ブラック化を招きかねない10のポイント(7)

ブラック化を招きかねない10のポイント(7)

 

(6)より続く。

 

 さて、最後にもう一度、10のポイントを見てみましょう。

 

1.事業戦略が外部環境の変化に適応していない(ことに気づいていない)

2.事業戦略に合った組織体制ができていない

3.仕事を効率的に進める仕組みがない

4.新たなITが導入されない

5.仕事の分担が極端に属人的

6.人材フローのマネジメントができていない

7.人材への投資が少ない

8.経営トップが専制的なマネジメント・スタイルをとっている

9.一種の身分制の下で仕事を個人に押し付ける

10.企業としての価値観が共通されていない

 

ひとつひとつは、気がつけば修正・変更が可能なものですが、ある程度まで進んでしまうと、対策を立案・実施するのは容易なことではありません。このままではまずいとか、明らかに問題が生じていることに気がついても、ブレーキがかからないのが、ブラック化しつつある企業の実情ではないでしょうか。

また、第三者が話を聞けば明らかにおかしいと感じても、社内の関係者はそれが当たり前と思っていることもよくあります。始めは小さな問題であっても、時間が経ち、少しずつ大きな問題になっていくので、当事者はその変化に気づきにくいのではないでしょうか。

これらのポイントの背景としてある程度共通に見てとれるのは、財務面での余裕のなさとか、短期的な業績向上や会社の方針(理念、ビジョン)への過度なプレッシャーの存在が指摘できそうです。

また、財務面には多少の余裕があっても、問題を抱えている企業もあります。実際に赤字になっていなくても事業の成長スピードが鈍化して、いわゆる成長の踊り場にある企業や、会社全体ではそれなりに儲かっていても、明らかに赤字で業績改善がとても見込めない事業や、経営者の私的好奇心を満たすためだけとしか思えない事業などに利益を注ぎ込んでいたりするような企業なども、ブラック化の素地があるかもしれません。

特に、経営情報を社員にあまり公開していない組織ほど、財務情報をもっている経営者や役員などと、もっていない一般の社員や非正規の社員の間で、会社の現状についての認識が大きくずれてしまい、余計に状況を悪化させることが多いように思われます。

現場の社員からすれば、例えば顧客第一主義とかコミュニケーション重視などを標榜している企業であれば、クレームにきちんと対応するために必要なシステムを提案するでしょう。

しかし、「業績が悪い時に投資の話は無理だ」とか「現場で何とか処理しろ」「お客さんを説得するのも仕事のうちだ」と経営者から言われて、長時間の残業が恒常的に発生するようでは、「うちはブラックだ」となりかねません。現場が非正規の社員ばかりという現実があれば、ブラックバイトと言わざるをえません。

ここで、役員や管理職の存在が問題を複雑化させます。ストレートに現場の状況が経営トップに伝わるのであれば、組織全体が同じ問題状況を共有することもできますが、間にいくつかの階層や関係者が存在するとなると、それぞれが異なる問題を認識することになるでしょう。

経営者はオープンな組織運営を心掛けており、事業運営の方針や財務状況などが現場の社員まで浸透しているつもりであっても、現場は全く知らないというのはよくあることです。役員や管理職に悪意がなくても、日々の忙しさや仕事へのプレッシャーから、現場には厳しく接する一方で、経営者にはいい報告ばかり、などというのは普通のことでしょう。

トップと現場が直接つながっている程度の小規模な企業であれば、ブラック化を止めることが相対的に容易、つまりは経営者次第、と言えそうです。そうでない中規模以上の企業は、程度の違いはあっても、何も対策を打たずに放っておけば、経営者の意識や意図とは関係なく、ブラック化が進むのは必然と言えるかもしれません。

もし、そうであるならば、今回挙げてみた10のポイントを何かにつけてチェックしてみてください。いくつかの項目が思い当たる節がありましたなら、すぐに対策を取りましょう。遅くなるほど、悪循環に陥って、容易に抜け出すことはできなくなりますから、即日実行を心掛けたいものです。

 

作成・編集:調査研究チーム(2015324日更新)