野球型かサッカー型か

野球型かサッカー型か~企業組織について考える~

 

今年もまた、Jリーグが始まる季節となりました。

当事務所の関係者で最年長のスタッフによると、1990年代前半(Jリーグ発足前後)、企業の組織について、例え話でよく言われたのが、野球型からサッカー型へ転換する必要性だったそうです。

 

確かに、発足当初のJリーグは、選手の外見や個性をとってみても、野球とは違う印象が強くありました。競技そのものの違いに、そうした要素も加わって、野球はサラリーマンや財界人のファンが多い半面、当時は野球に興味が薄かった女性や若い人たちがサッカーを支持していたように思います。

バブル崩壊後の企業経営を考える材料として、ビジネスに関わる一般の人々の多くが知っている野球と、当時新たな盛り上がりをみせていたサッカーを採り上げるようになったようです。

 

さて、ここで改めて野球型の組織とサッカー型の組織を対比させて、その違いを考えてみたいと思います。

 

まず、野球の一般的な特徴としては、次のような点が指摘できそうです。

 

・攻撃と守備に分かれてゲームを進める

・守備範囲や役割分担が決まっている

・監督が細かく戦術指示を出す

・選手(プレーヤー)は監督(マネージャー)の指示で動く

・選手交代がサッカーよりも頻繁

・ゲームに時間の縛りはない(短くても長くてもよい、じっくりと取り組める)

 

一方、サッカーというと、以下のような特徴がありそうです。

 

・攻撃と守備が切れ目なく連動

・ゴールキーパー以外は役割分担が野球ほど明確でない

・監督は事前練習と選手交代のみ

(監督やコーチは試合が始まったらゲームを見守るしかない)

・選手交代の人数が限られている

・所定の時間枠でゲームが行われる(スピードが要求される)

 

現在では、野球における役割分担がさらに進み、クローザーやセットアッパーなどピッチャーの分業化、代打だけでなく代走や守備などのスペシャリスト化、コーチの専門分化(内野と外野で別の守備コーチが担当、ブルペン専門の投手コーチ、トレーニング専門のコーチなど)などが広く見受けられます。

サッカーは、選手個々の力量をレベルアップするように、より強く要求するようになってきた気がします。もともと、決まった役割を果たす以上に、その瞬間その瞬間の個人の判断力と身体能力でゲームが進んでいくのがサッカーの特性といえますが、チームとしての戦術的な約束事を理解して、すばやくカバーに入るとか、守りから攻撃へチーム全体が瞬時に切り替えるなど、チームの連動性とスピード感がさらに重視されてきているようです。

 

90年代半ばは、ゴールに向かってピッチに立つ選手が全員協力して動くサッカーのイメージが、ゴール(達成すべき事業目標)に向かって社員が一致協力して働くのが企業、というイメージに重なっていたのかもしれません。

いま、改めて見てみると、企業はサッカー以上にスピード感をもって動いていくことが求められています。経営者や管理職が一々報告を受けてから指示を出してプレーヤー(社員)を動かしていたのでは、到底、間に合いません。その点、よりサッカー型の組織で企業も構成されるべきでしょう。

同時に、企業組織は野球以上に専門分化しており、専門性の追求とそこから得られる知識(ナレッジ)の共有を図らなければなりません。

もはや、企業組織は、野球型かサッカー型かというよりも、野球もサッカーも自在に対応するのはもとより、新たな競技種目を生み出すくらいの創造性とグル―バルに人々を巻き込む力が必要になっているのではないでしょうか。

現実には小さな事業領域で日々の仕事に追われるにしても、誰もがやりたくなる新たな競技種目(製品・サービス)を生み出そうという気持ちを、心の片隅のどこかに持っていたいものです。

 

作成・編集:経営支援チーム(201537日更新)