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仕事に対して処遇するには(1)
これまでのように属人的な要素を重視して処遇を決定することから、「仕事」を起点として処遇の考え方や仕組みを取り決めるように切り替えていくのは、ここ数十年にわたって当たり前のように取り組まれてきたはずです。しかし、現状を鑑みるに、「仕事」を処遇の基軸に据えて人や組織のマネジメントを行っているのは、規模の大小や社歴の長短などに関係なく、まだまだ数少ない組織に限られていると思われます。
伝統的な組織にとって旧来の考え方ややり方が依然として残存しているのは、ある程度は仕方がないことと思われるかもしれませんが、つい最近できたばかりのスタートアップ企業やNPO法人などでも、処遇は人を見て決めている例が実に多いと実感させられます。
そこで、改めて「仕事」を軸に処遇を決めるとは、どのようなことなのか考えてみたいと思います。今回のコラムで述べることは、人事政策上は極めて常識的な話ではありますが、「仕事」を処遇の基軸とすることと「人」を起点として処遇を決定することの違いを、経営者や人事責任者だけでなく一般の働く人たちも一度は整理してみる必要があるのではないでしょうか。
「仕事」を処遇の基軸とするには、まず最初に「仕事」を定義することになります。企業で言えば、経営トップから第一線の従業員まで、どのような組織構造で業務体制となっているのか、ひとつひとつの職務を洗い出して文章化することが求められます。日本の組織の大多数が明確にしてこなかったのがこの点です。現に誰が担当しているのかではなく、本来あるべき仕事を明らかにします。
次に、「仕事」に人を当て嵌めることになります。この人がいるからこの仕事を任せる、という思考経路ではなく、この仕事があるから誰か適任者を探すというアプローチです。
新たに設けたポストであれば、社外から募集することもあれば、社内で希望する人がいればその人を異動させることがあるかもしれません。いずれにしても、果たすべき役割であったり達成すべき業務目標であったりする、具体的に「仕事」として取り組むべき内容とその結果として期待されるものが、どの程度実現されそうかを見定めて人を選ぶことになるでしょう。
「仕事」に人を当て嵌める時、実際には「仕事」を起点に処遇のルールを決めて雇用条件として提示する必要があります。雇用条件というのは、通常は就業規則で一律に定める事項ですが、就業条件・報酬(額や支払い形態など)・福利厚生及び就業条件や付帯的な条項などを詳細にわたって、個別の「仕事」に応じて定めるのが本来の姿です。ここで就業規則は、個別に雇用条件を取り決める際にベースとして準拠したり、法令や社内規則などによる越えてはならない一線を明示したりするものです。
そして「仕事」に従事して一定の時間が経過した後、何らかの結果が出るはずです。それを評価して当初定めたルールに従って次の処遇を行うことになります。
ただ、「仕事」を基軸として処遇を決める以上、いかに結果が目覚ましく素晴らしいものであったとしても、その「仕事」自体がなくなることもありえます。「仕事」がアウトソーシングされることもあれば、AIの活用などが進んで業務のシステムやプロセスが抜本的に変わり「仕事」の内容が一変してしまうことも珍しくはありません。それらの場合、改めて「仕事」を定義し、その仕事に対する処遇を雇用条件などで提示した上で、改めて人の募集を行うのが筋です。
原理的には、「仕事」の定義が変われば、一旦は解雇(雇用契約の破棄)ということになります。ここで言う解雇というのは、組織全体の業績不振による整理解雇や当該従業員の不祥事などによる懲戒解雇などとは全く違い、業績不振や不祥事といった問題が発生していなくても、「仕事」そのものが大きく変わった以上は既存の雇用契約は効力を失う、という原理的な要請によるものです。従って、解雇という表現自体が間違っているので、“雇用契約の失効”と呼ぶべき事象です。ときには「仕事」を人間が行う必要がなくなることもありますから、雇用契約を結びようがなくなる事態も発生する可能性すらあります。
もちろん、実務的には、組織が一方的に雇用契約を打ち切るわけではなく、就業規則を含めた雇用契約に予め定めている手続きに従って、退職金の割増や転職支援プログラムの活用などを行うことになるでしょう。念のために付言すると、委任契約に基づく役員は、期間の満了を含む契約の失効により退任するのは、雇用契約者とは異なり、その場で即時です。
ちなみに、既に現実に「仕事」を軸として雇用されている人々も多数存在します。その大多数は非正規雇用という括りで呼ばれている被雇用者です。実際、外食産業や小売業などのように特定の店舗で働くことを前提に雇用された人々は、その人個人がいかに優秀であったとしても、その店舗がなくなれば雇用されなくなるでしょう。
このように、変わるのは人から「仕事」へ処遇の基軸だけではありません。「仕事」が処遇の基軸である組織で働くには、働く人自身の労働観やワークスタイルも見直すことが要請されます。組織によっては、属人的なメンバーシップ型の処遇しか知らない人々を総入れ替えしなければならないかもしれません。その時になって慌てることなく、早めに頭を切り替えておくべきでしょう。もちろん、経営者や人事責任者の頭の切り替えを先に行っておくことは論を俟ちません。
さて、「仕事」に対して処遇することを考えるには、これまで述べたように次の5点について検討することになります。
l「仕事」を定義する
l「仕事」に人を当て嵌める
l「仕事」を起点に処遇のルールを決めて実施する
l「仕事」が処遇の基軸である組織で働くには
l「仕事」が処遇の基軸である組織を経営するには
原理原則で考えると、「仕事」に対して処遇を決めるには、事前の要求や期待と事後の検証が重要です。「仕事」に対して処遇するということは、個々の仕事または仕事の種類に応じて処遇を決めるということです。言い換えれば、仕事に銘柄や格付けがなされて、その銘柄や格に応じて報酬や扱いが決まるということです。
あくまで「仕事」が起点であり、個人の学歴・職歴や能力・適性及び事情(家族状況・居住地など)やその他の属性(性別、国籍、入社区分など)などに対して処遇を考えるわけではない点に注意しなければなりません。こうしたことが、経営者や人事責任者の間でも誤解や混同がたびたび見られるというのが実感です。そこで、今回は「仕事」を軸として処遇する上でのそれぞれのポイントについて考察を進めていこうと思います。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年2月19日更新)
仕事に対して処遇するには(2)
仕事に対して処遇することを実現するには、まず仕事を定義することから始めなければなりません。これは、自明のことですが、現実の組織では「仕事」は必ずしも明確なものではありません。
大概の組織には副部長とか課長代理(補佐)といった役職がありますが、これらと副や代理や補佐がついていない本来の部長や課長という役職との違いを、個々の人の面ではなくて「仕事」の面ではっきりと区分できている組織は、あまり見られません。こうした役職が多発されていると、担当レベルと代理や補佐のレベルで同じ仕事をしていることも珍しくはありません。これでは「仕事」の定義はできません。
一般に、「仕事」を定義するには、その前提として組織があり、その組織の中で果たすべき役割や責任に応じて役職があるはずです。ここで言う組織というのは、組織全体の事業目標や実現したいビジョンなどがあり、それらを実現する上での戦略があって、戦略を実行するために編制される組織のことです。その組織における役割や役職が分業と協業の組織編制の原理原則によって設定されます。これが本来の意味での「仕事」です。
つまり、組織あっての「仕事」であり、その内容は組織上の位置づけ、果たすべき責任、職務権限などから構成されるものです。そして、それらは組織全体のミッションや戦略などに応じて可変的なものです。もし、事業戦略が変わり、編制される組織が変われば、同じ職位名称に同じ個人がそのまま就いていたとしても「仕事」は変わるのです。
ここから仕事を定義すると、その仕事で期待される結果を生み出すためのある種の要件が記述されます。これを文書化してものを職務記述書(ジョブディスクリプション)といいます。この文書には通常、職務上の権限や果たすべき責任、それらを実現するのに特に重要視されるスキルやコンピテンシー、職務上必要とされる学歴・職歴・公的資格などが記されます。
定義された「仕事」についてそれぞれに名称があります。これをジョブタイトル(職位呼称)といいます。いわゆるCXOのような最高経営幹部レベルの仕事を表現するものもあれば、チーフソフトウエアエンジニアのように職務区分の名称(ソフトウエアエンジニア)と職務レベル(チーフ)の名称が組み合わされることで明示されるものもあります。CXOが執行すべき業務分野をXの部分で表している一方、チーフソフトウエアエンジニアは単独またはチームリーダーを兼ねながらソフトウエアを開発する役職位であることを示しています。
それでは、以下のような営業課長の職務記述書(ジョブディスクリプション)を通して「仕事」の定義について考えてみましょう。専門商社の東京支店にいくつかある営業課の課長についてのものです。
l 都内〇〇地域の顧客及び見込み客に対して、X事業部の製品及び付随するサービスを提供するチームをリーダーとして率いる
l 顧客及びその属する業界の動向、一般的な経済や景気の動向、その他社会的な動向などを感知し、課内に浸透させるとともに、営業情報システムを通じて全社及び営業部門全体で共有する
l 既存顧客及び見込み客についてその業容や動向、特に与信に関する情報について、社内外より絶えず収集・分析を行い、支店長及び関連部署に適時、報告・連絡を行う
l 年度の事業計画に基づき、東京支店営業〇課の達成すべき事業目標(売上高及び取り扱い数量、支店の営業経費予算、人材育成に関する事項など)を着実に達成する責任を有する
