勝亦健雄氏スペシャルインタビュー

第1回「中小企業ほど人材育成に取り組んで」

中小企業診断士 勝亦健雄氏
中小企業診断士 勝亦健雄氏

  さまざまなベンチャー企業の「人材・組織・働き方」をご紹介していくインタビューの第11 弾。

 

今回は、中小企業診断士として人材活用をテーマに経営コンサルティングを行われている、勝亦健雄さんにお話を伺います。

  

― 始めに、提供されているサービスをご紹介いただけますか。

 

勝亦さん 今は中小企業診断士の資格を活かして企業経営に関わる仕事に取り組み始めています。その中でテーマのひとつとして挙げているのが、人材活用です。

 

― 中小企業ほど、社員一人ひとりの活用度が経営全体に及ぼす影響は大きいはずですね。

  

勝亦さん そうですね。ところが、実際に中小企業経営者の方々とお話をしてみると、人材活用という共通のテーマであっても、異なる業種・業界の例には、あまり興味を示されないように感じます。

 もちろん、売上をいかに伸ばすかとか、利益を出していくか、プロダクトやサービスを開発していくか、資金繰りや金融機関との折衝、補助金申請や人材採用など、中小企業ほど経営者が自ら取り組まなければならない仕事が多く、なかなか人材活用を経営課題として自覚するまでには至らないのかもしれません。

 

― 大企業であれば、人事部門があって、人材活用も専任で取り組むスタッフもいるでしょうけれど、中小企業ではそうはいきませんね。

 

勝亦さん 人材活用と毎日のビジネスをうまく連携させて取り組むことが可能となる、そういうツールとかサービスが必要ではないかと感じています。

  同じ中小企業診断士のなかには、目標管理を中小企業に導入・定着させていくサービスを展開している人もいます。目標管理を効果的に運用するには、人材育成や能力開発につながるものを目標としていくことも重要です。

  そこで、目標管理という切り口から、人材活用とかキャリアコンサルティングといったテーマに展開できないか、考えているところでもあります。

  

― ほかに何か考えられているものはありますか。

 

勝亦さん たとえば、従業員満足度調査を行って、働く人のモチベーションがいかに経営や業績に大きく影響しているのか、数字で示すことで、経営者に本気で取り組まなければならない課題であることを認識してもらう、そういう仕掛けも必要かもしれません。

 

中小企業における人材活用を説く勝亦さん
中小企業における人材活用を説く勝亦さん

― アセスメントもされているそうですね。

 

勝亦さん はい、アセッサーとしてお仕事をさせていただくこともあります。お引き受けすることが多いのは、昇進などに活用されることがよくある管理職(候補)向けのアセスメントです。ただ、これはこれで活用方法をかんがえないと十分な効果が望めないと思います。

 

― どういうことでしょうか。

 

勝亦さん 本来は、アセスメントを行って、それぞれの人が、今後どのような方向で仕事に取り組んでいくのか、たとえば、管理職としてマネジメント経験を積んでいくのか、担当している仕事の専門性を深めてスペシャリストとしてより高度な知見をもって業績に貢献していくのか、そうしたキャリアの方向性を考える材料として、アセスメントを活用して欲しいのです。

 

― アセスメントをそのように活用されるケースは少ない?

 

勝亦さん 基本的な使い方として、管理職候補の選別という印象があります。大企業が管理職昇進を判断する材料としてアセスメントを使うのは、しかたがない面もあるかとは思いますが、人件費=コストと考えて育成に力を入れないのでは、企業の活力が生まれないのではないでしょうか。

  

― 特に中小企業では採用も容易ではないので、今いる社員を活用することに、まず取り組むべきかもしれませんね。

  

勝亦さん 中小企業ほど、採用や人材活用について情報をオープンにしていくほうがいいと思います。現に、情報をオープンにすることで、学生に自社の採用方針や人材活用の実際を知ってもらい、新卒採用に成功しているところもあります。そもそも、仕事の具体的な内容をちゃんと学生に伝えなければ、採用ができるはずもありません。

  そういう意味で、中小企業ほど、新卒マーケットなどの社外に向けて発信する能力、一般的にいえばコーポレート・コミュニケーションの力が問われているのではないでしょうか。

  

― 経営課題として人材活用を捉える必要がありそうですね。

 

勝亦さん 人材活用というテーマは、業種や企業規模などに関係なく、どのような企業であっても広く経営課題として存在するものではないかと思います。そういう点でニーズをしっかりと感じています。

  

20165月14日掲載)

 

