コロナ禍時代のマネジメントを語る座談会(1)~現状どこまで回復してきたか~

コロナ禍時代のマネジメントを語る座談会(1)~現状どこまで回復してきたか~

 

― お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。本日集まっていただいた方の多くは、一昨年、「働き方」改革を巡る座談会”に参加していただき、貴重なご意見を伺いました。

それから2年も経たないうちに、“コロナ禍時代のマネジメント”というテーマで再びお集まりいただき、現状を語っていただくとともに、マネジメント上の新たな気づきや発見、事業や組織の戦略の見直しや運営方法の改革など必要な変化への対応などをご紹介いただければと思います。この座談会もリモートで行うことからして、コロナ時代らしいといえば、らしいものだと思います。

 

以下の座談会では、一部、守秘義務を要する事項に言及しているものもあるため、個人名などを特定されないよう、お話しいただいた方はすべて匿名とさせていただきます。それぞれの方々が経営される企業について語っていらっしゃる内容も、企業名を特定されないように、一部、変更して掲載しています。

 

ご参加いただいた方々のプロフィールは以下の通りです。

Aさん(男性40歳代):外食サービスを創業。現在もCEOとして複数の業態で多店舗展開の陣頭指揮を執る。

Bさん(男性60歳代):ある地方でマルチ・フランチャイジーを経営。外食、コンビニエンスストア、事業所向けサービス、教育関連サービスなどをフランチャイジーとして展開。

Cさん(女性50歳代):IT関連サービスを創業。観光や宿泊などに特化してビジネスを展開している。

Dさん(女性50歳代):製造業の会社を父親より引き継ぎ、CEOとして大きく業態転換を図った。現在、一種のSPA(製造小売業)として事業展開中。

Eさん(男性30歳代):医療・介護サービスの会社で新規事業を立ち上げ、その後、立ち上げた事業をスピンオフしてCEOに就任。現在、医療・介護関連のITサービス会社を経営。

Fさん(女性30歳代):大手税理士法人から独立し、数名の仲間とともに複数の士業で構成される事務所を開業し、代表に就任。

 

― はじめに、コロナの影響やそれに対する対応なども含めて、皆さんそれぞれの会社ではこの1年をどのように乗り越えてこられたのか、事業の現状を伺いたいと思います。

 

Aさん 外食はビジネスになりませんでした。特に、オフィス街に近い店ほど厳しかったですね。テイクアウトを充実させてはみましたが、焼け石に水というのが正直なところです。

 

Bさん 私も外食関連の店はどうにもなりませんでした。コンビニも思ったほど数字は取れませんし、学習塾は3密を防止するためのコストがかかって、赤字になったままです。リモート授業にもトライしましたが、あまり評判は良くないですね。

 

― 飲食業と同じくらいダメージを受けていた旅行関連の業界はいかがですか。

 

Cさん 弊社のサービスをご利用いただいているホテルや旅館などは、皆さんご承知の通り、コロナそのものよりも、政府の対応といいますか、自粛要請やキャンペーンなどに振り回された1年でした。

弊社のビジネスそのものは、ITサービスの使用料を頂戴するものなので、宿泊施設や観光施設ほどにはひどくはなかったのですが、ご利用いただいている施設さんが休業されているのに、システム使用料を頂くわけにもいかず、春は売上ゼロの月もありました。

 施設経営者のなかには、真剣に廃業を考えていらっしゃる方も少なくありません。そうした流れが大きくなるほど、弊社のサービスを使っていただく先がなくなるわけで、強い危機感をもっています。

 

Aさん 廃業ですか。店舗や施設を一部、クローズするのではなく?

 

Cさん 今年は、もともと拡大基調にあったインバウンド需要にオリンピック需要が重なって、明らかにバブル気味でした。そこにコロナですから、バブルがはじけ飛んで、一気に底まで落ち込んだわけです。当然、廃業ということも選択肢に入ってきます。

 

― メーカーさんはそこまで厳しいわけではなかったのでは?

