昨日まで問題ではなかった問題に対処すべき時代(1)

 

アメリカでハーベイ・ワインスタイン氏の過去のセクハラに端を発した騒動が報道されるようになって、2ヶ月近くが経ちました。その間、一個人の問題が欧米社会全体で長年、問題となってきたはずのセクハラの問題に改めて注目を集め、#MeTooというハッシュタグからSNSを通じて告発が相次いでいるようです。

その告発は、エンタテイメント業界(プロデューサー、映画監督、俳優など)で始まり、ファッションや広告、さらには政界や経済界を席巻して、IT業界や科学(学術)の世界などにまで広がっています。もはや止まるところを知らない勢いですが、日本では相撲界の暴力事件ほどには注目を集めていないようです。

 

さて、今回の騒動で最初に問題となったハーベイ・ワインスタイン氏ですが、セクハラ事件を契機に自ら創業してCEOとなっていた会社(TWC)から追放(CEOを解任)されてしまいました。

アメリカに限っても実はこうしたケース(自ら興した会社を追われる事例)は時々あります。古くはアップルでスティーブ・ジョブスが追放されました。今年ではウーバーでトラビス・カラニックが取締役会によりCEOを解任されました。

これらのケースでは、セクハラが問題となったわけではありません。しかし、単に業績不振というだけで解任されたわけでもありません。

アメリカの企業、特に成長著しいベンチャーや注目を集める著名企業や大企業ともなると、CEOの発言や行動はハリウッドの大スター以上に耳目を集めるものです。したがって、その言動は企業のカルチャーと同一視されます。つまり、CEOの言動は、その企業がサービスや製品などを通じて体現し社外に発信する価値観そのものと一体のものとして受け取られます。

それが、広く社会全体から強く疑問視されるような場合、社外取締役が多数を占める取締役会が創業者といえどもCEOの首を切るという行動に走らざるを得ないのでしょう。

こうした事例をもって、アメリカの企業社会は健全なコーポレート・ガバナンスが機能していると断言できるわけではありませんが、少なくとも、ある程度のガバナンスが作用していることは間違いないでしょう。

 

同様のことは日本でも起きています。

たとえば、労働者を自殺や過労死にまで追い込むような企業に対しては、単に労働基準監督署の査察や民事訴訟の結果を通じて罰則や損害賠償が認められる以上に、SNSや報道などを通じた社会的な制裁のほうが、経営トップの交替を招くという点においては効果的と言わざるを得ません。

こうしたことの反省から、働き方改革といったものに注目が集まっているわけです。

 

さて、ここで改めて考えてみたいのは、欧米のセクハラにせよ、日本のパワハラや長時間労働にせよ、悪いこととはわかっているはずなのに、なぜ、長年、放置されてきたのか、そしてそれがなぜ今になって大きく問題視されるようになってきたのか、という点です。さらに、どうすれば、こうした事態を招かずに、事前に問題を解決することが可能なのか、ということも検討すべき課題でしょう。

次回以降、こうしたことを考えてみたいと思います。

 

 (2)に続く

作成・編集 QMS代表 井田修 (2017123日)