第2回「職業経験を活かして独立・起業を」

中小企業診断士 勝亦健雄氏
中小企業診断士 勝亦健雄氏

 勝亦健雄さんへのインタビューの第2回は、独立に至る経緯からお話を伺います。そして、世代別にキャリアを考える上でのポイントを挙げていただきます。

 

― 勝亦さんは、もともとはサラリーマンだったそうですね。

 

勝亦さん そうです。大学を卒業して入社した会社で20年近く勤めました。その間に合併などもあり、事業環境などは相応の変化がありました。

 

― いつごろから独立を意識され始めたのですか。

 

勝亦さん 40歳が近づくにつれて、次第にマネジメントへの興味が湧いてきました。ただ、勤務していた会社には親会社があり、そこから役員や管理職が天下りしてくる体制でした。私たちプロパーは、プレーヤー(作業者)として優秀でいて欲しいというだけで、そのまま在職してもマネジメントに携わる可能性は非常に低かったのです。

  ちなみに、10年以上も同じ部署で仕事をしていました。他の部門や職種に異動して、新しいことに挑戦したり自分の能力を開発したりするチャンスは欲しかったのですが、その可能性も現実的ではありませんでした。

  処遇は決して悪くはなかったのですが、それ以上にキャリアの閉塞感が強く、いつかは辞めて、経営に関わる仕事をしたいと考えていました。

 

― それで中小企業診断士に?

 

勝亦さん 公的な資格を取ることで、会社を離れても自分の能力の裏付けをもてるようになりました。もちろん、マネジメントに興味をもっていたことから、公的資格の中でも中小企業診断士を選んだわけです。

 私のような事務系のサラリーマンの場合、会社の仕事の中で専門性を確立するとか、社外にも幅広い人脈を築くということは、なかなか容易なことではないと思います。技術系や営業などであったら、また違ったキャリアを選んだのかもしれませんが。

 

― 資格取得に向けて勉強を始められた頃から、既に独立・起業という計画をおもちだったのですか。

 

勝亦さん 資格取得に向けて勉強を始めた頃は、真剣に独立を考えていたわけではなく、いずれ独立できたらいいと思っている程度でした。しかし、勉強を進めていくうちに、経営に携わる仕事をしたいと本気で考えるようになりました。

 資格取得に関しては、勉強を始めてから3年以内に取ろうと決めていたので、1次試験合格後に受けた2次試験の結果が芳しくなかったことをきっかけに、養成課程への切り替えを検討しました。いろいろ調べてみると、大学院でも中小企業診断士の資格が取れることを知ったので、法政大学の大学院に通うことにしました。

 大学院に通ったのは、資格取得の上で必要ということもありましたが、そこで人脈とかスキルを作れれば、という考えもありました。

  

― 最終的に独立を決められたのは、いつ頃ですか。

 

勝亦さん 大学院在籍中です。

 独立してやっていくことの大変さについては、大学院に入ってから耳にするようになりました。私自身、コネクションも専門分野もない状態で大学院に入りましたから、卒業していきなり独立するのは厳しいかなと思い、大手の人材紹介会社に登録してみたりしたのです。

  しかし、紹介される情報には自分にピンとくるものがなく、これではキャリアを伸ばすチャンスはないと判断して、独立することにしました。実際、資格を活かした仕事をしようと思ったら、独立してしまったほうがてっとり早いと思います。

 

― 独立・起業を実際にされてみて、特に感じられたことはありますか。

 

勝亦さん 士業を開業するのは初期投資が少ないので、サラリーマンが独立するにはいいかもしれません。とはいえ、「自分の売り」を明確に打ち出していかないと、事業として成立させるのは難しいです。

 そこで、私の場合、自分の職業体験をベースに、大学院で学んだことやアセッサーとしての経験や知見、そしてキャリアコンサルティングの知識を使いながら、人材活用を軸にした経営コンサルタントを目指しています。

 

ご自身の経験も踏まえてキャリア観を語る勝亦さん
ご自身の経験も踏まえてキャリア観を語る勝亦さん

― ところで、サラリーマンを辞めて、独立・起業される方も多いと思いますが、そうしたキャリアを歩む方々にアドバイスをいただけますか。たとえば、近年注目されているシニア起業家の方々はどうでしょうか。

 

勝亦さん 定年退職後に起業する方々を見てみると、もともと役員や上級管理職だった人が多いようです。在職中に培った人脈やノウハウや専門性などができ上がっていれば、独立・起業して相応の結果を生み出すことができるでしょう。

