人材不足時代のベンチャー経営(1)

 

人材不足時代のベンチャー経営(1)

 

 先日、事務所のポストに人材募集のチラシがはいっていました。ビル清掃や大学や企業の食堂での調理のスタッフなどのサービス職や一般事務などを時給1400円程度から募集するものでした。

昨年あたりまでは、ポスティングで配られるもので人材募集はあまりなかった気がします。それがいまでは大版のチラシいっぱいに、近隣の歩いていける半径1キロ圏内だけで2030件もの募集広告が掲載されています。

 特に都市部のサービス業では、人手不足からの賃金相場の上昇が目立つようで、ここ1年で3割程度の上昇というのが実感ではないでしょうか。メディアでもそうした実態を報じるものが、よく目につきます(注1)。

実際、都内で事業を営んでいる経営者の方々からは、アルバイト採用の時給を1000円から1300円に引き上げたといった話をよく聞きます。それでも、人がそうそう採れないというのが実態です。

 大手の企業のように、スポットでの人材調達は人材派遣会社などに任せて、自社では新卒や一部の中途採用に絞っていても人材調達に支障がないのであれば、今年の賃上げは3%を目標にするなどと、一桁違う状況に対応していればいいのですが、ベンチャーや中小企業ではそうはいきません。

 こうした状況でなくても、ベンチャーや中小企業は容易に人材を採用することができません。まして、採用時賃金の相場が上昇中の現在、さらに賃金を高く提示するわけにもいきません。

 賃金というのは採用時の重要な条件には違いありません。しかし、高ければ高いほどよいというものでもありません。

賃金という雇用条件については、少なくとも次のようには言えます。

つまり、相場よりも明らかに低いのでは、よほどの個人的な事情や特別な人的関係でもない限り、誰も応募してこないでしょう。だからと言って、相場より高くすればするほど、短期的な金銭的魅力しかみていないタイプの人材ばかりが応募してくることになります。こうした人材はすぐに辞めてしまいがちな人々でもあります。それでは、何のために高い金額をオファーしたのかわかりません。

 それでは、賃金以外の要素で、何が人材採用に当たっての武器となるのでしょうか。そして、そこにベンチャーならではの強みがあるのでしょうか。次回以降、考えてみたいと思います。

 

(2)に続く

 

【注1

一例として、次の西日本新聞の記事にも、サービスの現場での人手不足の現状が紹介されています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180302-00010000-nishinp-soci

 

 

作成・編集:人事戦略チーム(201839日更新)