l 年度の事業目標や予算について、突発的な事象や急激な競争環境の変化などが起きた場合には、支店長及び営業の関連部門に対して期中に目標や予算の見直しを提案する
l 会社の方針、事業部の運営方針及び営業戦略、支店の運営方針及び営業計画などに従って日常の営業活動に自ら当たるとともに、営業課のリーダーとして5名程度の部下のマネジメントに当たる
l 部下及び営業課のパートタイマーやアウトソーシング先に対して直接、業務上の指示を行い、業務の進捗状況や例外的な事象について報告を受ける
l 日常の業務運営について、絶えず見直しを行い、より効率的な方法を検討し、必要な検証を経たうえで採り入れる
l 営業企画、DX推進、在庫管理、物流システム、経理、債権管理など関連部門との日常的なコミュニケーションを通じて、業務上の連携を実現する
l 健康経営やコンプライアンスなど会社が推進する施策について一社員として積極的に取り組むとともに、職場のリーダーとして課内での定着を図る
l 会社または営業部門として行うマネジメント研修や営業トレーニングに自ら参画するとともに、部下に参加を促す
l 営業担当としての経験が5年以上、当社の製品及び付随するサービスを取り扱った経験が3年以上、それぞれ実務として必要
l マネジメント経験はある方が望ましいが、実務としてはなくても知識として有していること(社内講座のマネジメント基礎コース終了もしくはそれと同等以上のもの)は必須
l 職位呼称(ジョブタイトル)は東京支店〇〇営業課長とし、対外呼称も同じとする
職務記述書(ジョブディスクリプション)は、「仕事」の範囲・質と量・進め方・業績への貢献度などに関する事項を記したものです。
「仕事」の範囲というのは、会社全体、事業部門や職能部門、部門内の部署や複数の部門に跨る会議体、少人数のチームやグループ、個人レベルというように、関連する組織・人員・予算などの規模、国内やグローバルなどの地域的な広がりなどで規定されます。
「仕事」の質と量というのは、例えば営業担当が1日5件の顧客訪問を行うのと、1週間に1件の訪問を行うのとは、同じ職種で同じ部門であるとしても、明らかに違う仕事であると認識し定義することです。顧客訪問と一口に言っても、必ず商談のフェーズをひとつでも進めると定義するのと、定期的に顔を出すことに意味があると定義するのとではまったく違います。
また、書類に記入する数字ひとつをとっても、多少の間違いがあっても許容されるのか、ちょっとしたうっかりミスが人の生死に関わるのか、というように「仕事」に求める緻密さとか厳格さといった要素も、質と量を規定します。医療や交通のように、たった一度の間違いで災害が起こったり刑事事件に発展したりして、間違いを起こした当人は懲戒解雇ということもあり得ます。
「仕事」の進め方というのは、本人が自らの判断で単独で仕事を進めるのか、社内外の誰かと協力したり上長の指示や助言を受けたりしながら仕事をするのか、特定の業務システムを使わなければならないのか、などなどを規定することです。また、既に業務システムができ上っていてその流れに従って処理していけばよいもの、新たな仕事の設計・導入とか現在の仕事の改善(業務システムの見直しとか新たな手法の導入・効率化など)、部下・パートタイマー・アウトソーシング先などのマネジメント、社外組織との協力などが含まれることもよくあります。
業績への貢献度というのは、会社全体や事業部門に与える業績上のインパクトの違いに着目するものです。業績は、入り(売上や収入など)と出(コストや仕入れなど)を別々に担当させるのか、同じポジションで利益責任を持たせるのかによって、「仕事」の定義は大きく変わります。いわゆる利益責任を負うのか、売上またはコストのいずれかのみに責任を負うのかは、組織の組み立て、すなわち「仕事」の定義の仕方によって明確に異なります。
職務記述書(ジョブディスクリプション)では各項目の並ぶ順序も重要です。通常、組織としてこのポジションに期待し要求する順番で記述することが多いでしょう。この例では、チームリーダーであることや社内外の情報収集などが優先されていることが理解できます。なお、最後の3項目は「仕事」そのものの定義というよりも、この「仕事」を担当する上で求められる要件と組織上の名称についてです。
同じ営業課長でも、自ら直接顧客を持つのか、顧客は全て部下に持たせて自らは営業担当のサポート役に徹すのかで、仕事の定義は異なります。そして、それぞれの場合に、リーダーシップのありかたもフォロワーシップのありかたも変わります。
自らも顧客を持つのであれば、重要な顧客とか新規開拓が難しい見込み客を担当して、自ら実績を挙げてみせることで部下を引っ張っていくイメージが湧きます。一方、営業担当のサポート役に徹するのであれば、経験の浅い担当者には事前準備をしっかりできるまできめ細かく指導・助言したり、営業に同行して商談中に助け舟を出したり、ルールやシステムで売掛金の回収をタイミングよく行えた実例を紹介してあげたりするなど、動き方が違ってきます。
こうした違いを、組織全体で規定するのか、組織全体で一律に決めずに現場での裁量に委ねるのかによって、組織で求めるマネージャーのコンピテンシーも変わります。組織で一律に定めることをせずに、個々の現場で個々のマネージャーに任せるというのもひとつのマネジメント手法ですが、人事異動が行われるたびにマネージャーも部下も混乱が生じることが十分に予想されます。なぜなら、マネジメントのスタイルがマネージャーごとに違うので、互いに未知の手法であったり、経験したことがある部下もいれば未経験の部下もいるので、同じマネジメントスタイルでも受け止め方が人によって異なるからです。
マネジメントスタイルは異なるとしても、マネジメントを行う基準、すなわち、具体的な承認や起案の手順・要件などは職務分掌規程やマニュアルなどで示されていることが自明なので、ジョブディスクリプションには明記されません。ここに記すのは、営業のマネージャーとしての「仕事」の内容や進め方の特徴的なところです。
次に、同じ課の営業担当者の職務記述書(ジョブディスクリプション)を例に「仕事」を定義してみましょう。
l 担当する都内〇〇地域の顧客及び見込み客に対して、先方の課題を洗い出してその解決策を提案するのに、自ら企画書を作成しプレゼンテーションを行うなどして、X事業部の製品及び付随するサービスの提供につなげる
l 顧客及びその属する業界の動向、一般的な経済や景気の動向、その他社会的な動向などに気を配り、営業上の課題などは課内で共有する
l 既存顧客及び見込み客についてその業容や動向、特に与信に関する情報について、通常は日報を通じて営業情報システムに入力する
l 日常的な報告以外に緊急性・重大性などから重要な事項を察知した場合は、即時に上長に報告する
l 年度の事業計画に基づき、東京支店〇〇営業課の達成すべき事業目標(売上高及び取り扱い数量、支店の営業経費予算、人材育成に関する事項など)を着実に達成するために、積極的に活動する
l 年度の事業目標や予算について、突発的な事象や急激な競争環境の変化などが起きた場合には、対策などがあれば上長に対して上申する
l 会社の方針、事業部の運営方針及び営業戦略、支店の運営方針及び営業計画などに従って日常の営業活動に自ら当たる
l 営業課のパートタイマーやアウトソーシング先に対して直接、業務上の依頼を行い、業務の進捗状況や例外的な事象について報告を受け、自ら判断しかねる問題については上長に相談する
l 日常の業務運営について、絶えず見直しを行い、より効率的な方法を上長や同僚などに提案する
l 上長の指示の下、営業企画、DX推進、在庫管理、物流システム、経理、債権管理など関連部門との日常的なコミュニケーションを通じて、業務上の連携を実現する
l 健康経営やコンプライアンスなど会社が推進する施策について一社員として積極的に取り組み、他の社員がこうした施策に取り組む際に協力する
l 会社または営業部門として行う各種の営業トレーニングに積極的に参加する
l 学歴や職歴で必須のものはないが、普通運転免許は保有していること(日常的に必ず運転するとは限らないが、効率的な営業活動を行う上で営業車を運転することがある)
l 営業担当としての経験はある方が望ましいが、なくてもよい
l 営業の実務経験はなくても知識として有していること(社内の営業ベーシック研修終了もしくはそれと同等以上のもの)は必須で、当社の製品及び付随するサービスについて基礎的な知識は必要
l 職位呼称(ジョブタイトル)は東京支店〇〇営業課営業主任とし、対外呼称も同じとする
実務担当者になるほど、職務を遂行するのに特に要するコンピテンシーやスキルのセットであるとか、「仕事」に取り組む姿勢やワークスタイルなどに関わる事項に言及することが多くなります。時には、営業日報の入力方法とか在宅勤務やリモートワークにおける社外からの報告システムの使い方などを、より具体的に記述ケースもあるでしょう。特に内勤とか事務系の「仕事」については、使うシステムやアプリまで特定し、その活用レベルを定義する必要があるかもしれません。
実際、「〇〇会議の議事録を作成する」というのか、「〇〇会議の議事録をWORDで作成し営業企画の共有フォルダーを通じて内容を共有する」というのでは、後者の場合、どういうソフトやアプリをどのように使うのか、また使えるレベルは社外の検定で定義するのか、実務的に問題なく使えればよいのか、明らかにしておく必要があります。
また、上長や上級者などの指示や監督がなくても独力で文書を作成するのか、取りまとめる内容だけでなくレイアウトや細部の表現や使用する語彙などもその場で指示を受けながら文書を作成するのか、作成における主体性の程度によっても「仕事」に定義は変わります。
個別具体的なツールや手法を定義するほど、すぐに実態に合わなくなる虞もあります。職務記述書(ジョブディスクリプション)を「仕事」に何らかの変更が生じる度に書き換えるのは理想的かもしれませんが、現実には無理な話です。できても、目標設定面接などの場で毎年定期的に見直すくらいでしょう。