  ただ、そうでない人は、体力的にもスキルや人脈の面でも、容易なことではないと思います。

  

― やはり、前職での経験やスキルを活かすというキャリアが望ましいのでしょうか。

 

勝亦さん そうですね。まったく知らない業界や職種で、独立・起業するというのは、積極的にお薦めできるものではありません。

 

― そのひとつ前といいますか、50歳前後の方は、キャリアについてどう考えて行動すべきでしょうか。

 

勝亦さん その辺りの方は、役職定年や早期退職などの対象になる方も多いと思いますので、今後収入が減少するということを事実として受け止めることがまず必要です。

 そこで、できる限り、身辺整理を進めていかれることをお勧めします。たとえば、住宅ローンやお子さんの教育費など、大きな支払いがあるものは、極力、整理しておかれるように心掛けてください。

 独立・起業には資金が必要です。そもそも生活費自体を極力低くしておかないと、起業に向ける資金を捻出できません。

 

― 社会人としてある程度の経験を積んできて、自分のキャリアを改めて考えるであろう30歳くらいの方はいかがですか。

  

勝亦さん 30歳前後の方であれば、キャリアの方向性を模索されている段階でしょう。

 独立・起業を目指すにせよ、社内で昇進して管理職から役員などマネジメントとしてキャリアを積もうとするにせよ、どういう方向に進むにしても、そこに向かうための自分なりのミッションなどを明確にしておくべきだと思います。

 

― 日常の仕事で壁にぶつかることも多くなってくるのではないでしょうか。

 

勝亦さん そうですね。大事なのは、普段の仕事を楽しめているかという点です。

  言い換えれば、将来の方向性やキャリアにつながる能力を、日常の仕事を通じて開発できているか、ということを確認しておくことです。Yesと肯定的な答えができるのであれば、そのまま仕事を続けていけばいいでしょう。Noということであれば、社外も含めて広くキャリアの可能性を考えることが必要です。

  もちろん、社内で異動などを通じてキャリアを転換する機会があれば、それを活かしてもいいでしょう。私のように公的資格の取得を目指すという方法もあります。

 

― 確かに、誰もが起業や転職でキャリアを伸ばせるわけではありませんね。

 

勝亦さん キャリアを伸ばすといっても、誰もが会社を辞めて起業すればいいというわけではありません。

  たとえば、起業をするにあたって「食えるか、食えないか」を第一に考える人は、独立・起業には向かないと思います。そういう人はサラリーマンを続けていた方が無難です。

 

― なかなか厳しい一言ですね。

 

勝亦さん そうかもしれませんが、厳しく聞こえることも誰かが言わねばならないと思っています。コンサルタントの仕事には、そういう部分も求められていると思います。

  独立や起業の相談を非公式に受けることもありますが、その時には何よりも目的をはっきりさせるようにアドバイスしています。会社を辞めたら食えなくなるのは当たり前で、それでも独立や起業をしたい理由を明確にもてなかったら続けられないからです。そういうものをしっかりともつことができた人が、独立や起業で成功すると思います。

  

― アルバイトをしただけでは難しいかと思いますが、たとえば、インターンシップなどの職業体験を通じて、キャリアについての自分なりの考え方を形成できないものでしょうか。

 

勝亦さん 難しいでしょう。

 今は、子供のころから、さまざまな職業体験施設や学校教育でのプログラムなどを通じて、いろいろな職業をある程度は体験できるようになっています。だだし、それらを通じて得られるのは、現場の作業体験に過ぎません。

  なかなか、組織と自分の関係とか、キャリア、つまり働き方は、生き方と不可分であることを考える機会まではもてないでしょう。こういうことは学校で行われているキャリア教育のなかで、しっかりと伝えていくべきだと思います。

  

2016521日掲載)

 

第3回「キャリアを考えることは生き方を考えること」

中小企業診断士 勝亦 健雄 氏
中小企業診断士 勝亦 健雄 氏

 勝亦健雄さんへのインタビューの第3回は、キャリアを考える主体とその背景について伺います。

 

― 前回指摘された、キャリアを伸ばすことを考える際の視点ですが、就活や転職・起業などの情報サイトはたくさんあっても、はっきりとポイントを指摘するものはあまり見受けられませんね。

 

勝亦さん 就活生など学生はもとより、就職した後の社員に対しても、キャリアを自分でどのように考えればよいのか、きちんと説明するなど、キャリア教育をしてこなかったことにも問題があると思っています。

 

 ― 企業の現実は、サラリーマンを一生面倒見ることができなくなっている、ということはありませんか。

  

