賃上げで皆がハッピーに?
「賃上げ2%」というと、その会社の従業員の賃金が、全員一律に2%上がると思われるかもしれません。もちろん、そういう場合もありますが、賃上げの対象者は、その会社で働いている人全員ではないことが実に多くあります。
通常、賃上げの対象となるのは、いわゆる正社員です。あえて、パートタイマーやアルバイト、契約社員などの賃金も上げると表明しない限り、正社員だけを賃上げの対象としています。
労働組合がある企業では、正社員のうち、労働組合に加入している社員(つまり労働組合員)について、賃上げを公表することもあります。その場合、正社員であっても労働組合員でない社員、いわゆる管理職の社員については、賃上げの対象に含まれているかどうか、対外的な発表だけでははっきりとしたことはわからない、と言えるでしょう。
もちろん、多くの場合、管理職の賃金も同時に引き上げることになるでしょう。そうしなければ、非管理職の社員の賃金と実質的に逆転してしまうなど、問題が発生することになりかねません。たとえば、平均的に残業があったとしてときの残業代も含めた非管理職の月例賃金のほうが、管理職に登用されたばかりの人の月例賃金を上回るといった状況が、十分に起こりえます。
一方、労働組合がない企業では、賃上げをするといっても正社員全員かどうか、実際にはひとり一人の賃金が改定された後でなければ、何ともいえません。会社によっては、かなり詳しく賃上げの対象者や内容などを社内向けに知らせるところもあります。反対に、会社としては何も公表せずに、一方的に賃上げを行っても、法的には特に問題はありません。要は、会社の方針次第ということです。
次に、正社員の賃金が上がれば、いわゆる非正規雇用の社員の賃金も同様に上がるか、考えてみましょう。
非正規雇用と一口にいっても、会社と直接、雇用契約がある場合とそうでない場合があります。
いわゆる契約社員とか嘱託社員など、直接の雇用契約がある場合は、その雇用契約の見直しが正社員の賃上げと同時期であれば、並行して雇用契約の見直しのひとつとして月額給与(報酬)がアップされることがあるかもしれません。
アルバイトやパートタイマーなども直接の雇用契約があれば、時給単価のアップという形で賃上げが行われる可能性があります。こうした時給単価のアップは、通常、採用時の賃金相場の変動に対して実施されるので、必ずしも定期的に毎年春季に行われるわけではありません。相場の上昇が急な場合は、年に複数回、時給単価を見直すこともあるでしょう。
ここで注意したいのは、あくまで採用時の時給単価が変わるのであって、すでに働いている方々の賃金(時給単価)が自動的に上がるわけではない、ということです。労務管理上は、新たに採用された人の時給とすでにその職場で働いている人の時給は、十分にバランスをとって決定されるはずです。
一方、いわゆる派遣社員や他社からの出向社員など、賃上げをすると表明している会社とは直接の雇用契約がない場合、賃上げの対象となりません。こういう方々の賃金は、派遣元や出向元の会社が賃上げを行わない限り、アップするということはありません。
このように実際の職場では、賃上げを実施するとしても、全員の賃金が必ず上がるという形で、その恩恵に浴するわけではありません。同じ職場で仕事をしている人の間で、昇給する人もいれば何も変わらない人もいます。そうした職場を率いていかなければならない管理職の方々にとって、春は労務管理上の苦労が絶えない季節となるかもしれません。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年2月11日更新)