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コロナ禍時代のマネジメントを語る座談会(2)~まずは資金の確保~

コロナ禍時代のマネジメントを語る座談会(2)~まずは資金の確保~

 

以下の座談会では、一部、守秘義務を要する事項に言及しているものもあるため、個人名などを特定されないよう、お話しいただいた方はすべて匿名とさせていただきます。それぞれの方々が経営される企業について語っていらっしゃる内容も、企業名を特定されないように、一部、変更して掲載しています。

 

ご参加いただいた方々のプロフィールは以下の通りです。

Aさん(男性40歳代):外食サービスを創業。現在もCEOとして複数の業態で多店舗展開の陣頭指揮を執る。

Bさん(男性60歳代):ある地方でマルチ・フランチャイジーを経営。外食、コンビニエンスストア、事業所向けサービス、教育関連サービスなどをフランチャイジーとして展開。

Cさん(女性50歳代):IT関連サービスを創業。観光や宿泊などに特化してビジネスを展開している。

Dさん(女性50歳代):製造業の会社を父親より引き継ぎ、CEOとして大きく業態転換を図った。現在、一種のSPA(製造小売業)として事業展開中。

Eさん(男性30歳代):医療・介護サービスの会社で新規事業を立ち上げ、その後、立ち上げた事業をスピンオフしてCEOに就任。現在、医療・介護関連のITサービス会社を経営。

Fさん(女性30歳代):大手税理士法人から独立し、数名の仲間とともに複数の士業で構成される事務所を開業し、代表に就任。

 

― 今年のコロナ禍では、春の緊急事態宣言で一気にビジネスが縮小したわけですが、皆さんは、まず何から対応策を取られましたか。

 

Eさん 社員やパートナーさんには、リモートワークで今まで通り、仕事をしてもらうようにお願いしました。もともと在宅勤務をしている人たちが多かったので、当初は良かったのですが、外出自粛が厳しくて、家族、特にお子さんがいる方は、在宅ワークと言われてもやりにくかったようです。

 

Fさん うちも最初の頃は割と影響が小さかったほうです。もともと3月、4月は忙しい時期ですし。ただ、その後はサポートしている会社や個人事業主の方々が本当に売り上げゼロになってしまい、持続化給付金のご相談ばかりになりました。

 

Cさん 緊急事態宣言で観光客がゼロになりましたから、うちのお取引先は売上がなくなりました。うちも売上を作ることができず、まずは、給付金の申請とか金融機関への相談でしたね。

 

Aさん まず取り掛かったのは、現金の確保でした。補助金や給付金は申請できるものは一通り申請して、金融機関や公庫にも頻繁に足を運びましたが、結局のところ、書類仕事ばかりが増えてしまいました。

 

― 関係機関の対応はいかがでしたか。

 

Bさん いいも悪いもないですね、何しろ、担当者も責任者もいないんだから。出勤できずに在宅勤務になっていることはわかりますが、一番相談したいときに電話もつながらないのでは、どうしようもありません。結局、コストのほうを抑えることが、短期的には効果がありました。

 

Dさん 金融機関の人(支店長クラス)の話では、一言いってもらえれば、資金はすぐに貸し付けるように準備はしてあったそうです。実際には、準備したものの半分程度しか融資につながらず、事務手続きに手間取って、思うように貸し出せなかったみたいです。幸い、弊社は日頃から資金繰りをガラス張りにしていたせいで、すぐにつなぎ資金を融資してもらいました。

 

― 6月くらいからは徐々にビジネスが戻ってきたかと思いますが。

 

Fさん 夏以降で最も影響が大きかったのは、新規のお客様に向けて行っていたセミナーやちょっとした講演ができなくなったことですね。リモートでやってみようとは思ったのですが、参加申し込みがほとんどなくて中止しました。

 

Cさん Go To トラベルに対応したシステムへの変更もあって、秋には多少は売上が立つようにはなったのですが、それも一瞬でした。今年は、知人に頭を下げて受注したシステム開発の下請け仕事で凌いでいる状態です。資金繰りは本当にギリギリです。

 

Eさん うちも同様です。医療や介護の現場ではITがどうのこうの言っている余裕はありません。今日、目の前の危機に対応するのが精一杯という状況が続いており、ITサービスでは如何ともし難いです。本当なら、使い捨ての白衣やマスク、消毒薬などの消耗品を調達するマッチングサイトを構築しようとしたのですが、病院や施設の関係者に試用してもらう時間が取れなかったです。

 

― 先ほどのお話では、Dさんは資金繰りの面では大丈夫だったようですが……

 

Dさん いきなり今日明日の資金に困ることはありませんでした。とはいえ、機械のリース料や借りている土地の賃料など、出ていくものは出ていきますし、入ってくるものがないのに、原材料や副資材なども手当しなければならず、実はぎりぎりの綱渡りで資金を回していたのが実状です。

 

Aさん 地震などの自然災害であれば、被害状況も目に見えますし、復旧にどれくらいの時間とコストが必要か、ある程度は計算できます。コロナ禍は、そこが難しいですね。時間は経てば経つほど事業再開の見通しが立たなくなるし、コストはダラダラと垂れ流し状態ですし、手の打ちようがありません。だから、弊社では、4月の段階で一定数の店を閉めることを決断しました。

 

Bさん うちもそうです。いくつかの店舗や事務所を閉めました。もともと賃料はほとんどなかったので、閉めると決めれば、すぐに畳むことができました。

 

Fさん それはうらやましい。事務所の賃料や事務機器のリース料で、出ていくものは出ていきます。5月以降は残業がなくなって、多少、人件費を減らすことができた程度です、コストカットの面では。

 

Eさん 医療や介護の施設は、コロナ対策の手間とコストが大変です。一方で、患者さんの受け入れ人数を抑えざるを得ないし、健康診断などの診療行為以外の稼ぐ機会も失われて、収益面では実に厳しいと聞いています。その状況下で、新サービスとか追加機能でバージョンアップという話は、とてもできません。目先のお金を稼ぐには、何でもいいから受注してエンジニアに仕事を出すしかありません。うちでは、これまでやったことのないゲームソフトのバグチェックにまで手を出しています。

 

Cさん うちの同様です。これまでの技術の蓄積とか業界知識とか言っていられません。とにかく、下請けでも孫請けでもいいので、仕事をさせてもらうしか手段がありません。

 

(3)に続く

 

文章作成・編集:QMS+行政書士井田道子事務所(202081222日更新)