コロナ時代のマネジメント(3)

 

コロナ時代のマネジメント(3 

 

前回、業界別にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のさまざまな影響を概観しました。そこで明らかになったように、従来はキャパシティ(輸送能力や収容可能な人員数など)を100%稼働させるのがビジネスの目標であったものが、現状では50%とか30%といったレベルに目標値を置くことを強く要請されるように変わったのです。 

たとえば飲食店でいえば、座席やテーブルの回転率にせよ、客数ベースの回転率にせよ、満員に詰め込んだ状態で得られる売上高をベースに、実際はその70%とか60%平均で集客できれば、損益分岐点を超えるといった組み立てで事業計画を作って、店を回してきたはずです。また、客単価は、顧客の滞在時間と販売されるアルコールの質(単価)と量によって大きく変わりますが、想定される滞在時間が長いほどアルコール販売の量も増えて利益率も高まるというのが、いわば勝利の方程式だったはずです。 

コロナ時代の飲食店経営では、こうした従来の方程式は通用しません。アルコールを店内で長時間販売し、飲んで騒ぐなどの行為は、ワクチンが開発され圧倒的多数の人々がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)への免疫をもつか、何か革新的な治療薬が開発され一般の風邪薬と同様にドラッグストアで気軽に購入できるといった形で、コロナが完全にグローバルに終息しない限りは、復活させることは困難でしょう。 

だからといって、これまでと同じメニューやサービスで2倍、3倍に客単価を引き上げることが可能かというと、考えるまでもなく無理でしょう。もしできたとしても、売上は現状維持であって、メニュー開発やサービスの転換に要したコストを回収することは容易ではありません。 

現実には、多くの飲食店がランチ営業や弁当販売などのテイクアウトにシフトしようとしていますが、ランチだけではディナーやアルコール販売の落ち込みを補えるとは到底思えません。 

テイクアウトも大きな限界があります。ひとつは配達をどうするのかという問題です。外部のデリバリー事業者に委託できるほど、デリバリー代込みでも価格競争力のあるメニューがあればいいのですが、そうした店は限られます。顧客が引き取りに来るという方法もありますが、ドライブスルーを可能とする設備を整える必要がありますし、主要道路沿いとか住宅地の近くにあるなど、立地条件の面でも制約があり、すべて飲食店が採りうる方策とは言えません。 

実際、新たに開発されたデリバリー・メニューや弁当などを利用したことがある顧客からは、商品の味や質に関する不満を多く聞きます。顧客としては、デリバリーや弁当などで既に実績のある店しか利用しないという選択をせざるを得ません。 

飲食店を例にとって、従来のキャパシティ100%稼働ビジネスを50%とか30%といったレベルに下げて事業を行うことの難しさを述べましたが、ホテルでもエアラインでもエンターティンメントでも同様です。違うのは、デリバリーや弁当などの打ち手のところで、エンターティンメントでは同時配信の有料化(チケット化)で削減したキャパシティを埋め合わせようと模索されています。エアラインでは旅客の定員削減を貨物で補う方向でしょう。 

特に厳しいのはホテルです。多人数を収容できる部屋をシングルに分割して営業できればいいとしても、出張や観光といった宿泊を伴う移動がグローバルに復活しない限り宿泊客数が元に戻るはずもなく、宿泊客がいないのではビジネスとして成立しません。よほど立地条件が良くて低料金を提示できるか、抜きんでたブランド力があるか、極めて強固な顧客基盤を有しているのか、何か決め手となる特長がない限り、相当程度(新たな需要とマッチする水準にまで供給が削減されるところ)にまで廃業が進むものと予想できます。 

そもそも、これからの時代においては、従来のようにキャパシティを超えて乗客や観客を収容することがそもそも問題視されます。通勤の満員電車などはその最たるものですし、劇場やスタジアムに立ち見客を入れるといった行為も厳禁されるでしょう。混雑した小売店やライブハウスも同様です。 

もし第2弾、第3弾の流行が引き起こされることにでもなれば、いま非難されているホストクラブやキャバクラやカラオケルーム(スナック)など以上に、キャパシティを超えて事業運営をすることが非難の的となるでしょう。少なくとも安全衛生義務に違反し、場合によっては責任者が刑事責任(業務上過失)を問われる場合もでてくるでしょう。 

これは、事業者だけの問題ではありません。通勤や出張などで混雑率100%以上の鉄道に乗車させてCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に感染した社員が出れば、それだけで勤務を命じた会社は安全衛生義務違反を問われる恐れがあります。感染の危険性を十分に理解していたにも関わらず、通勤や出張を命じたとなれば、労災どころか刑事責任を追求されるケースも出かねません。 

経営者にとって、コロナ時代を生き抜いていくには、事業のことを考えて新たな収益モデルを作り上げていくことが大きな命題です。それと同時に、事業を運営していく上で人事や財務に関するコロナ特有のリスクにも敏感であることが求められます。 

 

(4)に続く

  

  作成・編集:経営支援チーム(2020629日)