なお、管理職であればジョブタイトルが組織上の職位呼称と同じというのが原則ですし、本人も関係者も現実的に理解しやすいものです。そうでない一般の社員の場合、どういう「仕事」であるのか一言で表現できると同時に、対外的にも通用することが望ましいでしょう。
この例で言えば、営業担当とかエリア営業というような呼称が適していますが、ここで例示したように職位階層をイメージさせる主任といった表現を用いることもあります。カタカナで言えばセールスレップ(レプレゼンタティブ)とかアカウントエグゼクティブと呼ぶのかもしれません。
最後に、「仕事」を定義する際に新卒採用者はどのような職務が適するのかという疑問について考えておきます。
職種別採用を行っているのであれば、その職種のスタートラインと位置づけられる職務、営業で言えば、営業アシスタントとか営業担当(未経験)といったものでしょうか。今回の例であれば、主任がつかない単なる営業という呼称もあり得そうですし、営業事務として直接顧客をもつことはしないポジションを設けるケースもあるでしょう。外資系企業などでは、アソシエイトとかジュニアセールスと呼ぶのかもしれません。
本来あるべき話をすれば、「仕事」が定義されているのであれば、その「仕事」に就きたいという人を雇用する組織のほうは、特に新卒だからといって何かをする必要はありません。その「仕事」に就きたいかどうか、就いてどのように実績をあげることができるのか、新卒も中途も採用区分に関係なく同じ土俵で就職活動にチェレンジすればよいのです。
高度なITスキルを身につけていたり、学生時代にスタートアップの起業経験があったりするなど、中途採用者と同等以上のスキルや経験がある人材であれば、本人が即戦力志向の中途採用者と同じ職務に応募するのは自由です。むしろ、同じ学歴(同じ大学の同じ学部の同級生)であっても、応募して就く「仕事」が違えば、処遇も違うのが当たり前なのです。それが、仕事に対して処遇するということです。
とは言え、現実に新卒の労働市場が中途採用とはまったく別の次元で存在している以上、新卒採用者向けの「仕事」を定義することもある程度は必要でしょう。そのため、ジュニア〇〇やアシスタント〇〇とか〇〇担当や〇〇補助といった職位呼称をもつ「仕事」を新卒採用枠として設計する企業も多いのです。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年2月28日更新)
仕事に対して処遇するには(3)
職務記述書(ジョブディスクリプション)がしっかりとできて仕事を明確に定義することができたとすれば、次はその仕事に誰かを当て嵌めることになります。
ここでいう「誰か」というのは、現にその仕事を担当している人であることもあれば、組織内のどこかの部署から異動してくる人もいるでしょう。その仕事がマネージャーなどの部下をもつ仕事であればその部下のうちの誰かとか、時には(兼任か降職かは別にして)その仕事よりも上位のポジションに就いている人が就く場合もあり得ます。
こうした組織内での異動によって空席となっているポストを埋めることもあれば、組織外の労働市場に向けて情報を発信し、その募集に応じた者の中から採用することもあります。この場合、職務記述書(ジョブディスクリプション)は募集要項の中核的な条項を成すものでもあります。
いずれにしても、こういう仕事がありますと最初に情報を発信するのは、原理的にはその仕事を管理する上長の仕事です。募集しても応募がないとか、適当な候補者がいなかったとか、そもそも募集するプランもないのであれば、その仕事は上長が処理するしかありません。現状のままでは上長自身の業務目標や所属する組織の事業計画が実現できそうもないのであれば、何らかの形で「仕事」を定義して人材を求めることになります。
通常は、ビジネスプランとか年度の事業計画で空きポジションを明確にして、人件費予算の枠内で募集や採用後に支払うことになる給料などを賄うことになるでしょう。または、必要な仕事が明らかになった時点で事業計画や人件費予算を修正して採用活動を行うという場当たり的な対応もあります。いずれにしても、戦略ありき組織構造ありきで「仕事」を定義づけることが必要なのです。故に、「仕事」を定義して人を募集するのは、経営者や管理職の職責の中でも重要なものとして位置づけられます。
言い換えると、仕事を先に定義して人を雇うということは、原則的にその組織にはいつも空席があることを意味します。まず経営者がいて事業をこうしたいという意思があって、必要な分業と協業の関係を設計し、その設計図=組織図=に従って「仕事」が定義されるのです。
それでは、改めて人事部門が果たすべき機能を考えてみましょう。
「仕事」を定義し必要な人材を求めるのは、経営者や管理職ですから、人事部門が人員を一手にまとめて管理するわけではありません。人事部門がやるべきことは、「仕事」が発生するところが必要な人材を調達できるように仕組みを手当てすることです。
経営者や管理職が戦略やビジネスプランに応じて「仕事」の内容を明確にすることになれば、職務記述書(ジョブディスクリプション)が出来上がるはずです。時にはAIを相談相手に「仕事」の内容を明確にしていくプロセスが求められるかもしれません。いくつかのキーワードを投げかけたり、作成されたビジネスプランを読み込ませたりすれば、職務記述書(ジョブディスクリプション)が生成されるのが、理想的と言えるのかもしれません。
職務記述書(ジョブディスクリプション)が出来上がれば、社内向けには社内公募要項、社外向けには社員募集広告を出稿することになります。その際の広告案も連動してAIなどで自動化するのに越したことはありません。人事部門はこうした流れを仕組みとして動くようにプラットフォームを整備することが要請されます。
同時に、組織全体の「仕事」の管理、すなわち、絶えず生成しては消えていくさまざまな仕事を組織図として一覧管理できるようにしておくとともに、それぞれの職務記述書(ジョブディスクリプション)を更新し続けることが可能なプラットフォームを整備しておくことも、人事部門の果たすべき機能のひとつです。実際のデータの更新は経営者や管理職などが日常的に行うので、使いやすい仕組みを作り改善していく、いわば人事DXの実行役なのです。
ちなみに、仕事から処遇を決める際に忘れてはならないのが、「仕事」はなくなるものだということです。既存の「仕事」は全ていつかなくなる可能性があり、戦略が短期的に変わるとすれば「仕事」がなくなることも常態化すると考えることができます。
そこで、人事部門の果たすべき機能のひとつに、解雇や退職の適切な管理があるはずです。人材の採用や人的資源の調達だけでなく、採用はしたものの「仕事」がなくなった人材をどのように処遇して解雇・退職につなげていくのか、一度は調達したものの戦略変更やリストラクチャリングで活用できなくなった人的資源を手放すのか、これらのためのプログラムやスキームを絶えず用意しておくのも、人事部門として果たすべき役割のひとつとして重要です。
例えば、採用や解雇(退職)の手続きやシステム、法律上遵守すべき事項、組織の価値基準や人事方針などから求められるポイントなど、経営幹部や管理職といっても全員が全ての事項を知悉しているわけではないことを前提に、遵守すべき事項を徹底できる仕組みが必要です。
ここで言う仕組みというのは、「仕事」に責任を持つべき経営者や管理職に対して能力開発プログラムや教育訓練コースなどを通じて必要な知識や実践的なスキルを身につけさせることもあれば、人的資源管理や労務管理の体系やノウハウを自社の人事システムで共有し相互に活用可能な体制を作っておくことを意味するのかもしれません。もし、そうした仕組みがないのであれば、組織として重大な欠陥があることになります。もちろん、人事部門が主導して社外の教育サービスを準備し受講させることもあるでしょう。
また、採用や解雇という直接的に人を雇ったり離したりする行為だけでなく、企業の買収・合併または部門の売却・分割などにより、人材=「仕事」を一度にまとめて調達したり削減したりすることもあります。こうなると人事部門は経営企画部門と同じ領域の職責を負うことになります。
そもそも、「仕事」がある=新たに人を雇う、とは限りません。フリーランサーや派遣社員、外部の専門サービス提供業者(コンサルティング会社やベンダーやアウトソーシング先など)などを活用することも、「仕事」に誰かを当て嵌める手段のひとつです。時には、現有人材にリスキリングの機会をもって転換することで新たな「仕事」に就かせることも、同様の選択肢のひとつです。組織全体として、これらのサービスの調達管理を行うのも、人事部門の果たすべき機能です。
さて、「仕事」に人を当て嵌める具体的なプロセス、つまり、応募者の中からその「仕事」を担当させる「誰か」を選ぶという行為について考えてみましょう。
この行為にはふたつのアプローチがあります。ひとつは、その仕事を担当して結果を出す可能性が最も高い人を厳選するというものです。もうひとつは、公的な資格の保有とか学歴や職務経験で必須のものといった形式的な要件され満たしていれば、まずはやらせてみて、ダメならすぐに入れ換える(解雇して別の人を新たに採用する)というものです。前者を厳選アプローチと呼ぶならば、後者はお試しアプローチでしょう。
一般的に言えば、担当させる仕事のインパクトが大きく困難な仕事ほど厳選アプローチを、インパクトが小さく誰でもできるだろうと思われる仕事ほど、お試しアプローチを採ることになります。経営トップとか新規事業開発のプロジェクトリーダーとかは前者、現場のリーダーの指示で同じ作業を繰り返すとか処理するとかマニュアルに従って処理するといったものは後者というのが、通常のやりかたです。
