいて昇給率を展開しています。
ちなみに、上の方のバンドを減速域(昇給にブレーキをかけるという意味)、下の方を加速域(遅れを取り戻すまで優先的に昇給させるという意味)、中央のバンドを標準域と呼ぶことがあります。
参考までに、以下に表1を昇給額(円)で展開したものを表2として例示しておきます。
表2:表1を昇給額で表示したレンジマトリクスの例 |
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-3,550 |
-1,775 |
0 |
7,100 |
14,200 |
37 |
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-1,775 |
0 |
7,100 |
14,200 |
21,300 |
34 |
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0 |
1,775 |
14,200 |
21,300 |
28,400 |
31 |
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D |
C |
B(標準) |
A |
S |
ここでは、表1の昇給率にレンジの中央値(355,000円)を乗じて昇給額を算出しています。
表1のように昇給率を定める方式は、ひとり一人の実際の賃金に昇給率を乗じるため、考課結果が良くても、もとの金額が低いと、昇給額としては想定したほどの効果が出ない場合があります。そこで、もともと高い(減速域にある)人の昇給額をより抑制し、もともと低い(加速域にある)人の昇給額をより多く昇給させるには、ある金額(ここではレンジの中央値)に乗じて一律に算定するほうが効果的です。
表1の例でいえば、賃金が33万円で考課結果がAだった場合、翌年の賃金は351,300円となります。賃金が38万円で考課結果がCの場合は378,225円となります。5万円あった賃金格差が、1回の昇給考課で26,925円に縮小しました。
僅かではありますが、表1の28,300円よりも賃金格差は縮小しています。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年3月30日更新)