勝亦さん 今の企業はリストラもすれば、他の企業の買収もします。倒産については、大企業でも珍しいことではなくなってきました。

  そうした現実を考えると、サラリーマンであっても、自分の生き方や価値観に照らし合わせて、何かできることがある会社だから勤める、そうでなければ辞めるし、辞めても急に困らない程度の生活設計をしておく、そういう意味での「雇われない働き方」が求められているような気がします。

  日本のサラリーマンを見ていると、キャリアも生活も会社に依存しすぎているように思えます。生活を担保に仕事をするとなると、結局、生活を自らコントロールすることが困難になります。

 

― そういった現実は、就活にも影響していませんか。

 

勝亦さん 就活についても、企業が雇用も生活も十分に保障できなくなっている時代だからこそ、少しでも安定した企業へ就職しようと考える傾向があるように感じます。

  しかし、実際には世の中には、いろいろな職業があるわけですし、働き方も一様ではないことを十分に理解した上で、自分に合った選択ができるように活動して欲しいですね。

  キャリアというと仕事のことに限定したもののように思われるかもしれませんが、本来はその人の生き方そのものに関わるものです。まず、このことをしっかりと理解していただきたいと思います。

 

― 考え方は理解できますが、現実的な対策として、たとえば、経済的な問題にはどのように対処すべきでしょうか。

 

勝亦さん 普段から貯金をする習慣を身につけておくことは重要です。私も、資格取得の勉強をしたり、大学院に通ったり、独立したり、ということで、生活面のことは多少なりとも計画的に考えて行動してきました。

  いまも、収入源別に、生活費に充てるものと、次の事業展開に備えて貯めている資金に充当するものを、別勘定で管理しています。

 

― 計画的な対応が不可欠ですね。

 

勝亦さん そうした準備をしているからこそ、「その気になったら、いつでも辞められる」という気概ももてますし、時期を見計らって行動に移すこともできます。

 準備を怠っていると、結局、会社にいつまでも残って、愚痴をいうだけの存在になってしまいます。

 

キャリアを考える必要性を説く勝亦さん
キャリアを考える必要性を説く勝亦さん

― 本人が自分のキャリアを計画的に考えていない、ということ自体が問題ということではないでしょうか。

 

勝亦さん これまでの日本では、企業が労働者の生活もキャリアも保障していたところがありました。とりあえず、辞めずに定年まで勤め上げれば人生は安泰というものでした。これでは、「キャリアを考えろ」と言われても無理でしょう。

  しかし、日本の雇用慣行では仕事が明確に定義されていないまま、雇用契約を結ぶのが一般的で、大きな企業に勤めていれば、その後は辞令1枚で、職種も勤務地も本人の希望とは関係なく、異動させられる可能性があります。そして、現実に異動を拒否することは極めて難しいものです。

  こういった事情を加味すれば、労働者自身が自らのキャリアを考える必要性は自ずと出てくるはずです。ましてや、企業に雇われることが必ずしも個人の生活やキャリアの保障にならない現代では、なおさらです。

  

 ― 新卒採用では、就職氷河期と言われた時期もあれば、即戦力採用ばかりが強調されたりした時期もありましたね。

 

勝亦さん そもそも、新卒に即戦力を求めるというのが、本末転倒ですけどね。

 

― 即戦力を求めるほど、企業が人材開発をしなくなった、できなくなった、と言えるのではないでしょうか。

 

勝亦さん 日本企業の人材開発の最大の問題点は、OJTが方法の大半を占めていることではないでしょうか。OJTで学べることは、過去に経験したことが中心です。これまでのやり方を学習するのには向いていますが、新たに発生した問題に対処するのには不向きです。

  一人ひとりの従業員が仕事に対してもつ意思を汲み取る仕組みが少ないことも、問題だと思います。目標管理という形で自律的・自発的に仕事に取り組むような仕組みを作っても、目標達成に向けてのフォローやアドバイスがないまま、放りだしっぱなしでは、人材育成はできません。そもそも、日本の企業が個々の従業員に対して行っている目標管理は、単なるノルマ管理にとどまっていることも珍しくありません。

 

― もしかすると、人材開発だけが弱くなってきたわけではない?