「仕事」に人を当て嵌めるということは、社内外に「仕事」を提示して、その「仕事」を「やりたい人」かつ「できると思っている人」を募ることです。そこで、採用するかどうかを決める際に問うべきは、やりたいかどうか、確実にできそうかどうか、という2点です。それ以外の要素は二次的副次的なものとして採用前に交渉する余地のある問題です。
仕事に対して処遇するわけですから、「仕事」というのは(できないことを前提に)教えてもらうのではなく、仕事ができる(だけの能力を身につけているとアピールできる)人がその「仕事」に就くチャンスを与えられるものです。
但し、募集し採用しようとしている側は、採用に前のめりになり過ぎないように注意しなければなりません。そうでないと、やりたいだけで能力不足の人を採用してしまい、結果が伴わないどころか、組織全体にひどい損害を及ぼすことになりかねません。
認知心理学で言われているダニング=クルーガー効果ではありませんが、客観的には能力や実績が低いほうが自己認識では能力が高く実績も十分という認知バイアスをもちやすいとすれば、募集している「仕事」に自信満々で応募してくる人ほど要注意です。書類審査でいえば職務経歴書や応募動機などに不審な点や不合理な箇所がないか、最終的に決定する前に裏付けを取ることが必要です。リファレンスチェックなどの必要最低限のリスクマネジメントの手法を採ることは論を俟ちません。
また、採用面接などを通じて、応募者の認知の歪みや見せかけだけの自信を的確に見抜かなければなりません。その「仕事」を一緒に担当する人々、直属の上長だけでなく部下や同僚となる人たちも採用面接の場に招くとか、インターンシップのように一時的にでも実際に仕事をしてもらう機会をもつことで、募集している側も職務記述書(ジョブディスクリプション)だけでは描き切れない要素、特にカルチャーフィットや組織が求めるバリューに即した行動などの面で適合的かどうかを確認する必要はあります。その「仕事」をやってほしいという先入観にとらわれている直属上司や経営者だけでは、失敗のリスクが高いのです。
ただ、こうした採用手法は、あるポストが空いた(新たに設けられた)際に原則的には社内からも社外からも応募があってよいとする事実上の社内労働市場の下では、人間関係上は運用が難しいかもしれません。経営層や管理職同士の間で、Aさんを採られた意趣返しにBさんを奪った、などといったゴシップが飛び交うようでは「仕事」を基軸とする組織運営や人事運用は早計と言わざるを得ません。
もちろん、組織はいつでも最も仕事ができる可能性が高い人間を選択するように努めなければ、株主や取締役からの負託に応えることにならないのも事実です。この点を突き詰めていくと、配属先が不明確なまま、新卒をとりあえず採用しておくということは、無駄なコスト以外の何物でもありません。従って、仕事に対して処遇するという方針を採るならば、定期新卒採用は廃止になります。新卒であっても、どの仕事に就こうとするのか、自ら決めて、その仕事で求められるであろう知識・能力・スキルなどを身につけた上で、社外向けの募集に応募することになります。
新卒者に限定したポジションがないということは、新卒者がいきなり管理職や経営層のポジションに応募してもいいのです。もちろん、採用されるかどうかは別の問題ですが、学生の頃から起業したりスタートアップで働いたりした経験をアピールして、事業責任者やビジネスユニットのマネージャーとなることも現実にあります。特にIT関連の技術者や学生などの若い消費者をターゲットとする商品やサービスを扱うビジネスの顧客サービスなどは、新卒者のほうが中高年の労働者よりも「仕事」が求めるスペックに合っている可能性が高いと思われます。
より現実的に言えば、新卒レベルで担当可能な「仕事」はあります。〇〇担当や××アシスタントなどの職位呼称(ジョブタイトル)であったり、アナリストやリサーチャーとかエンジニアや研究員などのように単純に職種名称だけの呼称であったりする仕事の多くは、4大卒新卒者のエントリーレベルの職位を表現しているでしょう。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年3月11日更新)
仕事に対して処遇するには(4)
「仕事」に対して処遇するということは、「仕事」を起点に処遇のルールを決めて実施することであって、人ありきで処遇を考えて決めることはあってはなりません。これを給与について言えば、年齢・学歴・採用区分・能力・資格などの属人的な要素で給与を定めようとするのではなく、どのような仕事をするのかという一点に絞って給与を決めることになります。このことをもって職務給と呼ぶのであれば、「仕事」に対して処遇する際の給与が職務給になるのは必然です。
「仕事」をジョブディスクリプション(職務記述書)の形で明確化し、社内外で公募するとすれば、その募集時に給与を含めて雇用条件を詳細に取り決めなければなりません。改めて言うまでもないことでしょう。
特に「仕事」の本質や特性の上から必要となる事項については、他の「仕事」と同じ就業規則などで一律に定められるものではないはずですから、別途雇用条件を文書化したものが不可欠です。一般に就業規則で定める事項であっても、今募集しているこの「仕事」に特化した条件については、詳細を詰めるべきでしょう。
例えば、勤務地、通勤手段、勤務体制(オフィス勤務、外勤・出張、在宅勤務、リモートワークなど)、就労場所の物理的な環境(危険度や暑さ・寒さなど)、労働時間及び労働時間管理、服装などの制限(制服着用義務・制服管理など)、業務上必要な器具や資材などの購入・管理の自由度(購入の権限)などが挙げられます。管理職や経営幹部となれば、専用個室・秘書・社有車の使用・出張時に適用される移動手段や宿泊施設のグレードなども、「仕事」上の必要性から事前に定めておくべきものです。
通常、人事上の処遇といえば、報奨・昇給・昇進・配置転換(異動)・出向転籍・休職・退職・解雇といったものが頭に浮かびます。これらのうち、昇進及び配置転換(異動)や出向転籍は、「仕事」の内容が変わってしまうので、本人がそのことを理解し同意しない限りは、組織の都合だけでは実施できない点に留意すべきです。それらに加えて、福利厚生制度や各種のフリンジベネフィット、教育研修プログラムへの機会提供なども処遇の一部を構成します。
さて、報奨というと、基本給与・諸手当・賞与・退職金などの現金で支給されるものに、株式連動型の報酬制度のように現金以外の経済的な利益につながるものが加わります。
基本給与のように固定的な給与は、相場でその金額が一定の幅(レンジ)をもって決まります。ここで相場というのは、一般的には地域的につながりのある同業他社の間で把握することが可能な実在者の給与及び採用時に提示される給与のことです。
但し、必ずしも地域的なつながりや同業者である必要はありません。というのは、この「仕事」をこれから担当しようとする人は、ジョブディスクリプション(職務記述書)で提示されている「仕事」で求められる実績を挙げることができる自信を、採用する側に納得させることができればよいのです。同じ地域の同じ業界での経験が必須というケースのほうが稀で、通常は別の地域で他業界での経験でも構わないというものです。若しくは、全く社会人の経験がなくても構わないとか、そもそも提示している「仕事」の経験者などそうそういないはずと、採用する側が考えている場合も珍しくはありません。
そうであれば、給与の相場も厳密に捉える必要はなく、採用しようとする人材層が現に属しているであろう業界や職種における相場と比べて、同じ程度か多少なりとも高い水準であればよいのです。また、給与水準では同程度であっても、他の条件(業績によって変動する給与や賞与、フリンジベネフィットなど)で相対的に高いものを提示することでも、処遇上の競争力をもつことは十分に可能です。
ちなみに、手当という概念は原則的にないはずです。職務に関連する手当は仕事を定義したのだから基本給に全て含まれているからです。外勤であろうと危険性の高い職務であろうと、〇〇という仕事をするという点では同じです。採用できるかどうかは、その仕事に見合った報酬を支払うかどうか(社外相場)で決まるので、基本給与に全て含まれていなければ「仕事」に対して処遇することにはなりません。
同様に、家族(扶養)手当とか住宅手当といったものも、「仕事」即ちジョブディスクリプション(職務記述書)で家族状況や居住状況が定義されている場合以外は、「仕事」とは無関係な要素ですから、処遇を考える際に検討すべき要素とはなり得ません。家族や住宅に関する状況が「仕事」を担当する人を募集・採用する上で特段考慮すべき事情があるのであれば、基本給与を個別に高く提示するか、または金銭的な手当ではなく介護サービスや社宅などのフリンジベネフィットのプログラムで提供するのか、一律の手当制度ではない方法で対応すべきです。通勤や移動(出張など)に関するものも同様です。
また、公的資格を有することが「仕事」をするのに法的に必要な場合(自動車の運転が必須の「仕事」に従事する際の運転免許、病院などで医療行為を行う「仕事」に就く際の医師免許、法律事務所で弁護士業務を行う際の弁護士資格、監査法人などで上場会社の監査業務に従事する際の公認会計士資格など)を除くと、一般に能力やスキルの有無を公的認証などで評価する必要はありません。例えば、プログラミングを行う「仕事」に就くのであれば、使用する言語や対象となるシステムについて実際にプログラミングを行うという、その「仕事」に対する実地テストを行えばよいのです。実地テストをクリアして、その「仕事」に就く以上、その後の実績や成果を評価すればよいのです。
報酬ということで言えば、もっと考えなければならないのは、固定的な報酬と変動的な報酬のバランスであったり、変動的な報酬の支給形態についてであったりします。
固定的な報酬というのは、基本給与や基礎的な年俸のように、事前に定められた一定の金額が現金で支給されるものです。「仕事」に対して支給されるということを正確に言うと、固定的な報酬は「仕事」への期待に対して支払うものです。故に、事前に金額や支給時期を決めて、その取り決めに従って当該期間中は支払うことになります。
