「古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル」にみる普通の人を戦力化する要諦(1)

「古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル」にみる普通の人を戦力化する要諦(1

 

 今からざっと2000年ほど前、地中海や黒海の周辺から北大西洋や北海の沿岸に至る大帝国であったローマ帝国は、その版図に最大で28軍団を配備して、パクス・ロマーナ(ローマの平和)を実現し維持していました。

 ローマ帝国の軍隊は、歩兵を中心とする軍団制を敷いていました。標準的な軍団は10個のコホルスから構成されます。ひとつのコホルスは、6個のケントウリア(百人隊)から成ります。但し、第一コホルスのみ定員が800名程度と多く、他のコホルスは480名程度です。ひとつのケントウリアは百人隊とはいうものの、実際の定員は80名で、ひとつの軍団はざっと4,800人の兵士から構成されることになります。このほかに、騎兵隊、アウクシリア(補助軍、500名弱)、料理人、衛生兵などが軍団を構成します。更に、軍団として広範な版図に駐屯する歩兵軍団のほかに海軍もあります(注1)。

 単純計算では、帝国全体で13万人以上の兵士が存在することになりますが、これらの兵士は徴兵制で強制的に集められたわけではありません。志願して入隊し、給料をもらって軍事行動に参画する、いわばひとつの職業として兵士を選んだ人々です。実際に戦争や戦闘行為が発生すれば、文字通り、命を懸けて戦うことになりますが、その戦い方も日頃からのトレーニングに従って行われます。戦死したり、期間満了で除隊したりした場合には、年金を得られます。

これだけの規模の組織をローマ帝国の歴史とともに長年に亘って維持・発展させてきただけに、ある特定のヒーローやリーダーの力だけではなく、広く一般の人々、いわば普通の人たちを戦力化する仕組みやノウハウがあったはずです。グローバルで多民族の人々で構成させる集団が、現実の戦争を何度も通じて、勝つこともあれば壊滅的な敗北を喫したこともあった中で、生み出されていった普通の人を戦力化する方法論について考えてみたいと思います。

次回以降、「古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル」に描かれているストーリーを交えながら、その要諦をご紹介していきます。

 

(2)に続く

 

【注1

以下、このコラムでは、「古代ローマ帝国軍 非公式マニュアル」(フィリップ・マティザック著、安原和見訳、ちくま学芸文庫、2020年筑摩書房刊の日本語翻訳版)の記述により、古代ローマ軍の組織や人員などを紹介します。

 

作成・編集:QMS 代表 井田修(202171日更新)