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退職管理をフレームワークから作り直す(3)

退職管理をフレームワークから作り直す(3)

 

退職に関する手続きについて滞りなく進めることができるのは、組織として必要最低限の退職管理を行うことができたに過ぎません。マネジメントの次の段階としては、退職理由の分析・特定と組織的な改善、退職者が発生した後の組織的な対応、人材市場のおけるレピュテーションマネジメント、退職者と組織との良好な関係の構築・維持など、退職を一つの契機として次のビジネスチャンスを生み出し活用することが求められます。

 今回は、その中で退職理由の分析・特定について考えます。

 

一般に、退職理由の分析・特定の有力な手段として退職面談(エグジットインタビュー)を行う組織が多いでしょう。これは、退職を希望するもの(自己都合退職者)や定年退職者などが退職する前に、組織として退職予定者との正式な面談を実施する機会を設けるものです。昔から外資系企業や大手企業などで行われてきたように思われますが、今では実施したことがない企業のほうが少ないのではないでしょうか。

退職代行会社経由で退職を申し出て退職手続きに入る場合などは、ルールや慣行として退職面談があっても実施できないこともありますが、限界はあるとしても退職面談を通じて退職に至った経緯やその理由などを聞いてみて、組織的に改善すべき事項が浮かび上がれば必要な対策を取っていくべきです。そのため、退職面談を実施するにあたっては、形だけの儀式や単なる手続きにならないように十分に注意して臨みます。

1のポイントは、退職面談の目的は辞めようとしている人材を引き留めることではないという点です。退職予定者が退職の意思を書面(退職届や退職願など)で正式に示しているということは、辞めるという意思決定が本人の中で既に行われたのであって、退職を口にすることでより良い労働条件を引き出そうといった交渉を求めているわけではありません。実際、退職が正式に決まった後の面談で引き留めるような話を始めると、退職予定者はそういう話は終わったことと思うだけです。

従って、退職面談の目的は会社の課題を把握することです。これからの会社のありかたとして何か問題があると気がついていることがあれば率直な意見を聞かせてほしい、という姿勢で臨みます。会社側の面談者は語るのではなく、聞くことに徹するのです。会社側の面談者が人事担当者であれば、退職に関する手続きや付随する事項(最終出勤日の確認、貸与品などの返還、私有物の持ち帰り、社宅からの退去など)なども退職面談で話し合うことも可能ですが、面談の目的が異なるので、二度手間であっても別の機会に打ち合わせる方がいいでしょう。

第2に、面談を行う人の人選が重要です。原則的に直属の上司が面談を行うのは避けるべきです。パワハラは言うまでもなく、人間関係や人事上の不満などに起因する退職理由がありうる以上、上司が相手では話せるどころか面談自体を拒否される虞があります。そこで、人事担当者や直接の関係が薄い役員あるいは経営者が直接行うのが望ましいでしょう。とりわけ経営者が行う場合は、圧迫感を与えないようにリラックスした雰囲気作りが必要です。

3に、面談者は話の内容に対して感情的にならずにできるだけ客観的に受け止めることが要請されます。退職者から厳しい指摘(不満や批判、怒りの矛先が面談者に向いてくることも)が出ることもありますが、その場で反論したりくどくどと言い訳をしたりするのは避けなければなりません。経営者や人事としては退職予定者の話を全面的に否定したり誤解を解きたくなることが珍しくはないのですが、そうした状況でも相手の視点での事実をそのまま受け止めて、相手が認識していた事実や感じていたことを確認しながら面談を進めます。

4に、面談のタイミングも重要です。退職届・退職願が正式に受理されて、業務の引き継ぎも進んでいることを確認した上で、退職の12週間前に実施できればベストと言えそうです。退職後に改めて行うのは、報酬の支払いなど退職面談を行うために取り決めるべき事項が発生してしまい、却って話が拗れそうです。退職前に通常の業務時間内に業務の一環として退職面談を行います。

5に、改めて言うまでもないことですが、守秘義務を徹底することを確認します。面談で話した内容が、有給休暇の消化や退職金の取り扱いなどで不利益が出ることは一切ないとこはもちろんのこと、ここで出た話は相互に機密を保持すると最初に言明しておきますし、面談の最後にも再確認します。もちろん、個人を特定できない形で面談において指摘された問題点などは改善に活かすことになります。

 

 さて、実際に面談を行うとして、退職に当たって何か言いたいことがありますか?というような漠然とした問いかけでは退職予定者も答えにくいので、具体的に掘り下げることができそうな尋ね方を試してみることが望まれます。

 例えば、入社してあまり経っていないのに辞めるのであれば、入社前に期待していたことと実際で一番違った点を聞いてみます。経営幹部として期待していた人が退職するのであれば、「もしあなたが社長なら、この会社のどこを一番に変えたいと思いますか」というように聞いてみることもできます。特に不満はないが他社でのキャリアに挑戦したいという人であれば、転職を考えるようになった最初のきっかけを尋ねてみるべきです。上司や経営者の何気ない一言が人材の流出を招いてしまったのかもしれません。また、同僚にこの会社の良いところを伝えるとしたら何を伝えるのか聞いてみるのもいいでしょう。

 こうして退職者の本音を聞き出そうとしても、結局のところ本当の退職理由ははっきりしないことのほうが多いでしょう。そこで、面談から得られた定性的な情報に加えて、日常行っている従業員満足度調査やストレスチェックの結果、報酬・評価・教育研修などの結果のデータ、採用・退職・異動などのデータなども交えて、人事や組織に関する問題点が隠れていないか分析します。そして、退職者に共通する何らかのパターンがないか検証して、共通するパターンから浮かび上がる問題点を放置せず、具体的な改善につなげることになります。

 

大企業であれば経営者や人事部門との距離が遠いところを従業員満足度調査や業績評価の結果などのシステムや仕組みで対応しますが、中小企業では経営者と従業員の距離が近いが故に、日常的に声を聞いてはいても本音を聞くことが難しいかもしれません。

最も利害関係が小さいはずの再雇用の予定がない定年退職者であっても、どこまで本音を語ってくれるのかわかりません。まして、短い勤続年数で辞める人であれば、表面的な理由が留学や起業であっても、なぜ今そうしようと決心したのかという点では半分も本心を明かすとは思えません。

大手企業に比べて一人ひとりの影響力が大きいのが中小企業であるとすれば、退職の真の理由には、会社をより良くするためのヒントが凝縮されていると考えるべきです。直近で退職予定の方がいれば、経営者と退職予定者がランチのような少しリラックスした場を借りて、話を聞いてみることから始めてみてもいいでしょう。もしくは、顧問となっている社会保険労務士などの社外専門家や退職面談サービスを提供するサービス事業者など第三者を通じて、退職面談を行うという方法もあります。いずれにしても、退職面談は退職理由の特定・分析を企図しながら、自社の課題を洗い出す材料が得られる機会でもあります。

 

(4)に続く

 

作成・編集:人事戦略チーム(2026514日更新)