変動的な報酬というのは、組織的な業績や個人の業績評価などの結果に応じて支給額が変わるものを言います。時には支給されないこともあります。代表的なのは、業績賞与や(対象者全員に一律に権利が付与されるのではなく一定の業績要件などで権利付与が決められる)株式連動型の報奨プログラムなどです。残業代なども変動的な報酬ですが、残業代は事前に定めたものよりも超過した労働時間に対して支払われる報酬なので、変動的ではありますが、業績による変動ではない点に留意しましょう。
特に経営幹部(CXO相当)や上級管理職として「仕事」を任されている人々を対象に支給される変動的な報酬については、報酬全体に占める割合が高いことが予想できます。反対に現場に近い「仕事」ほど、歩合制の仕事を除けば一般的には変動的な報酬の割合は低くなり、業績賞与と言っても年収全体に占める変動幅は10%にも達さないでしょう。むしろ、残業代のように業務の繁閑のほうが報酬の変動に直結するかもしれません。
ちなみに、短期的な業績の変動に対する報奨というのは、まずは業績賞与で対応し、何回か続いて良い業績を上げることができたのであれば、基本給与の増額とか上位のポジションへの昇進が考えられます。反対に期待に達しないのであれば、その程度に応じて、業績賞与の減額や不支給からポジションの解任・(業績不振による)解雇に至るまでの処遇が行われるでしょう。
長期的な業績の変動については、その期間に対応して長期的に権利行使が段階的に進む形態の株式連動型の報酬プログラムが求められます。若しくは退職金制度自体が、長期的な業績への貢献に応じて変動する要素が大となるように設計されるでしょう。こうした報奨制度のポイントは、一定レベル以上の役職者や役員に一律に支給するのではなく、それぞれが果たすべき職責(=「仕事」)やその結果(長期的な業績)に応じて個別に定めることです。こうしたことは社外取締役を中心とした役員報酬委員会などで検討し決定することが要請されます。
処遇を検討し決定するのは採用時だけではありません。実際に「仕事」をした後に、次年度の処遇を決めることも重要ですし、現実に数多く決定しなければならなりません。
ここで、「仕事」をした事後に評価で見るべきは、「仕事」の結果、即ち業績評価に他なりません。その結果がジョブディスクリプション(職務記述書)及びそれを更に具体化した業績目標などを基準として見た場合に、期待通りであれば一定の昇給が見込まれます。この昇給は、組織全体や所属する事業部門の業績及び労働市場における給与水準の動向などによって、予め定められている一定の幅(レンジ)の中において金額または率で決まります。
もし、期待を大きく上回る業績を挙げたと認められるのであれば、昇給幅も大きく業績賞与なども多くもらえることでしょう。組織によっては、株式連動型の報酬制度の適用対象者となったり、より上位のポジションに就くためのトレーニングを受けたり、自らチャレンジしたい「仕事」に異動する機会を提供されたりして、昇給だけではなくキャリアアップも実現できるかもしれません。
しかし、業績評価の結果、担当させた「仕事」で組織が求める結果が生み出せなかったのであれば、退職させるのが筋です。できますといって「仕事」をやったのにできなかったわけですから、特に経営幹部や上級管理職は解任・解雇されても文句は言えません。一般の管理職や現場の担当者レベルの「仕事」に就いているのであれば、現実的には、求める結果が何なのか再確認した後に再度仕事に取り組んでみて、業績評価を行うことになるでしょう。いわゆるPIP(業績改善計画)を行うことになります。
「仕事」を基軸として処遇を決めるということは、このように「仕事」がちゃんとできたかどうかで、処遇に極めて大きな差がつくということです。ここをきちんと適切に行わないと、「仕事」の重さ・大変さ・困難さに挑戦して結果を出した人ほど、失望して組織を去ることになります。注意すべきは、結果を出した人のほうが失望しやすいことです。結果を出せなかった人は、解雇されたり解任されたりせずに相変わらず同じポジションで在職することができたとすれば、敢えて他社に転職するというリスクをとることはせずに現状に甘んじることで組織にしがみつくことが十分に予想できます。
もちろん、この他に事業戦略の変更などにより「仕事」がなくなることもあります。その場合は、早期退職優遇制度や整理解雇といった手法により、強制的に退職させられることになりますが、そうした可能性は入社時から雇用条件のなかに一文でも明記しておくべきでしょう。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年3月27日更新)
仕事に対して処遇するには(5)
前回まで組織が「仕事」に対して処遇する意味や狙いについて述べてきましたが、そうした組織で働くには、そこで働く個人にもこれまでとは異なる労働観や生活設計が求められます。今回は「仕事」が処遇の基軸である組織で働く人がキャリアやワークスタイルの面で忘れてはならないポイントを解説します。
さて、そういうポイントを列挙すると次の5点となります。
● キャリアの主導権を自ら握る
● “自己資本”の拡張・充実を目指して動く
● キャリアのリスクを認識して対処する
● 処遇は下がることを前提に生活を組み立てる
● 最初に働く場の重要性を忘れない
まず、何はともあれ重要なのは、キャリアの主導権を働く人それぞれが自ら握ることです。
事業環境が変わり戦略が変われば、組織のありかたや業務体制も変わるのが必然です。その結果、仕事が変化したり、特定の仕事がなくなったりすることもあります。そうであるが故に、組織が一方的に個人のキャリアを計画してその実現を保証することは、原理的に不可能なことです。できもしないとことをできると言うのであれば、それは虚偽であり欺瞞です。
「仕事」に対して処遇する組織で働くのですから、どのような「仕事」を選ぶのかが個人のキャリアを考える出発点になります。その組織にない「仕事」を選ぶことはできません。あくまで、提示されている「仕事」の中から、自分に合っていると思える、自分ならできると思う、これならばやってみたいと思う、これだけの報酬をもらえるのならばやる意味があると感じられる、そういう「仕事」を選ぶことになります。
反対に、ある「仕事」を実際にやってみた結果、自分には向いていない、結果が出ない、社内外の関係者に「仕事」の結果やプロセスを評価されない、やりがいが感じられない、「仕事」はしたが能力やスキルは向上したとは思えない、「仕事」に費やした労力や時間が報酬に見合っていない、これ以上「仕事」を続ける気力や体力がないなどと感じるのであれば、その「仕事」を当然やめます。もしやめずにいたまま、自分に経済的・精神的・肉体的・社会的な問題が生じたとすれば、正に自己責任と言わざるを得ません。
そもそも選びたい「仕事」がなかったり、選んではみたものの他の人がその「仕事」に選ばれてしまったりして、社内失業者となってしまったのであれば、他社に転じるしかありません。どのような組織に転じるにせよ、転職先を決めるのは組織ではなく個人です。
このように、キャリアの主導権を働く人一人ひとりがしっかりと握っておくのが、「仕事」に対して処遇する組織で働く上で覚悟すべき大前提です。
もしキャリアの主導権を組織に引き渡して、自らはキャリアの責任をもちたくないのであれば、それもひとつの労働観です。その労働観に合ったワークスタイルを実現できる組織に所属して、組織の論理に従って働くというのも間違ってはいません。むしろ、そういう労働観で働いている人のほうが、今でも多数派を占めるのではないでしょうか。
ただ、そういう意味での多数派の人たちが、「仕事」に対して処遇する組織で働くことを強いられるようになると、そもそも「仕事」を選ぶということの意味ややり方がわからないので、組織において果たすべき役割や達成すべき業績という面では全く機能しないでしょう。特に事業再生やM&Aなどに迫られている組織では、事業戦略の見直しや組織の再構築などを通じて「仕事」の再定義が行われるため、キャリアの主導権を働く人に押し付けることもよく行われます。例えば、整理解雇や早期退職及び部門売却による転籍などが一般的な形態です。
結局、働く人ひとりひとりが、いつ何時キャリアの主導権を握らされるのかわかりません。そうであれば、最初から働く人それぞれがキャリアの主導権を自ら握っておく覚悟をもって、しっかりとキャリアの主導権をもつほうがいいいでしょう。
次にしっかりと考えて採るべき行動は、“自己資本”の拡張・充実を目指して動くことです。
ここでいう“自己資本”というのは、もちろん財務的な意味合いではありません。学歴や公的資格そのもの及びそれらを得る過程で身につけた自分なりの学習経験やメタラーニングの特徴、実務的な教育やトレーニングで得たもの、実務経験そのものなどをいいます。いわゆる人脈とか影響力というものも、本人があると思っているほどではないとしても、ここでいう自己資本の一部を成すものです。“自己資本”とは目に見えない資産であり、絶えず拡張したり充実したりしていかないといつの間にか毀損してしまうものです。
キャリアを形成するのに必要な教育訓練や研修受講の責任は最終的には個人にあります。組織はそのための機会を提供することはできても、その機会にチャレンジする自由、断る自由が個人にある限り、最終的な責任は個人に帰属します。まして、現在所属する組織の他にもキャリアを求める自由が個人にある以上、その自由を実現するのに必要なもの=“自己資本”を拡張し充実するのは、その人自身に他なりません。
言い方を変えれば、自分のキャリアを考えた際に、現在いる組織や現に担当している「仕事」が“自己資本”を拡張し充実するのに役に立つところがあるのであれば、他の処遇条件が多少不本意であったとしても、一定の結果が出るまでやり遂げてみるほうがよいでしょう。
