創業補助金の採択事例にみる創業動向について(3)

 

(3)採択件数の少ない県の特徴について

 

平成29年度は富山県、27年度は山形県と山梨県、以上の3県が採択件数ゼロとなったことがある県(注6)です。

これらに加えて、採択件数がゼロになったことはないものの、1件だったことがあるなど、この4年間の採択件数が目立って少ない青森・鳥取・島根・香川・高知の5県も加えて、業種別傾向をみたものが下表です。

 

表9:採択件数の少ない県と最も多い東京都との比較

         

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

小計

青森

5

1

3

1

1

0

0

3

14

山形

6

2

0

1

0

0

2

3

14

山梨

3

0

3.5

1

1.5

0

0

5

14

富山

6

0

3

1

1

0

1

3

15

鳥取

3

1

4

0

1

0

2

0

11

島根

7

0

1

0

1

0

0

2

11

香川

3

4

3

0

3

0

1

1

15

高知

2

3

1

0

1.5

1.5

4

0

13

8県合計

35

11

18.5

4

10

1.5

10

17

107

1県平均

4.4

1.4

2.3

0.5

1.3

0.2

1.3

2.1

13.4

構成比%

32.7

10.3

17.3

3.7

9.3

1.4

9.3

15.9

100.0

東京

16.4

10.7

22.0

13.8

4.9

5.8

4.4

22.1

100.0

 

 この表では、比較のため、最も採択件数の多い東京都の業種別構成比を最下欄に示しています。

 採択件数の少ない県では、「食」に関連するものが多くを占めていることがわかります。東京との比較でいえば、ITの占める割合が極端に低いとか、製販や教育のウエイトが低いことにも気がつきます。ケアはほぼ同じですが、T&Rや美容については、東京よりもウエイトが高い傾向にあります。

 ここで「食」とT&Rの比率が高い傾向にある点に注目すれば、観光に関連した起業アイデアが採択されているのかもしれません。

 これらの県では、もともと人口が少ないせいか、起業件数および採択件数そのものが少ないことは十分に予想されます。ただ、人口が少ないこと以上に、事業所が少ないことが起業には大きく影響しているかもしれません。

 というのも、東京では、その他もかなり高い割合となっています。これは、事業所向けのサービスなど、多種多様なものが採択されている結果と思われます。もともと東京では、法人向けのサービスがいろいろと起業されていると推測できる上に、ITの採択比率が高いこととも、事業所向けの起業アイデアが採択されていることを窺わせます。

 

【注6

平成28年度の熊本県は採択件数がゼロです。これは4月に発生した熊本地震の影響なので、この分析では採択件数が目立って少ない県から除外しています。実際、熊本県の採択件数は、平成2629年度(実質3年間)で合計50件あります。

 

(4)に続く

         作成・編集:QMS代表 井田修(2017829日)更新