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働くのに最高の職場2022<2021年調査>(1)

働くのに最高の職場20222021年調査>(1

 

 “The Great Resignation”(大退職時代)とも呼ばれる時代にあって、昨年に引き続き今年も112日に“Best Places to Work Employees’ Choice Award”がグラスドア社より発表されました。その結果について、アメリカ合衆国の大企業のうち上位100社にランキングされた企業を業種別にまとめてご紹介したものが表1です。

 

1:大手企業上位100社の業種別構成比

 

2022

2021

業種

社数

累計%

社数

累計%

過去平均

コンピューター関連

26

26

17

17

20.7

ITサービス

16

42

11

28

8.7

小売

9

51

10

38

6.3

メディカル製品

8

59

8

46

4.0

金融

7

66

9

55

7.0

メディカルサービス

5

71

6

61

11.3

コンサルティング

5

76

4

65

5.3

不動産

5

81

2

67

4.3

連邦政府機関

3

84

1

68

1.3

ホスピタリティサービス

2

86

6

74

4.3

消費財メーカー

2

88

5

79

5.3

産業機器メーカー

2

90

0

79

0.0

航空・宇宙

2

92

3

82

3.0

電力

2

94

0

82

0.0

外食

1

95

4

86

2.3

宗教法人

1

96

3

89

2.3

通信

1

97

2

91

1.3

教育

1

98

2

93

1.3

建設・建築

1

99

1

94

2.3

研究開発

1

100

1

95

1.7

 

   

 

 

 

 この表から明らかなように、今年は「コンピューター関連」と「ITサービス」の上位2業種が占める割合が高くなりました。過去平均(2021年までの5年間の平均)と比べると、特に「ITサービス」が2倍近く増えていることと、「メディカルサービス」(病院など)が半分近くに減っていることが目立ちます。

 「メディカルサービス」の減少は昨年も見られたことなので、2021年だけの問題ではないと思われます。コロナ禍が収束しない状況が続いていることを鑑みれば、当然と言えば当然の結果でしょう。業務の多さ、休みも取れない状況、代替要員不足など、従業員満足度が高いところがあるほうが不思議に思われます。

コロナ禍が影響しているという点では、「ホスピタリティサービス」(ホテル&リゾート、テーマパーク、クルーズなど)も同様です。操業できない状況が続いたりしている状況では、従業員満足度の前に雇用や賃金支払いが問題となる企業も多いでしょう。

これらの業種とは反対に、「コンピューター関連」や「ITサービス」などは久高業績につながる業務量や高賃金などの要因が相俟ってより高い従業員満足度を示す傾向があるのでしょう。こうした業界は仕事の質から言って、在宅勤務やリモートワークに適しているだけでなく、技術的にも在宅勤務やリモートワークを実施できる業界でもあります。そもそも自社の製品やサービスがリモートワークを支援するものである企業も多いでしょう。それらが、今回の業種別の集計結果につながっているものと思われます。

 

2:中堅中小企業上位50社の業種別構成比

 

2022

2021

業種

社数

累計%

社数

累計%

過去平均

コンピューター関連

17

34

8

16

14.3

ITサービス

7

48

5

26

3.7

人材サービス

5

58

6

38

1.0

金融

4

66

7

30

5.3

メディカルサービス

3

72

3

36

0.7

財務・会計サービス

3

78

1

38

0.7

不動産

2

82

2

40

3.3

広告・マーケティング

2

86

3

46

2.0

セキュリティ

2

90

0

46

0.0

コンサルティング

1

92

4

54

2.0

小売

1

94

2

58

1.7

自動車ディーラー

1

96

0

58

0.0

食品製造

1

98

0

58

0.0

連邦政府機関

1

100

0

58

0.0

           

 中堅・中小企業について見ても、大企業の上位100社で見られた傾向と同じものがはっきりとに出ています。こちらも「コンピューター関連」と「ITサービス」の占める割合が昨年からほぼ倍増しており、過去平均と比べると2.6倍を超えています。その要因として、在宅勤務やリモートワークを実施しているかどうかが大きなウエイトを占めているのではないかと推測されます。

 今年もまだコロナ禍が継続している現状があります。その中でいかに経済や社会をうまく機能させていくのかが問われます。

同時に、より高い賃金や処遇水準を求める人々はもとより、より柔軟な働き方を実践している組織(企業、公的機関、団体など)において働きたいと思って多くの人々が組織間を移動しているであろうアメリカの企業社会では、「金+柔軟な勤務を実現する体制やシステム」を労働者に提示できるところに人々は惹きつけられていくことが窺えます。それが今は「コンピューター関連」や「ITサービス」といった業種に優位性がありそうですが、今後はまた別の要因(たとえば企業のパーパスと自分のキャリアの適合性など)がより重視されるようになるかもしれません。

 

(2)に続く

 

【注1

大企業については、グラスドア社の以下のサイトに結果が公表されています。

Best Places to Work | Glassdoor

中堅・中小企業については、グラスドア社の以下のサイトをご覧ください。

Best Small and Medium Companies to Work For | Glassdoor

 

作成・編集:人事戦略チーム(2022124日)