 

勝亦さん 多分、安くていいものを作れば売れる時代を引きずったまま、マネジメントも戦略も不在の状態が続いてきてしまったのでしょう。

 現在起こっている、いろいろな不祥事やブラック企業の問題などは、バブルの崩壊などの転機をしっかり捉えて本質的な経営改善を行ってこなかったことが原因と考えています。

 

― 日本企業の人材開発力が向上していない原因は、どのあたりにあると思われますか。

 

勝亦さん 90年代以降の日本企業を見ていて感じることは、上位階層に行くほど競争の圧力が弱く、下に行くほど強くなる傾向があることです。やはり、経営層、トップマネジメントのところから、人材開発が進んでいないところに原因があると思います。

  

2016528日掲載)

 

第4回「経営からキャリアを考えるコンサルタントを目指して」

中小企業診断士 勝亦健雄氏
中小企業診断士 勝亦健雄氏

 勝亦健雄さんへのインタビューの第4回は、事業の展開や現状の課題などについて、お話を伺います。

 

― ところで、中小企業診断士の特徴をどのようにお考えでしょうか。

 

勝亦さん 中小企業診断士という資格は、弁護士や税理士など他の士業と比較してみると、独占業務がないという特徴があります。

 独占業務がないことで、他の士業に比べて独立に不向きと思われがちですが、裏を返せば事業展開に縛りがないということでもあるので、士業の中でも自由度が高く活動領域も広いのです。ですから、自分なりのバックグラウンドを活かして仕事を進めていきたいと考えています。

 

― それがキャリアコンサルティング能力を兼ね備えた経営コンサルタントというわけですか。

 

勝亦さん キャリアコンサルタントといっても、実は日本と本場であるアメリカでは、実際に果たしている役割はかなり違うようです。日本では、ビジネス・パーソン個人のキャリア相談に与る人というイメージが強いように思いますが、アメリカではそうした個人面談はあまり行わないそうです。

 

― では、何を?

 

勝亦さん 組織編成や職務設計などを通じて、企業に対してコンサルティング・サービスを提供する存在です。要は、個人の問題が発生する前に、そうならないように組織のほうから変えていく仕事と捉えることができます。

 

― 日本ではそういう例は聞いたことがないですね。

 

勝亦さん 日本のキャリアコンサルタントに求められるのは、対症療法的といいますか、カウンセリング等を通じてメンタルヘルス上の問題が発生することを未然に防ぐ役割が暗に求められているようです。キャリアコンサルタントの受験資格を得るためには厚生労働省が認定する団体の講座を受けることが必要なのですが、実際に講座を受けてみて、そんな印象を持ちました。

 

キャリアコンサルティング能力を兼ね備えた経営コンサルタントを目指している勝亦さん
キャリアコンサルティング能力を兼ね備えた経営コンサルタントを目指している勝亦さん

― 経営からキャリアを考えるコンサルタントということでしょうか。

 

勝亦さん 私自身は、キャリア(仕事)という軸で、企業に対して経営コンサルティングのサービスを提供できるようなコンサルタントを志しています。

  企業の経営理念や事業ビジョンから個々の社員の能力開発やリーダーシップ開発などを進めていき、採用から組織全体の異動や配置までをひとつの包括的なプログラムのもとに行う、そういうコンサルティングを実現できるように、日々挑戦していきます。

 

― 日本では、未だにないものですね。なかなか売るのは難しくはないですか。

 

勝亦さん そのとおりです。独立して1年ほど経ちましたが、事業としては試行錯誤の段階にあります。

 人材活用とか人事というと、業種・業界や企業規模などに関係なく、どういう会社にとっても関係するテーマではありますが、その分、ターゲットを絞り切れていないことが難点です。

 

― 当面の目標といいますか、具体的なプランなどがあればご紹介ください。

 

勝亦さん 事業目標というわけではないのですが、できるだけ早く安定した収益源を確立したいと思います。また、知人とコンサルティング会社を設立するという話もしています。次の事業展開も見据えて、事業に投資する資金を計画的に管理しながら、基盤作りを進めているところです。

 

― 貴重なお話をいただき、本日は、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

 

インタビューを終えて

 サラリーマンのころの実体験から、これまでにないサービスを開発して提供していこうという勝亦さん。まさしくミッションを自覚して、独立・起業されたものと推察します。

 日本の企業が、再び国際競争力をもって活性化していくには、技術やブランドだけでなく、やはり人の面でも国際競争力がないと実現できないでしょう。そのためには、そこで働く人々がキャリアを自律的に考えて組織とともに開発していくことができるようになっていく、そういう社員と企業との関係が構築されていくことが前提条件となるのではないでしょうか。

 勝亦さんの活動が、社員と組織の関係を大きく変えていく触媒のような働きを実現されることを願って止みません。

  

201664日掲載)

                      写真・構成・文章作成:行政書士井田道子事務所+QMS