“自己資本”のなかで誰もが必要なものの代表として交渉力があります。一般的に言って、よほど最先端のテクノロジーやアートの分野でない限り、「仕事」を提示する組織のほうが「仕事」を引き受ける個人よりも交渉する場や能力を有しているでしょう。とは言え、組織との間で「仕事」を巡って交渉することは必要不可欠なので、その交渉力を自ら身につけるか、交渉力のある手段を活用するか、その両方を使うのか、いずれにしても交渉は不可避です。
そのためには、交渉力を有することともに、交渉の材料を整理して用意しておかねばなりません。交渉の材料というのは、「仕事」に関する自分の実績・能力・スキルなど職務に直結するものだけでなく、「仕事」をする際の労働条件や就労条件及び個人的な事情(自身の身体や精神などの状況、家族や住居などの状況、経済的な事情など)など「仕事」を引き受ける上での諸条件についての優先順位なども広く該当します。
ここでひとつ注意しておきたいのは、転職エージェントの活用です。通常、転職エージェントというと、転職を希望する個人に手持ちの求人案件から最適と思われるものを紹介するものでしょう。こうした形態は、弁護士業務や不動産取引でいえば双方代理に相当し、本当の意味での転職エージェントとは言いかねます。
転職エージェントというからには、転職希望者のエージェント=代理人として、転職者の意向を受けてその利益を最大化するように動くべきです。転職先候補が違えば、異なる職務経歴書を自動的に用意して、事前にリモートでもよいので想定面接を行うといった、いわば、AIならぬIA(インテリジェント・エージェント、IT装備の代理人)が求められます。現実には、そうした動き方をする転職エージェントはあまり存在しないとすれば、交渉力は自ら身につけるしかありません。
交渉力というと、こちらの言い分や条件を強引にでも押し通すスキルやマインドセットと思われるかもしれません。しかし、実際に「仕事」を提示する組織は「仕事」をして結果を出して欲しいのであって、その可能性を説得できるだけの材料があればよいのです。自分の職務経験などの実績データを蓄積しておいて、提示される「仕事」に対してどのような貢献ができるのか、またどのように結果を出すつもり(手段やプロセスなど)なのか、具体的なプランを示すことが求められます。「仕事」の内容によっては、業界分析に基づくビジネスプランや現状のデータに基づく業務改革案などを示すことで交渉を進めることができるかもしれません。
その際に、同じ業界や同じ職種での経験がアピールするのか、違う業界や異なる職種での経験こそが活きるのかは、組織の側の状況や事業環境の動向にも因るでしょう。金融や流通での顧客対応の経験が官公庁などの窓口業務や問い合わせ対応の業務に役立ったり、営業経験や開発実績に優れた人が未経験の人事に異動して採用などで貢献したりするなど、異業種や未経験こそが成功のカギという例を多く耳にします。
ここで言う“自己資本”としての交渉力をもつには、毎日でも職務経歴書を更新できるかと思うくらい、実績の積み重ねを記録しておくことです。1日終わって何も変更すべきものがないのであれば、今日は何も“自己資本”を拡張・充実することがなかったと自ら反省すべきでしょう。その蓄積の上に、「仕事」を提示している組織のことも理解した上で、その組織の実情に可能な限り対応したプランを提案し説明することが交渉力の核になります。報酬や勤務形態などの条件についての交渉は、その後の作業に過ぎません。
ここで述べたような蓄積をもとに転職や異動の希望先に向けて、所定の短い期間にいくつもの応募書類を提出することは極めて困難です。自分のやってきたことを相手が興味を持つような表現でまとめるには、時間的な制約もあっては、AIなしでは不可能でしょう。 “自己資本”を職務経歴書や応募動機の形で表現するには、最初から生成AIなどを活用して効率よく応募書類を作成していくことが求められます。
一方、「仕事」を提示する組織の側から言えば、“自己資本”の拡張・充実にプラスになると多くの人々が思うような「仕事」を提示することができるかどうかが、社員を引き付け繋ぎとめるのに最も効果があります。それ以外の処遇上の条件の違いを是正することに注力するよりも、まずはこうした魅力ある「仕事」を提示できているかどうかを経営者や人事責任者は自ら問うべきです。
「仕事」が処遇の基軸である組織で働く人がキャリアやワークスタイルの面で忘れてはならない第三のポイントは、キャリアのリスクを認識して対処することです。キャリアのリスクというと、「仕事」を基軸に処遇する以上、「仕事」がなくなる虞が最大のリスクであることは論を俟ちません。ただ、そうした誰でもわかるリスクが全てではありません。
例えば、同じ組織に長年(10年以上)所属したまま、同じ職能分野や同じ事業領域で成功して昇進を重ねていく、というのはキャリアアップという点では成功ではあるように思えるかもしれませんが、見方によってはハイリスクと言わざるを得ません。というのも、こうした形でキャリアを積み重ねて昇進していくほど、そのキャリアにはダウンサイドのリスクがあることを忘れてしまいがちだからです。また、キャリアチェンジに迫られた経験もないまま、高いポジションでキャリアチェンジを唐突に迫られることも危惧されますが、そうした事態に容易に対処できるとは思えません。
従って、会社の業績不振や主要株主の変更などにより、ある日突然、全く経験もなく自ら進んで希望したわけでもない「仕事」に就くことを迫られたり、早期退職や強制的な転職プログラムを適用されたりして、キャリアチェンジを余儀なくされた際に、キャリアのリスクを考えたこともなければ適切に対応する術もない状況に陥りかねません。
もちろん、無計画に転職を繰り返すだけではキャリアのリスクも何もありません。しかし、転職に迫られたことがないまま、社会人として長年過ごしてきたという状況もまた、高年齢者でも長く働くことになる時代である故に、キャリアにおける大きなリスクを抱えていることを自覚すべきでしょう。
第四のポイントは、処遇は下がることを前提に生活を組み立てることです。特に、働く期間が長くなればなるほど、処遇が良くなり続けることはあり得ませんし、一定の年齢を超えると現状維持も困難であることを銘記しておかなければなりません。
この点は、第三のキャリアのリスクについての認識と同様で、「仕事」を処遇の基軸にする組織では、いかに長い間順調に給与が上がるなど処遇が向上し続けたとしても、いずれかの時点が必ず報酬水準が低下したり福利厚生プログラムが一部なくなったりします。それも急に生じることが往々にして起こりがちです。
もともと処遇水準が変動することに慣れていれば、急に報酬が下がったからといって慌てて生活水準の見直しや生活費の削減に走らなくても大丈夫かもしれません。介護や育児休業、自分の病気や怪我、留学など、時には自ら進んで報酬水準を下げて「仕事」を選ぶこともあるでしょう。
どのようなタイミングで処遇の内容や水準が変動するのか、経営層でもなければ容易に読み切れないでしょう。そこで、絶えず、処遇の条件に優先順位を明確につけておくことが望まれます。子供の教育が重要な時期であれば、そのための費用が賄えることを最優先にするとか、地理的な条件から通勤が困難な状況にあれば、借り上げ社宅などの住宅支援プログラムや新幹線通勤の費用を会社負担にするなど、福利厚生制度のほうを現金報酬などよりも優先的に考えるといった点で、組織と交渉してもよいでしょう。
もし、固定的な給与は相場よりも高く、変動的な報酬も多くもらい、労働時間も短く、通勤しやすい場所にあり、オフィス環境も申し分なく、社食も充実して、資産形成プログラムも欲しいというのであれば、それはもともと無理な相談です。自分にとって優先順位の高いものに絞って組織と交渉するくらいでなければ、提示された「仕事」を断ることもできません。この点でも、“自己資本”としての交渉力は誰にとっても必要で重視すべきスキルなのです。
ちなみに、世帯でダブルインカムでれば、低いほうの収入に見合った生活水準を維持していくほうが望ましいでしょう。高いほうを前提とすると、それが失われた時に、即時に生活の見直しが必要になり、職がない上に生活を切り詰めなければならない状況に追い込まれるのは、多大なストレス以外の何物でもありません。
独身者ではそうした心配はありません。というよりも、全てのリスクを自分一人で負っている以上、自分の収入に見合った生活水準しか実現しようがありません。むしろ、生活水準は収入よりも控えめなレベルに抑えておいて、収入がある内に着実に資産形成を図っておくことが、“自己資本”の拡張・充実と並行して取り組むべきテーマとなります。
いずれにしても、何かあった時の保障手段は必要なものです。資産形成は経済的なショックアブソーバーに、“自己資本”はキャリア面でのショックアブソーバーに、それぞれ不可欠です。
最後に、最初に働く場の重要性を忘れないことです。これは逆説的に聞こえるかもしれませんが、「仕事」を処遇の軸に置くと多くの人々がキャリアを通じてさまざまな職場を経験することが予想されるからこそ、最初の選択をどのように行ったのか、そしてその最初の職場で何をどのように学んだのかが、その人のキャリア全体を通じてキャリア観やキャリアの主導権に決定的な影響を及ぼしていくからです。
実際、第一のポイントで述べたことを、大多数の人々が最初に働く際に自覚的に選択することができるとはとても思えません。実際に社会に出て働いてみて、初めて自分の属している組織がどのような論理や仕組みで動くものなのかが理解できるようになるのでしょう。
現実は、こうしたことを理解しようともしない人もいれば、キャリアの最初の選択を他人に任せてしまう人々も少なくありません。親や友人、学校関係者や就職予備校的な機関の関係者などの言うことを鵜呑みにしたり、他人に言われるままに就職活動をしたりする人たちが、次のキャリアに関する意思決定を適切に行うことができるとは、とても思えません。
とは言え、過去の事実は変更しようがありません。まずは、最初に働いた場を客観的に振り返って、そこで学んだ教訓や失敗した事象などをリストアップしてみましょう。
