創業補助金の採択事例にみる創業動向について(11)

⑨採択理由や事業内容が不詳なもの

 

 公表されている資料の限界とはいえ、採択事例のテーマだけを見ると、採択された理由や事業内容などがよく分からないものもあります。そのなかから、典型的なものをいくつかご紹介します。

 

・コンビニエンスストア(セブンイレブン)の経営(27・大分)

・ラケルとのFC契約を活用した卵料理専門の飲食店事業の展開(26・広島)

・勤務先の唐揚げ専門店の暖簾分けによる独立開業(26・滋賀)

 

 FC契約や暖簾分けによる開業というのも、創業・起業に違いはありませんが、それだけでは創業補助金という制度で補助対象とするものとは思えません。テーマで表示されているもの以外に、独自の工夫や地域への貢献などがあってのことに違いないはずです。

 

・焼き立てパンの製造販売(26・埼玉)

・みんなを笑顔にする街のケーキ屋さん(27・神奈川)

・こだわった菓子の製造・販売事業の展開(26・愛知)

・女性店主によるラーメン店の開業(27・福島)

40年間変わらない昔ながらの博多豚骨ラーメンの提供(27・福岡)

 

 このように、特に「食」に関連するテーマでは、一般によく見られる起業テーマが掲げられているだけというものもあります。同様に「食」に関連するもの以外にも見られます。

 

・主に国際輸出貿易会社(26・東京)

・建築用金物等の製造・販売(26・岐阜)

・自動車整備販売業(26・和歌山)

・インターネットを活用したWEB広告事業の実施(26・兵庫)

・ペンション宿泊施設経営(26・沖縄)

・習字の師範として地域の子供たちに向けた書道教室の開設(27・三重)

・写真スタジオ経営(26・東京)

 

 ここまでご紹介してきたものは、どのような事業に取り組もうとしているのか、一目で理解できるテーマでしたが、なかには、掲げられているテーマだけでは、事業内容を想像しにくいものもあります。

 

・焼き鳥研究の集大成(26・福岡)

・和食という食文化の提案(26・広島)

・少子化ストップ、空き家フル活用(26・東京)

・つながるハウス(26・大分)

・「スロービューティフル」による「精神的な充足」の提供(27・福島)

・人と人との繋がりを日常化し、地域の活性化に貢献する(26・愛知)

 

 「焼き鳥研究」とか「和食という食文化」であれば「食」に関連するものでありそうとか、「空き家フル活用」とか「つながるハウス」というのも不動産に関連性がありそうなものと想像できるところもありますが、具体的なビジネスをイメージできないものもあります。

 

こうして個々の採択事例を振り返ってみると、起業の参考となりうるものも数多く見られるとともに、テーマだけからは想像しえない何かをもった創業プランもありうると言えそうです。

 

(12)に続く

         作成・編集:QMS代表 井田修(2017928日)更新