ゼロイチ営業(1)

 

ゼロイチ営業(1)

 

 三が日のある日電車に乗っていたところ、隣に座っていた女性が徐にパワーポイントの資料らしきA4横のペーパーを取り出し、真剣な表情で次々とページを繰っていきました。どうも、顧客の来店パターンを4種類に分けて、来店のきっかけに応じて、どのように会話を交わし接客を進めていくのか、体系的に分析した資料のようでした。もしかすると、接客トレーニングのテキストか参考資料のようなものであったのかもしれません。

 乗客の大半が初詣か年始の挨拶回りか、単に遊びに出かけようとしている中で、新年早々仕事熱心な人もいるものだと思わずにはいられませんでした。

 

さて、実店舗での販売活動にせよネット上の営業行為にせよ、既に顧客がいるところでの営業は、顧客に関するさまざまな情報から直接の購買行動とは一見関係のないようなデータまで、AIなどを駆使して購買に関する新たな知見を得ることができます。こうした営業は、顧客にせよサービスや製品にせよ、既にあるものを購買につなげていく活動といえます。

一方、新たなサービスや製品、特にベンチャーがチャレンジしようとするサービスや製品については、何もないところから購買につなげていく活動が求められます。これは、まだ何もない状態(ゼロ)から実際の購買につなげていくという意味で、ゼロイチの営業といえます。

言い換えれば、ゼロイチ営業というのは、まだ顧客がまったくいない状況で、最初の顧客を獲得する営業のことです。

そこには、いまだ成功パターンもなければ、確立したビジネスモデルもありません。開発した(しようとしている)サービスや製品が、仮に世の中の課題を解決したり、現に人々が困っている問題を解消したりするのに役に立つものであるとしても、世の中の人々はそうしたものがあるということを知らなければ、それを提供するベンチャー企業があるということも知りません。

この点だけからも、ゼロイチ営業というのは一般の営業とは大きく違ったものであることが想像できます。

そして、実際にゼロイチ営業に携わった経験のある人というのも、かなり限られた存在であることがわかります。同じベンチャー企業で営業を担当しているとしても、多少なりとも販売実績があり数少ないとはいえ顧客がついている段階と、まったくのスタート段階とでは、立ち上げ期の営業ではあっても、実際にやることは異なります。

ゼロイチ営業の真の経験というのは、ベンチャーでも創業メンバーかそれに限りなく近い社員でないと、なかなか実体験としてはもちえないものです。

もちろん、現代のように、ベンチャー企業が数多く生まれている時代には、経済社会全体ではゼロイチ営業の経験が相当に蓄積されてきてはいるはずですが、そこから成功のセオリーやありがちな失敗例を体系的に整理するには至ってはいないのが現状でしょう。

「できるまでやる」とか「チラシ(名刺)を1万枚配る」といった根性論ではゼロイチ営業(どころか営業活動一般でも)の効果はあがりません。PDCAを超速で回すといっても、計画や実行が一人か少数の人々の思いこみでは空回りするだけです。

それでは、どのようにすればいいのでしょうか。今回は、ベンチャーにとって避けて通ることができないゼロイチ営業について考えてみます。

(2)に続く 

 

作成・編集:経営支援チーム(201814日)更新