今の「仕事」、今後挑戦したい「仕事」、できれば避けたい「仕事」、そうしたものを考える際に、最初に働いた場とそこで行った「仕事」を改めて見直してみることです。その結果、自分が「仕事」を選んだり、その職場で働いたりするのに決め手となるもの、例えば、「仕事」を通じてのキャリアアップ、達成感や顧客からの評判、報酬や勤務体制などの労働条件、職場の人間関係やカルチャーなど、何が自分にとって大切なものであるか、その優先順位はどのような変遷を辿っているのか、客観視してみましょう。
そうしたキャリアの積み重ねのスタートとして、入社当日に退職した組織であったとしても、それを客観視するマインドセットが重要なのです。キャリアの最初に失敗があったとしても、そこから学んで自らキャリアの主導権を握るように行動していけばよいのです。
概略ですが、「仕事」を処遇の基軸に置く組織で働く個人にとって、キャリアやワークスタイルの面で忘れてはならないポイントを5つ説明しました。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年4月3日更新)
仕事に対して処遇するには(6)
仕事に対して処遇する上で最後の課題は、「仕事」が処遇の基軸である組織をどのように経営していけばよいのかという課題です。実際に組織を運営するに当たって、「仕事」を先に定義して人に割り当てるのか、人ありきで「仕事」はその人次第で進めるのでしょうか。当然、「仕事」を先に定義するはずですが、これだけ事業環境の変化が激しい時代にあって一つ一つの「仕事」をきっちりと定義することは現実的に可能なことなのでしょうか。
「仕事」が先か人ありきかという課題は、戦略論で言えば、マーケットにおけるポジショニングを重視する競争戦略が企業戦略の根幹と考えるのか、RBV(リソース・ベイスト・ビュー)のように現存の経営資源を重視してその経営資源に合った戦略こそが肝要と捉えるのか、という見方の違いでもあります。
ここで改めて、現実の仕事と人の関係について考えてみましょう。そもそも、戦略を生み出すのは誰か、という点です。確かに、戦略を生み出すのは経営者です。それが経営者の重要な「仕事」と言ってもいいでしょう。だからと言って、まず戦略を立てて、その戦略を実行するのに適した組織を作り、その組織上のポストにCEO以下全ての社員を当て嵌めるという、戦略優位のアプローチは、教科書的にはありえても現実のビジネスではありえません。
こうしたアプローチが採用できるとすれば、いくつかの前提条件があります。事業戦略を立てて実行するタイムラグがあっても、事業環境が大きく変わらず、未来は現在の延長線上にあるか、確実に予測可能な未来があると考えられるとか、当て嵌めるべき人材は社内外から十分に調達可能で、報酬や福利厚生などで満足してもらえるレベル以上の雇用条件を出すことが費用や制度などの面で可能であるといった条件です。
仮にタイムリーに「仕事」が定義できて職務記述書(ジョブディスクリプション)を具体的に作成できたとして、その「仕事」の要件と応募者の職務経歴などをマッチングしなければなりません。100%のマッチングは非現実的でしょうが、相当程度に合っていなければ結果が出ると合理的に期待するわけにはいかなくなります。
そこで、AIなどを活用して、結果が出るにせよダメだったにせよ、データを蓄積して“相当程度”の確度を高めていくことが必要です。テクノロジーの進歩から考えてみると、マッチングの精度は実用的なレベルにまで向上するのは時間の問題でしょう。IT関連の技術開発に携わる分野など特定の領域では、既に実用化されているものもありそうです。
ちなみに、ハードな要件(学歴、公的資格、実務経験など)のマッチングは容易ですが、ソフトな要件(カルチャーフィット、リーダーシップ・バリューなど)は応募者の自己認識・適性検査などの客観的なデータ(応募者と組織風土)・職場側のデータ(組織診断など)との複合的なマッチングが求められるだけでなく、マッチングの結果をもとに面談や職場トライアルなども行ってみるべきでしょう。
ここで注意したいのは、同じ戦略でも、その実行の程度や結果は人によって異なるのが現実である点です。
第2回で紹介した営業課長や営業担当の職務記述書(ジョブディスクリプション)でも、同じような人材レベルと思われる二人が担当しても、結果は違うはずです。チームメンバーとの人間関係なのか、顧客との関係性なのか、本人の性格や価値観の違いが響くのか、結果を左右する要因を分析してできれば事前に特定しておくことも求められます。
一方で、ジョブ・デコンストラクションといって、職務を固定的にせずに、柔軟に再編成・再定義して改めてタスクを割り当てるといったアプローチが有効な組織もありそうです。つまり、「仕事」を厳密に定義するよりも、その人の特長や環境変化の動向などに応じて、人よりも「仕事」のほうを変化させて対応するのです。特に事業環境の変化が速くて激しいところでは、いちいち「仕事」を定義している余裕はないので、現にいる人材が「仕事」のほうを変えていく自由をもっている方が変化に迅速に適応しやすいというのも一理あります。
結果的に「仕事」の内容が変わるのであれば、いずれかのタイミングでそのことを公式化することが求められます。職務記述書(ジョブディスクリプション)を更新したり、新たなポジションを設けたりして、既存のポジションを廃止・統合したりして、公式化は行われます。
その作業を人事部門で中央集権的に実行しようとすれば、官僚制的な手続き主義に陥ってしまいそうですが、現場でAIなどにより支援して自動的に組織図や職務記述書(ジョブディスクリプション)などに反映することができれば、実態に即したものができるでしょう。そのためのITインフラを整備することが組織として取り組むべきテーマです。
事業環境が変わり戦略が変われば、組織のありかたや業務体制も変わるのが必然です。何らかの戦略変更が生じたのであれば、その時点で「仕事」を起点に組織・人事のマネジメントを見直すことが不可避です。その結果、仕事が変化したり、特定の仕事がなくなったりすることもあります。その場合、組織の要請が全てなので、仕事が部門ごと全てなくなる(部門をアウトソーシング先に売却するなど)こともあります。
ここで、現に仕事に就いている人(個人)はどうするのかというと、原則として個人の選択によります。現在と同じ雇用条件で新たな組織に移るか、別の組織に転じるかは最終的には個人の意思の問題です。新たな組織としては、買収条件の交渉次第ですが、現在その「仕事」に就いている人をまとめて移籍してほしいのであれば、移籍時にサインインボーナスを支払うなどそれなりの条件を出すはずです。
このように、戦略の見直しとともに既存の組織で「仕事」を再定義するには、実在者の存在は避けて通ることができません。「仕事」の廃止や縮小といった量的な問題もあれば、「仕事」のやりかたやスタイルが大きく変わり、実在者はリスキリングやトレーニングの機会をもつ程度では対応しきれないという質的な問題もあります。そうなると、実在者どうしであまり変わらずに残っている「仕事」を共有していたり、「仕事」がないのに人だけがいたりする状態が出現するでしょう。
人材や資産及び人件費など活用できる経営資源には限りがある以上、「仕事」を管理すること=定員管理=が必要であることも論を俟ちません。そして、事業の見直しや業務効率化などにより、不要な「仕事」が生まれてしまうのであれば、それらの「仕事」はなくなるのが原則です。
リストラクチャリングとは単なる人員削減のことではなく、文字通り組織構造を再編成することです。再編成ということは、統合・削減するものもあれば、大幅に変容するものもあれば、新たに設けるものもあるということです。そして、リストラクチャリングは事業を継続している限り不断に生じるものですから、「仕事」の見直しにも終わりはありません。
例えば、10の管理職のポストが組織の再編により3つのマネージャーのポストと5つの専門職のポストに変わったとしましょう。専門職のポストには短期の小規模なプロジェクトをリーダーとして率いるものもあれば、個人の技術的な知見をもとにいくつかのプロジェクトで専門的な貢献が求められるものもあるとします。
ここで、実在の10人の管理職は、どのように処遇されることになるのでしょうか。原則的には、マネージャーのポストも専門職のポストも社内公募されて、10人それぞれが就きたいポストに応募します。この際に、この10人以外の人々も、管理職トレーニングの受講歴や実務経験などの一定の要件を満たせば応募してもよいでしょう。時には、社外から新たに採用するほうがよいケースもあるでしょう。
応募の後は、それぞれのポストでの課題や組織運営プランなどを部門責任者や経営者などに提案し議論した上で、最適と思われる人がそのポストに指名されます。そうなると、10人に対して8のポストしかないわけですから、少なくとも2人は管理職相当の「仕事」はないことになります。
この2人は、社内の他部門で管理職相当の「仕事」に応募するか、社内の管理職相当ではない非管理職相当の「仕事」に応募するか(この場合、処遇水準は低下することが予想されます)、社外に活躍の場を求めるか(この場合、組織としては早期退職優遇制度などの退職を促すプログラムや社外のトレーニング受講を含む転職支援サービスなどを期限付きで提供する)、組織が提示するいくつかの選択肢のなかから一つを選ぶことになります。
「仕事」に対して処遇することを選んだ組織は、こうしたプロセスで人事異動を行う必要があります。人事部門が一方的に社員の異動を決めるのでは、「仕事」と人材をマッチングさせることへの納得性が失われてしまうのです。もっと極端な表現を採れば、感覚的には社員全員がアルバイトのようなものと言えるでしょう。
経営者までも委任契約で定められた業績目標を達成するために任されただけで、倫理規定や企業ポリシーや取締役会との合意事項などに反することがなく他の目標が達成できそうな限りは解任されないだけです。それでも任期満了となれば再任される保証はありません。
