ひとり人事委員会(1)

ひとり人事委員会(1

           

ベンチャー企業など中小規模の企業では、大手の企業のように人事部門があって、社員の能力開発や適正な配置ができるように、人事や人材開発の専門スタッフがさまざまなサービスを提案・実行してくれることは、まず、あり得ないでしょう。

まして、経営幹部の発掘・育成や後継者計画を議論するために、人事委員会を設けて、戦略的に人事を行うということは、なかなか実行しがたいものでしょう。

 

ただ、規模が小さいが故の利点もあります。それは、経営トップが全ての社員のことを、程度の差はあっても、十分に知っていることです。当然ですが、人材募集に応募してきた時点から、いろいろな機会に直接、コミュニケーションをとってきていることでしょう。

そうした利点を活かすには、経営トップがひとりで、人事委員会の役割を定期的に果たすことをお勧めしたいと思います。たとえば、3か月に一度、数時間程度、予定を開けておき、誰にも関与させずに、人材の棚卸しのセッションを行うのです。社内で実施しにくければ、出張先のホテルで取り組まれてもいいかもしれません。

 

具体的なやりかたをご紹介します。カードと筆記用具をご用意ください。

 

カードの表には、対象となる社員の名前を書いておきます。年齢などの属性情報を必要であれば、それらも書いておきます。また、カードを作成した年月日を記入しておきます。

カードの裏には、この3カ月間に担当していた仕事の内容、その成果、特に記憶している事項(良いこともあれ悪いこともあるでしょう)、何か気付いたこと(性格的なことでもよいし、昨日、今日に見た日常的なことでもかまいません)、そのほか、その社員の人材としての価値を考える上で、関連がありそうなポイントを思いつくままに、自分でわかる表現で簡潔に書いてみます。

このとき注意したいのは、正社員とかパートタイマーとかアルバイトといった雇用区分は無視して、その人がどの程度、今のビジネスにとって重要か(欠けたら困るか)という視点で考えてみてください。契約社員や派遣社員、研修生やインターン、さらに役員・顧問なども含めることも忘れず、場合によっては、業務委託先や外注先のスタッフなども含めて、経営トップ以外の人材全員を対象として考えてみてください。

そして、最も重要なのが、その人のランクづけです。できれば、1から順番に最後まで、一人ずつ、順番をつけてみてください。その順番(数字)も裏に書きます。

最初にこの作業を行うときは、一人ひとりをランク付けできなくても構いません。たとえば、Aランク(極めて重要、いないと今日から困る人材)、Bランク(重要、いないと当面は凌げるかもしれないが、来週以降には支障が生じる恐れのある人材)、Cランク(当面は一応いてほしい人、もっと良い人が見つかれば入れ替え対象となる可能性のある人)、Dランク(できればいないほうがよい人、戦力外または足をひっぱっている人)に分けてみましょう。

 

ちなみに、この作業はカードでなくても構いません。エクセルなどのシートに必要な情報(コメントやランキングなど)を入力してソーティングしても同じです。

 

以上の準備ができたところで、人事委員会をひとりで開催することになります。

 

(2)に続く

作成・編集:経営支援チーム(2015624日更新)