スティーブン・ソンドハイムの訃報に接して

スティーブン・ソンドハイムの訃報に接して

 

一昨日、ブロードウェイミュージカルでいくつもの作品を生み出したスティーブン・ソンドハイムが自宅で急逝したことが公表されました。公式HP(注1)や一般のニュース報道(2)で訃報を目にされた方も多いでしょう。

15本のミュージカルを作詞・作曲し、4本で作詞を担当しました。代表的なもの(注3)は、「ウェストサイド物語」(作詞)、「ジプシー」(作詞)、「ローマで起こった奇妙な出来事」(作詞・作曲)、「リトル・ナイト・ミュージック」(作詞・作曲)、「スウィーニー・トッド」(作詞・作曲)、「イントゥ・ザ・ウッズ」(作詞・作曲)あたりでしょうか。

10代の頃に父親代わりだったオスカー・ハマーシュタイン2世から個人的にミュージカルの作り方を学んだソンドハイムは、演出家(兼プロデューサー)としてはハル・プリンスと若い頃から手を組み、後には脚本家のジェイムズ・ラパインとの共同作業が多くなりました。

個人的には、映画「ウェストサイド物語」(作詞、注4)がまず頭に浮かぶ作品です。ちょうど60年前の作品(ブロードウェイの舞台では1957年に上演)ですが、レナード・バーンスタインの音楽やジェローム・ロビンスの原案・振付・演出、ロバート・ワイズの映画ならではのアングルによる映像化(共同監督)などと相俟って、ソンドハイムの歌詞が忘れがたいものになっています。特に、“マリア”“トゥナイト”“クール”“サムウェア”などの曲は、元のミュージカルを知らない人でも、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

日本語版で実際に観たことがあるミュージカルとしては、「ジプシー」(作詞)が挙げられます。鳳蘭が主役のローズ、宮沢りえがローズの娘でタイトルロールでもあるジプシー・ローズを演じました。こちらはちょうど30年前の1991年に観た記憶があります。ステージママの母親とエンターテイナーである娘の葛藤がドラマのドライブとなっていることと、当時注目を集めていたりえママの存在が重なり合って見えてしまうことが、作品を観るのに却ってマイナスだったかもしれません。とはいえ、鳳蘭がローズを演じた姿は、観る者の視線を一身に集める迫力と偉大さがありました。

また、「太平洋序曲」は宮本亜門演出の初演を見ました。その後、この作品でブロードウェイに進出するなど、ソンドハイムのミュージカルは日本にブロードウェイのミュージカルのスタンダードを確立させただけでなく、ブロードウェイと日本を繋ぐうえでも重要な役割を今も果たしています。

 

【注1

以下のサイトに訃報があります。

I guess this is goodbye, old pal (sondheimsociety.com)

 

【注2

たとえば、以下のように報じられています

ミュージカル界の巨匠ソンドハイム氏死去、91歳 (msn.com)

 

【注3

作品リストは公式HPにあります。

Stephen Sondheim Society | Official biography

 

【注4

 

1961年に製作されたオリジナル版の映画

今年公開されるスピルバーグ監督版の映画

 

  作成・編集:QMS代表 井田修(20211128日)