一般の従業員は雇用契約ですから経営者よりは身分保障が強いとはいえ、従業員も多少なりとも条件の良いオファーがあればいつでも他社に移る自由(競業忌避義務などに反さない限りどの組織に転職しようとも自由)がある半面、「仕事」がなくなれば解雇されたり退職を迫られたりするのはやむを得ません。
「仕事」を処遇の基軸とするならば、こうしたことを前提に組織運営に当たらなければならないのです。
人材が豊富(人数が多いという意味ではなく人材のタイプが様々揃うという意味)であれば、「仕事」を定義して適切な人選をしてそのポストに誰かをつけることも可能ですが、人材が偏っていたり人数上余裕がないような場合は、「仕事」の定義がいかに完璧にできても、そのポストを任せるに足る人がいないのであれば、外から採用することになります。そこでは、時間と労力と費用を要する覚悟が必要であることは言うまでもありません。また、「仕事」の内容が人々の興味や関心を引くものではなかったり、処遇条件が魅力に欠けるものであったりすれば、外部からの応募がない場合も出てきます。
このように、人の志向に適する「仕事」を定義できなければ、外部から採用して「仕事」をしてもらうことも困難です。規模の大きな組織ほど、これから労働市場に出てくる人々の志向に合った「仕事」を作り出さないと、組織が生き残ることができなくなります。
労働市場の変化に適応するには、単なる事業戦略ではなく、労働市場にいる人々や社内の人材が挑戦してみたいと自ら望むような「仕事」が次々と生まれるような運営スタイルやカルチャーをもつ組織を作り出す戦略を持てるかどうかが、「仕事」を処遇の基軸とする組織を運営していく上での鍵となります。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年4月9日更新)
仕事に対して処遇するには(7)
今回のコラムで述べてきたように「仕事」に対して処遇するという場合、給与体系は職務給であるはずと思い込んでいる方々もいるようです。そこで補足として、職務給とはどういうものであるのか述べた上で、「仕事」を処遇の基軸とすることと職務給との関連性について考えてみたいと思います。
一般に職務給と言えば、個々の職務毎に給与額や昇給率が決定される賃金管理の仕組みであるとイメージを持っている人もいるでしょう。実際には、ひとつひとつの職務について金額を定めるのではなく、職務のグレード(等級)別に賃金の幅(レンジ)や昇給について一定のルールの下に金額を提示し改定していくものを言うことが多いでしょう。具体的な方法については、厚生労働者でも例示しているものがあります(注)。
本来は、同一労働同一賃金というのが法的にも原則であるはずです。しかし、実態としては、同じ仕事をしていても、同じ賃金が支払われているとは限りません。例えば、基本給は同じであっても、扶養手当や住宅手当などの諸手当の支給額が異なるのはよく見られます。そもそも基本給ですら、最終学歴や年齢、採用区分(新卒か中途か、転勤ありか地域限定か、いわゆる正社員か期間限定雇用かなど)、入社年次や勤続期間などが異なれば、金額が違うのが通例でしょう。
こうした違いは、職務給体系を導入・運用している組織でもあります。職務給というのは、基本給の全体または一部を規定するものに過ぎません。基本給自体に職務以外の要素で定められるものがあれば、自動的に「仕事」が賃金の全てを決定するとは言えなくなります。
仮に職務給が導入されている組織であるとしても、現に担当している「仕事」が異なっていても同じ職務グレードということは十分にあり得ます。反対に、基本給が職務給だけで決まる組織で同じ「仕事」を担当していても、その職務グレード(等級)に在級している年数が違えば、その職務グレード(等級)での昇給回数が違うので職級の金額が互いに違うということもあり得ます。
そもそも「仕事」をどの職務グレード(等級)に位置づけるのかという、職務給制度の基本的な課題も容易に解消できるものではありません。よくあるのは、同じ営業職でも、新規に開設した営業拠点で新規開拓を中心に活動する営業担当と、既に確立した営業拠点で既存顧客を中心に決められた通りに動く営業担当を、同じ営業担当として同じ職務グレード(等級)に位置づけてよいのか、という問題です。
試行錯誤しながら地域にあった営業戦略を組み立てて未知の顧客(潜在的な顧客層)にアプローチするので「仕事」の難しさやストレス耐性などは明らかに前者のほうが高い水準で要求されそうです。一方、売上目標など持っている数字が大きいのは後者ですから、業績へのインパクトは後者のほうが大です。
また、同じ営業部店でも扱う製品・サービスが異なるとか対象とする顧客層が違う場合(法人と個人、同じ法人でも中小企業と大企業、企業向けと官公庁向けなど)に、同じ職務グレード(等級)でよいのかどうかも議論になりやすいでしょう。
もちろん、ここで例として挙げた営業以外の職種、研究開発でも人事・総務・経理・財務でもITエンジニア・物流・生産管理・生産技術でも、同様の問題は起きます。
こうして「仕事」をどの職務グレード(等級)に位置づけるのかという課題が、職種や部門などによってさまざまに生じてしまいます。担当者レベルの職務グレード(等級)ではルールや仕組みの統一性で説明しきれないこともないでしょう。しかし、管理職、特に部長や本部長などの上級管理職、そして執行役員レベルのポジションとなると、ひとつひとつのポジションを評価することになりますから、本人が想定しているよりも低く評価された当事者の不満や、ライバルのポジションよりも自分のポジションが同じまたは低いグレード(等級)とされた人の不平は、社内抗争に火をつけることになりがちです。昇進以外の人事異動(部長同士を入れ替えるなど低いグレードに異動するようなケース)も実施しにくくなるでしょう。
また、職務給制度のテクニカルな課題として、賃金の見直しや改定のやりかたも無視できません。近年のように初任給水準が大幅に上昇するような状況では、新卒入社者の職務グレード(等級)に相当する賃金が上昇するので、それよりも上位グレード(等級)賃金もそれなりに上昇させる必要があります。この点は、以前にもコラムで採り上げたことがあるので、こちらを参照してみてください。
さて、「仕事」に対して処遇するということを賃金制度上も貫徹しようとすれば、「仕事」ひとつひとつに値段がつくことになります。そして、その値段は、基本給や諸手当で構成される必要はなく、固定給として〇〇万円、(もしあれば)変動給が最大で××万円というように、シンプルなものになるはずです。但し、支払い方法として固定給を12分割して毎月〇〇〇円などの取り決めは必要ですし、所得税や社会保険料などの控除の面で不利益を被らないように支払うタイミングや支給の名目についてはそれなりに工夫が求められます。
このように「仕事」に対して処遇するわけですから、広い意味では職務給と呼ぶことは妥当でしょう。とは言え、職務グレード(等級)を定義してそこにそれぞれのポジションを当て嵌めたり、職務グレード(等級)別に給与の金額やレンジ(幅)を定めたりすることは必ず行わなければならないわけではありません。
実際、職務グレード(等級)自体がなくても構わないのです。「仕事」の内容を記したジョブディスクリプション(職務記述書)とセットで、雇用条件を記したものがあればよいのです。その雇用条件のなかに賃金の金額や支払方法なども明記しておくことは必要です。
職務グレード(等級)別に給与の金額やレンジ(幅)を定めたりすることもせずに、どのように賃金額を決定するかというと、社外水準との比較において定めることになります。社外の労働市場において採用対象となるような仕事をしているであろうポジションの給与水準から推定することになります。
また、賃金額の相場がわからない場合には、既にわかっている「仕事」から不明な「仕事」の値段(オファーする賃金額)を推定することになります。ちなみに、上位の「仕事」と下位の「仕事」から中間値などを決めたり、自社の「営業マネージャー」が社外の営業部長なのか営業課長なのか判断しがたいのであれば、それぞれの値の中間値と推定したりするなど、いわゆるスロッティングという方法を用いることもよくあります。
もし、こうした推定が間違っているとしたら、安いほうに就いている人が他の「仕事」(社内か社外かは問わない)を探して現在の「仕事」を辞めていくのが自然です。特に労働市場での変動が大きい状況では、数か月程度のスパンで推定を繰り返していかないと空きポジションだらけになってしまうかもしれません。故に、なるべく短期間で賃金額の推定を繰り返していくことで、競争力のある給与水準に収斂していくことが求められます。
このように「仕事」を処遇の基軸にすると、通例上の職務給制度とは異なるかもしれませんが、敢えて呼ぶなら、職務給制度と言えなくもないのです。実際は名称に拘る必要はありません。要は人を見て値付けするのではなく、「仕事」に対して値付けすることが重要なのです。それを職務給と呼びたければそう呼称すればよいだけです。
むしろ最も重視すべきは、CEOなどの経営トップ(常勤役員として組織全体の最終的な責任を負うべき最高位のポジションのこと)について、その「仕事」が明確で責任追及が最も厳格であることです。従って、取締役会の責任、とりわけ指名委員会や報酬委員会の責任は重大です。そこが機能していない限りは、他の役員や管理職、ましては一般の社員について「仕事」を処遇の軸とするのは無理であることは、十分に理解されるでしょう。もちろん、役員レベルの報酬も、社外の役員報酬レベルとの比較・検証を経て、委任契約の一部として明示されるものです。
作成・編集:人事戦略チーム(2025年4月18日更新)
【注】
厚生労働省のHPでは、以下のような職務給に関する説明資料が公開されています。
職務給の導入に向けたリーフレット001400270.pdf
職務給の導入に向けた手引き001421613.pdf
中小企業のモデル賃金制度001375313.pdf
このサイトは、行政書士井田道子事務所のホームページです。