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より高い給与を得るには(1)

より高い給与を得るには(1

 

 今年は賃金引上げの機運が高まっています。昨年からインフレ手当を支給するなどして事実上の賃金引き上げを行っている企業も珍しくなく、生活費の上昇を賃上げでカバーできるかもしれません。

 しかし、全ての企業・業種で相当程度の賃金引き上げが可能というわけではありません。たとえば、100円のコストアップをいくらほど価格に転嫁できているかを調査(注1)したところ、平均で約40円であり、残りの60円以上は企業が負担しているのが現状です。特に、医療・福祉・保健衛生、娯楽サービス、運輸・倉庫、旅館・ホテル、情報サービス、金融、リース・賃貸、人材派遣・紹介、農林・水産、輸送用機械・器具製造などの業種は価格転嫁が1027%と低い水準にあり、企業が負担しているコスト上昇分が圧倒的に多くを占めています。これらの業種の多くが労働集約的である点も、賃上げがどこまで波及し浸透していくのか疑問視せざるを得ないところです。

 このようにコストアップ分を価格に転嫁できないとなれば、何らかの対応策を取ってコストアップを吸収しようとするしかありません。そこで、価格転嫁以外の対応策に自社経費の削減を挙げた企業が約6割に達しますが、値上げされる製品・サービスが多い状況では、経費削減にはすぐに限界が来るはずです。こうした企業では、賃上げの余力は極めて乏しいと言わざるを得ません。

反対にコストアップを価格に転嫁できている企業や、そもそもコストアップ要因よりも増収要因のほうが大きくて増益となっている企業では、近年見られなかった幅で賃金が引き上げられるでしょう。

 こうした経済情勢や個別企業の人事動向のおかげで賃金が上昇するのは悪いことではありませんが、働く人一人ひとりが自らの手で賃上げを実現することがあってもいいはずです。むしろ、主体的に賃金を引き上げようとする動きがあることのほうが自然でしょう。

 そのためには、まず、自分の給与の中身を知ることから始めます。給与の中身、すなわち、毎月の給与の明細や年収の構成を理解します。次に、自分の給与の立ち位置を知ることが必要です。自社内での位置づけは元より、広く社外での位置づけを知っておきます。その上で、より高い給与を得るため採るべきアクションを検討していきます。

以下、3回にわたって、そのプロセスとポイントを説明していきたいと思います。

 

(2)に続く

 

【注1

詳しくは帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(202212月)」を参照してください。

価格転嫁に関する実態調査(2022年12月) (tdb.co.jp)

 

作成 QMS代表 井田 修(2023131日)