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退職管理をフレームワークから作り直す(5)

退職管理をフレームワークから作り直す(5)

 

 退職予定者の補充及び人事異動や職務編制の変更などによる業務の引き継ぎといった形で退職者が出た後の組織的な対応を行うと同時に、組織の外における退職者が出たことによる影響を評価し適切な対応策を打ち出すことも必要です。これを採用市場におけるレピュテーションマネジメントと呼ぶことができます。

 特に、退職者が続出している状況というのは決して好ましいものではありません。早期退職(退職勧奨)制度の実施や整理解雇を行ったわけでもないのに実際に退職した人数が多とか、従業員の退職率が高いというのは、採用だけでなく提供している製品・サービスにとってもマイナスです。というのも、単に人事の問題ではなく品質が安定しなくなったりコストアップにつながったりするかもしれないからです。もちろん、1人の退職者が転職サイトなどに辞めた会社の悪口を書くのはやむを得ない事情があるかもしれませんが、それが多数の声となると組織としてのあり方に問題があるという事実もあります。

SNSや従業員の口コミサイトなどが普及し、現・元従業員の発信力が強まっている現実を踏まえて、退職者や退職予定者と組織との関係性を健全なものに保っておく必要性は、かつてないほど高まっています。こうした点を踏まえて人材市場のおけるレピュテーションマネジメントに取り組みます。

 

 さて、人材市場、特に転職市場でのレピュテーションを左右する口コミのコメントには、一般に次のような特性が3点あります。

 第一に、書き込まれる情報にバイアス(偏り)があり、そのバイアスの傾向がネガティブな方向が強化されやすい点です。満足して働いている人はわざわざ口コミを書く動機が薄く、仮に退職することがあっても個人や家庭などの事情によることが多いでしょう。仕事や職場の現状に不満がある時に「誰かに伝えたい、不平不満を吐き出したい」という心理が働くため、ネガティブな声が目立ちやすくなります。

第二に、口コミサイトの多くは他人の口コミを見るために自分も投稿するというルールがあるため、具体的なエピソードに乏しく中身の薄い投稿でも投稿せざるを得ないことがあります。その結果、他社のエピソードをなぞりがちで、ネガティブな声が再生産されている可能性があります。

第三に、昔の書き込みが残ったままで、経営体制の変更や働き方改革などによって現在は改善されているとしても、ネガティブなコメントはそのまま掲載されていることもよく見られます。反対に、以前は好意的なコメントがあったとしても、昔の話で、今は悪い方向に変わっているケースもあります。3年以上前のものはコメントの内容を鵜呑みにするのは危険でしょう。

こうした特性を踏まえた上で、自社に関するコメントを評価します。その際に具体性・近接性・複数性・多面性といったフィルターにコメントをかけてみることが有用です。

具体性とは、コメントがどの程度具体的に書かれているのかを判断することです。「自分が所属していたのは〇〇支店××グループで、残業は月平均40時間。繁忙期は9月と3月」など固有名詞や数値があるものです。「最悪」「ブラック」「最高」といった感情的・感覚的な表現ばかりが並んでいたり、具体的ではあっても特定の個人を誹謗中傷するだけのものは、組織的に課題を解決しようとするよりも、場合によっては法的措置を取ることを検討すべきかもしれません。

近接性とは、昔のコメントはあまり意味がなく直近のものほど重視することです。直近というのはここ12年程度です。5年以上も前では、取り扱う意味がないでしょう。従って、定期的に自社に関するコメントを洗い出してみることでレピュテーションマネジメントに資する情報を得ることができます。人材の流動性が高い組織では毎月、一般の組織では半期から1年に1回といったサイクルで行うとよいでしょう。

複数性とは、運営者が異なる複数のサイトに同様のコメントが及んでいたり、同じサイトであっても相異なる投稿者が同じ課題を指摘していたりするものです。これは、従業員アンケートで指摘される問題を扱う場合と同様で、特定の1人だけが叩いているのであれば個人的なトラブルの可能性が高いので、それはそれとして対処します。

多面性とは、職種や部門及び立場(管理職か一般の社員か非正規の社員かといった違い)など、職場のカルチャーや処遇上の位置づけが異なる人々のコメントであるのか否かを評価することです。同じ職種や部門、同じ立場の人々の見方であれば、会社全体というよりも特定のグループの問題ですし、様々な人たちの見解であれば、会社全体で課題があると判断できます。

 

これらの4種類のフィルターを通して明らかになった課題があれば、早急に何らかの対策を講じることになりますが、現実にはなかなか行動に移せないかもしれません。そこで、退職した人々の声だけでなく、現在いる社員や第三者の声も聞いてみることで、採用市場における自社のレピュテーションを改めて評価してみてもよいでしょう。

例えば、自社の社員(同僚や後輩など)に非公式な場で「(口コミサイトで)こういうコメントを見たけど本当のところどう思う?」と尋ねてみることです。経営者や人事がランチ会やオフサイトミーティングなどを通じて幅広く社員と交流する機会を設けている組織であれば、そうした場で聞いてみるのも一案です。

また、転職エージェントなどに尋ねてみるという方法もあります。転職エージェントは採用担当者と直接コミュニケーションを取っていることもあるので、自社の評判や転職希望者の間での要望などを独自の表現で伝えていることもあります。もちろん、複数の転職エージェントから話を聞き出すことができれば、より望ましいでしょう。

 こうした場合、口コミの真偽を判断するのではなく、退職者であっても広く声を聞いて課題を洗い出そうとしている姿勢を見せたり、会社として自社が採ってきた対策によって変化が出てきているのかどうかを検証することが重要なのです。

転職サイトの口コミはすべてを鵜呑みにする必要はありません。ただ、傾向を掴むための材料としては、社員の声と同様になくてはならないものです。退職者やこれから採用しようとする人たちも、現に働いている社員とともに組織を自社のレピュテーションを支えていることを強く意識しておく必要があります。

 

(6)に続く 

 

作成・編集:人事戦略チーム(2026525日更新)