創業補助金の採択事例にみる創業動向について(7)

③製販

 

 製販には、「食」やケア以外の分野で一般にモノを作って売る、またはモノを仕入れて(加工して)売るビジネスが該当します。「食」についで創業補助金の採択件数が多く、製販は全体の2割弱を占めます。

 そのなかで代表的なものといえば、その地域の特産物や固有の製品を製造・販売するものです。こうしたものは、イベントとの連動や通信販売などを契機として事業展開されるようです。

 

・国産材のみを使用した無添加家具製作・能登ヒバDIYキットの開発(27・石川)

・岡山県産の農産物及び自然派の地域ブランド産品の通信販売事業(27・岡山)

・もみ殻を原料とした固形燃料の製造及び販売(26・長野)

・ラグビーW2019年花園開催に向けた花園ぽんずの販売と工場拡張(27・大阪)

 

 その地域の特産物でなくても、新しい技術や製品を開発して販売するというのも、製販での起業の王道といえます。特に、技術や趣味などを絞り込んだものが典型的と言えそうです。

 

・セーリングヨット型ドローンの研究開発と事業化(29・茨城)

・プラズマ技術を使った高耐久非粘着コートの事業化(27・長野)

・国内初となる成型インナー(インナーシャツ)の製造販売(29・熊本)

・ドールを中心としたホビー・アート・雑貨商品の製造販売の展開(27・東京)

・釣り具・アウトドア用品のネット通販事業(27・東京)

・子供向けモータースポーツ関連商品販売と修理メンテナンス(27・福島)

 

 そのなかで、環境に関する課題を解決しようとするものも目につきます。

 

・電力使用機器の個別電力使用量の表示とその効率化を図る製品の製造事業(27・京都)

・生ごみ等を前処理と微生物醗酵で処理する機器販売を実施(26・宮城)

 

 リサイクルなど既にある資源の再活用を目指すものも、環境に関する課題を解決する事業テーマであるかもしれません。実際の採択事例を見ると、単に再利用・再活用を図るだけでなく、新たな価値を見出すところにビジネスの芽があるのかもしれません。

 

・中古の着物・帯を起用したレディース・メンズのファッショ事業の展開(28・東京)

・中古ピアノを活用し付加価値を備えた再生ピアノの販売事業展開(27・愛知)

・廃棄プリンターの再活用による総合プリンタービジネスの展開(26・宮城)

・古書や古い美術印刷物の中から新たな価値を見出し提供する専門店の展開(26・愛知)

 

 製販のなかには、直接モノを販売するだけでなく、製造・販売をサポートする起業テーマもあります。

 

・地方特産物の首都圏PRイベント等の運営・販売(27・東京)

・独自開発した「ロングテールSEO法」を使った商品拡売技術の提供(26・大阪)

 

 以上、製販についてまとめてみると、やはり、どのようなモノを開発し販売するかというところで勝負しようとしているものが大半と思われます。そこに何か一工夫があって、初めて起業アイデアが実際の事業に成長していくのでしょう。

 

(8)に続く

         作成・編集:QMS代表 井田修(2017914日)更新