ブラック化を招きかねない10のポイント(2)

ブラック化を招きかねない10のポイント(2)

 

 (1)より続く。

 

1.事業戦略が外部環境の変化に適応していない(ことに気づいていない)

 

問題を抱えている企業といっても、一度はビジネスがうまくいったから今があるわけで、成功した事業やビジネスモデルなどがあります。

顧客のニーズや競合他社の動向などが変化して、これまでの成功モデルがうまく機能しなくなっているのに、過去の成功体験に縛られている企業は、伝統的な大企業よりも創業メンバーが経営層で頑張っている企業に多く見受けられる気がします。

実際には、若年人口の減少による市場の急激な縮小、ITを駆使した新製品・新サービスとの競争などにより、あっという間に事業戦略の有効性が失われるわけですが、そうした変化に適応できないまま、やみくも旧来のビジネスモデルに固執して社員に檄を飛ばすだけ、という経営スタイルが見受けられることがあります。既存事業からの撤退とか、従来の戦略の転換といったことは、事業歴が短い企業ほど経験が少なく、そうした事態に直面しても対応が容易でないのかもしれません。

以下に挙げる他の要因とも関連して、そもそも事業環境の変化に組織全体が鈍感な企業も少なくありません。社員も役員も上の人(経営者)の顔色を窺うのが仕事となっては、事業環境の変化への感度を高くもつことはできないでしょう。

 

2.事業戦略に合った組織体制ができていない

 

これは上記1とは反対に、新しい製品やサービスを市場に導入し発展しつつある企業に見られがちな傾向です。試行錯誤の最中なので組織体制を整備することは難しいのですが、事業がうまく回り出すと体制整備が後回しになってしまい、創業メンバーやその周辺の社員の個人的な頑張りでしのぐことも多いでしょう。

最も望ましくないのは、そうした状況のまま会社が規模的には成長してしまい、ふと気がつくと上記1の状況に陥っている場合です。事業戦略と組織体制の関係が未整備なままでは、事業環境が変わっても組織的な適応よりも、個人的な頑張りに依存するしかありません。結局のところ、それがうまくいってしまうと、その組織の成功体験は「個人が頑張る(個人に頑張らせる)」ことになってしまいます。

この繰り返しがブラック化を促進するように思われます。

 

3.仕事を効率的に進める仕組みがない

 

経営の理念やビジョンは確立し堅持しているのに、それを現実に仕事をする仕組み(組織体制、運営ルール、業務フロー、職務分担、職務マニュアルなど)として展開できていない企業も、けっこうあるようです。事業戦略やビジネスモデルが確立していないのであれば、仕事をする仕組みができていないのも当然ではありますが、そうでないケースも往々にして見受けられます。

例えば、経費の申請をするのはすべて、金額の多寡にかかわらず、事前に経営トップまでペーパーを上げて決裁を受けていた企業では、経費の集計は社長室でエクセルを使って行い、会計システムへの入力は別途、経理で行うなど、同じ情報をバラバラに管理していました。新たに採用された経理課長が、そのために行われていた部下のサービス残業を、正規の時間外勤務として認めるようにしたところ、社長から「残業代はお前がかぶれ」と一喝されてしまい、課長自らが部下に代わって休日出勤で対応するしかなくなったそうです。

ちなみに、この会社の社長室には、社長が一番下に描かれた逆ピラミッド型の組織図が掲げられており、顧客満足度とともに従業員満足度の向上も経営理念として謳われているそうです。とはいえ、業績が芳しくないと、経費は削減しなければならないのもまた、仕方のないことです。問題はその進め方にあります。

 

(以下、続く)

作成・編集:調査研究チーム(201539日更新)