 

Dさん 営業面では、さすがに第1波のときは休業して売上もなくなりました。夏以降は回復基調といいますか、そこそこの数字にはなってきました。とはいえ、業績的には厳しいままですね。

一番厳しいのは、従業員でしょう。給与は規定どおり支払いましたが、賞与はそうそう出せません。特に海外から働きに来ていた従業員たちは、帰国することもできず、生活するのが精一杯でした。

 

― そういう場合、何か特別な対応を取られたのですか。

 

Dさん 住むところは社宅ですから、会社として対応できるのですが、残業がなくなって母国への仕送りができなくなったり、帰国したくても出国できなかったりして、苦労している人ばかりです。金銭的なことはできる限り対応しましたが、メンタル面まではフォローしきれなかったですね。

 社宅ですが、同じ国から来ていた人たちが集まってしまい、当社の社員ではない人が寝泊まりしていることもあって、周辺の住民の人たちにご迷惑をお掛けすることがなかったか、かなり気になります。

 

― 医療や介護の現場もクラスター予防とかスタッフの確保とか、難題だらけという印象ですが。

 

Eさん うちもCさんのところと同様で、弊社のITサービスを使っていただいている施設様がお客様なので、お客様の苦しい状況を何とかしてあげたいと思っていても、具体的なサービスとして落とし込むまでに半年かかってしまいました。

 

― 何か新しいサービスを開発されたのですか。

 

Eさん アルコール消毒とかマスクの確保といったことは直接できませんが、消毒をちゃんと行ったかとかマスクや手袋を適切に着用して介護に当たったかといったチェックポイントを、画像から自動で確認して、不十分であればその場で本人にスマホを通じて知らせるとか、コロナの感染を防止するのに少しはお役に立てるアプリを作って、追加料金なしで導入しました。

 

― Fさんは今回初めて参加していただきますが、コロナの影響はいかがでしたか。

 

Fさん 春先は、補助金や助成金の申請をサポートしたり、確定申告の期限延長に対応したりということで、実に多忙でした。とはいえ、忙しくても喜べないですし、お客様のところに直接出向いてご相談させていただくことも難しく、Zoomやメールでのやりとりを通じて数字や書類を作り込んでいくしかなかったですね。

 

― 休業が明けても、テレワークが推奨されるなどして、仕事のやり方がかなり変わって、その分、対応に要する技術の導入やコスト負担などがありませんか。

 

Eさん 私たちの会社では、業務委託とかパートナーさんの方々とは、もともとリモートといいますか、ほぼ全員が在宅勤務ですから、実は仕事の進め方そのものは大きく変わったわけではありません。IT系の会社は、おおかたそうでしょう。

 

Aさん 外食や宿泊施設、介護施設というのは、完全に立地に依存する事業ですから、お客様やご利用者様に現にそこに来ていただかないと、サービスを提供できません。外出や移動が実質的に制限されてしまうと、事業として成り立ちません。

 

― 立地条件の違いは大きいですね。

 

Aさん 同じ外食産業といっても、都市部、特にオフィス街や繁華街と、住宅地や地方都市となると、まったく違います。うちでは、オフィス街の店はすべて撤退します。テイクアウトだけでは、賃料どころか、食材費も賄えませんし、人件費も出せません。反対に地方の店は、主に国道などの幹線道路沿いにありますから、テイクアウトも店内飲食も対応できます。

 

Bさん 立地条件で言えば、コンビニも外食も学習塾も同じ地域に展開しているので、事業を展開している地域でクラスターが発生すると、もうダメです。1ヶ月は商売になりません。ある病院の隣にある飲食店は、患者も減少し、付き添いや見舞客も立ち入り禁止となって、今でも売上は前年同月比で半分に届きません。

 

Cさん 観光業や旅行業というのも、一種の立地産業です。そこに来てもらわなければ、産業として成り立ちません。いくらリモートでAR旅行を推奨しても、落ちるお金は桁が違います。一部で提唱されているマイクロツーリズムにしても、そもそも本当に観光客に来てもらいたい地方ほど、そこに住む人々も少なくて、近隣の県まで含めてもマイクロツーリズムの需要は小さすぎます。これがインバウンド需要のバブルだと言われれば、その通りなのですが、このままでは都市部以外の観光業は全滅しかねません。

 

Eさん 観光業や飲食業は需要の問題でしょう。医療や介護は、需要はあっても、供給が成立しません。医療や介護に従事する人材を必要量、供給することが可能な立地というのが、これまた見当たらないのが実情です。

昨年までは、労働条件の面で供給不足でしたから、まだ条件を向上させれば望みはありました。今は誰もやりたがらない危険な職業と思われているきらいがあります。また、介護や医療に従事している人を差別するかのような言動をとる人もいて、供給不足に拍車をかけるようなものです。

 

(2)に続く 

 

文章作成・編集:QMS+行政書士井田道子事務所(20201215日更新)