ロバート・レッドフォード氏の訃報に接して

ロバート・レッドフォード氏の訃報に接して

 

昨晩から今朝にかけて日本でもネットやTVのニュースで、アメリカの俳優・映画監督・映画プロデューサーでサンダンス・インスティテュート(注1)創立者のロバート・レッドフォード氏が89歳で死去したことが報じられました。

氏は1960年代より映画に俳優として出演し、「明日に向かって撃て!」でスターとしての地位を決定的なものにしました。70年代にも多くの作品に主演し、「スティング」「追憶」「華麗なるギャッツビー」「大統領の陰謀」など、今でも語り継がれたり繰り返しリメイクされたりする名作に主演しました。80年以降は監督やプロデューサーとしても手腕を発揮し、初めて監督した「普通の人々」でアカデミー賞の監督賞と作品賞を受賞するなど、優れた実績を挙げました。

このように映画製作に直接関わるとともに、70年代後半以降は、サンダンス・インスティテュートを設立し、独立した映画作りを志す人々に映画製作の場を提供するとともに、その発表の場としてサンダンス映画祭を主宰してきました。この活動の中から映画製作者となったのは、クエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュ、コーエン兄弟、スティーブン・ソダ―バーグ、ブライアン・シンガー、デミアン・チャゼル、シアン・ヘダーなど、枚挙に暇がないほどです。

さて、筆者が個人的に観たことがあるのは以下の作品(注213)です。

 

出演作品

「明日に向かって撃て!」(“Butch Cassidy and The Sundance Kid1969USA

「夕陽に向かって走れ」(“Tell Them Willie Boy Is Here1969USA

「スティング」(“Sting1973USA

「追憶」(“The Way WE Were1973USA

「華麗なるギャッツビー」(“The Great Gatsby1974USA

「大統領の陰謀」(“All The President’s Men1976USA

「遠すぎた橋」(“A Bridge Too Far1977USA

「出逢い」(“The Electric Horseman1979USA

「ブルベイカー」(“Brubaker1980USA

「ナチュラル」(“Natural1984USA

 

監督作品

「普通の人々」(“Ordinary People1980USA

 

監督・製作・出演作品

「リバー・ランズ・スルー・イット」(“A River Runs Through It1992USA

 

氏は、50本以上の出演作品と20本以上の製作作品があります。実際に観ているものが少ないことを承知の上で言及するとすれば、スター俳優となった70年代から、監督やプロデューサーの仕事もしながらサンダンス・インスティテュートを立ち上げて軌道に乗せていくその後の時代とのちょうど転換期にあった作品である「出逢い」「ブルベイカー」「ナチュラル」は、ある意味では氏の姿が反映されていると思ええるものです。

というのも、これらの作品は、演じる主人公のアイデンティティが揺れ動くものばかりでした。もしかすると、自らが俳優として演じることと演出・製作や映画を作ろうとする人々に場を与える役割との間で、氏自身も揺れ動くものがあったのかもしれません。

スターであり映画製作者であるというと、現役ではクリント・イーストウッドが浮かびます。作品を作り続けるという点ではイーストウッドはまだまだ頑張りそうですが、映画を作ったり発表したりする場を生み出したという点では、やはりレッドフォード氏の実績を高く評価すべきでしょう。

 

【注1

Sundance Institute - sundance.org

Robert Redford Legacy - sundance.org

 

 

【注2

B.J.トーマスの唄う主題歌“The Raindrops Keep Falling on My Head”もよく知られています。

 

 

【注3

【注4

作品とともに音楽で使用された“The Entertainer”も耳に馴染みます。

 

 

【注5

同じタイトルでバーブラ・ストライザンドの唄う主題歌も実に有名です。

 

 

【注6

【注7

「マスターズ・オブ・ライト」462465ページに本作について撮影監督だったゴードン・ウイリスがコメントしています。通常のスタジオでの撮影と異なり、実際の建物(米国国会図書館)で俯瞰ショットを取ったり、新聞社の編集室のシーンでは本物の蛍光灯を使用して撮影したりすることで、リアリズムを追求した画作りが行われたそうです。

 

 

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  作成・編集:QMS代表 井田修(2025917日)