オワハラに陥る前に(3)~新卒は採用して終わりではない

オワハラに陥る前に(3)~新卒は採用して終わりではない

 

(2)より続く

 

前回、述べましたが、オワハラを行って企業が得をすることがあるとは、到底、思えません。そんなことは、当の企業、なかでも人事担当の方々が重々にご存じのはずです。

それなのに、なぜ、オワハラを行ってしまうのでしょうか。少なくとも、オワハラと学生に受け止められてしまう行為が、どうして発生してしまうのでしょうか。

まずは、この点を考えてみたいと思います。

 

推測ですが、オワハラになってしまう企業または採用担当者は、採用・内定の作業を進めるのに精一杯で、その結果を受け止める余裕が、あまりないのかもしれません。それゆえに、就活中の学生を目の前にして、表面的な笑顔さえも作ることができず、威圧的な態度をとってしまうのでしょうか。

たとえば、人事(採用担当)の評価が採用人数の達成度であるとか、経営者から採用コストに見合った結果を出せとプレッシャーをかけられえているとか、目先の事情は、ある程度は想像できます。

しかし、そのくらいのプレッシャーであれば、一般の企業人、特に営業や開発などに従事している人たちにかかるプレッシャーと比べて、特段、強いとも思えません。

 

もしかすると、新卒採用活動において、採用や内定がゴールになってしまっているのかもしれません。これは企業だけでなく、学生にも当てはまることかもしれません。

敢えて言うまでもないことですが、内定をだす(とる)とか、入社するとか、あくまでも一連のプロセスにおける、ひとつのステップに過ぎません。

採用する企業からいえば、戦力たりうる人材を確保し実際に活躍してもらうことが目的のはずです。学生からいえば、社会人としてスタートする場を確保し、仕事を通じて何らかの形で社会に貢献することが目的でしょう。

 

そもそも、新卒の就職(採用)活動は、何を目的に行われているものでしょうか。

学生にとっては、就職する、それも職業人生の大半を過ごす可能性がある職場を選ぶことに、ほかなりません。

では、企業にとっては、どういう意味があるのでしょうか。

多分、単に労働者を雇う、ということではないはずです。それであれば、中途採用や非正規社員などの採用と同じことになってしまいます。

 

本来は、学生との戦略的な関係構築こそが、企業が新卒採用活動において実現すべきミッションではないでしょうか。

つまり、企業のミッションをいっしょに実現する仲間を発見・発掘する場であると同時に、就職活動というチャネルを通じて一種の営業活動やマーケティング活動をすることで、採用に至らなかった学生にも、自社を知ってもらい、できることなら自社の潜在的なファンになってもらうことが、企業として狙うべき目的ではないでしょうか。

言い換えれば、採用できなかった学生に自社を知ってもらい、将来、その学生たちが顧客になったり、取引相手になったりしたときに、できることなら、いい印象をもっていて欲しいはずです。悪い企業イメージをもっていてほしい企業はないでしょう。

 

また、仮に、内定を断ったり、内定を得ているのに別の会社に就活を行ったりする学生に、問題があると考えてみましょう。

それに対して企業が採りうる対策は何でしょうか。オワハラという圧力を学生個人にかけることでしょうか。それで問題が解決するのでしょうか。

 

まず、企業には学生を変えることはできない、という当然の前提条件があります。学生の質や数は、事業環境のひとつの与件として認識するしかないでしょう。むしろ、学生の質的・量的な変化に対応できていない企業にこそ、問題があると言わざるを得ないでしょう。

採用したいと企業が考える学生が、内定を断ったり、内定を得ているのに別の会社に就活を行ったりするのであれば、その理由や経緯に応じて、自社の採用プロセスや採用(内定判断)の基準を見直さなければならないでしょう。

既に一部の企業では試行しているそうですが、SNSなども含めた学生の言動やエントリーシートや内定承諾書などの提出物などを分析して、内定を断ってくる可能性を推定し、質的な条件をクリアすれば多めに内定を出すとか、どうしても採用したい内定者には個別に経営トップが内定者フォローをするといった企業もあります。

 

考えようによっては、一方的に内定を断ったり、第一志望だったはずの会社から内定を得ているのに別の会社に就活を行ったりする程度の人材に内定を出していたことを反省して、そうした学生を採用しなくて済んだ幸運を感謝すべきかもしれません。

もし、こうした学生がそのまま入社していたら、戦力になるならない以前に、入社後、間もなく退職してしまうことが十分に想定できます。

実際、中小規模やベンチャーの企業からは、下手に新卒を採用するよりは、大手や中堅の企業から若手社員を中途採用するほうが、人数面でも人材の質の面でも、しっかりと確保できるという声が少なくありません。

 

(4)に続く

 

作成・編集:調査研究チーム(201591日更新)