より激しく変化する事業環境に適応するには(2)
事業環境が変化する以上、事業戦略こそ第一に迅速に見直すべきものです。よく言われるように、ひとつの戦略に徒に拘り続けてはいけません。現在のプランがうまくいかないのであれば、すぐにプラン Bに移るべきです。
ただ、現在のように急変する事業環境においては、このようにプランAかBかというよりも、そもそも戦略の前提条件が変わってしまい、事業そのものをどうするのかが問われる事態も出てきます。そこでは、プランCを予め検討していくことが望まれます。
プランCとは縮退(縮小・撤退)戦略です。現在行っている市場から撤退したり、事業規模を縮小したり、開発プロジェクトを中止したりすることです。
プランCのポイントは実施するタイミングです。具体的に製品を開発したり、既に仕入れや外注への発注などを進めていたり、経営トップ自身が言い出した事業プランだったり、担当している社員の思い入れが強かったりすると、どうしても止めるという意思決定が遅くなってしまいがちです。中止決定のタイミングが遅くなって手遅れにならないようにプランAの立案段階から、GO/STOPを判断する時機と基準を社内で明示しておくなど、マネジメント上のルールを事前に設定しておくことが求められます。
プランCを具体的に進めるとなると、事業の売却や経営資源の入れ替えといったことを実施しなければなりません。例えば、早期・希望退職優遇制度は上場会社ベースで毎年50社、対象人数で1~2万人程度となっており、著しい業績悪化やコロナ禍のような景況悪化の時に緊急避難的に行う経営手法というよりも、定常的に事業や人員を入れ替えるマネジメントツールとして機能していると言えそうです(注2)。このように、事業の売却や経営資源の入れ替えが当たり前のこととして行われています。
プランCを備えておくと同時にもう一方では、次のプランA(プランA Ver2.0)の立案・検討に着手します。こちらは、もともと取り組んでいたプランAと顧客・技術・必要なリソースなどの面で共通点があればよいように思われますが、どれかひとつの要素で共通する部分があればよいという程度に割り切って考えます。プランCで縮退を検討しながら次の事業の種を育てることに着手しなければ、組織全体にとって明日はありません。
特に意識して取り組みたいのは顧客の入れ替えです。現状の顧客を一括りにまとめて捉えるのではなく、顧客をいくつかのグループに分けて把握しておきます。このグループ分けというのは属性によって区分するというよりも、事業戦略上の意味合いから分けるべきものです。
例えば、儲けさせてくれる顧客とあまりおいしくない顧客、要求は厳しいが製品やサービスを開発することにつながる顧客とただ買ってくれるだけの顧客、規模や事業の内容が成長している顧客と現状維持や下降トレンドに入っている顧客など、今後も付き合うことが望ましい顧客を抽出して、その顧客との取引を維持・拡大できるようにするにはどのような製品・サービスが期待されるのかを検討するところから、次のプランAが描かれます。
ちなみに、市場・製品・サービスの絞り込みと新製品開発を巧みに並行させていく企業の代表的な例としては、サイゼリヤを挙げることができます。立地や顧客という面では都市を重視する同社の事業戦略は、まさにコストリーダーシップです。それを実現し続けてきたのは、徒にメニューを増やさず、材料購買の面でも強みを発揮できるようにしていることです。同時に、同じメニューばかりで飽きられることがないように、新しいメニューも提案しており、そこから新たな定番商品が生まれるのです。商品を入れ替えつつあれだけの低価格を維持できるところに、コストリーダーシップ戦略の真髄が表れています。
こうしたアプローチは事業戦略を考えるためだけのものではありません。日常生活においても適用できるものです。例えば、ランチに何を食べるのかという意思決定を考えてみましょう。
今日は麺類、昨日は牛丼、先週はとんかつ定食やパスタランチだったというようにその時その場で食べたいものを食べるという人もいるでしょう。また、月曜はカフェ、火曜はラーメン、水曜はコンビニ弁当というように曜日によって決めている人もいるかもしれません。いずれにしても、場所(職場の立地条件など)と時間帯(一斉に昼休みとなるか交代で取るのか)と予算(ランチにかけることができる金額)を制約条件=環境=として、いくつかの選択肢の中から今日のランチを決めることになります。
ある日、時間がない中でプランAとして立ち喰いそば、プランBとして隣りのコンビニでおにぎりを買おうとしていたとします。あいにくそば店は込み合っており入店を諦めて、コンビニでは既に食べたかったおにぎりが売り切れていたら、どうするでしょうか。ここでプランCとして「食べない」という選択肢が登場します。
その日のことだけであれば「食べない」という選択肢もあり得ますが、たびたびこうした事態が起きたりコスト面で外食が厳しいのであれば、外でランチを買ったり食べたりするのではなく、自分で弁当を作って持参するという方策に行きつくかもしれません。これもまた、プランCです。
事業環境が変化するのは組織も個人も同じです。ランチを選ぶという日常的な意思決定でも、大企業の事業戦略と同様に迅速に見直すべきものです。時にはプランCを選ばなければならないこともあります。その時になって慌てないために、予めプランCを検討していくことが不可欠なのは組織も個人も同じです。
特に中小企業は組織的にも人材面でも限られていますから、従業員や取引先などには一切相談せずに、経営者が独りで頭の中でプランを検討し、実行する場合をシミュレーションしておかなければなりません。プランCを考えていることは、現状では、決して他者に漏らしてはならない事項でしょう。
【注2】
データについては以下のサイトを参照してください。
2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
作成・編集:経営支援チーム(2026年3月31日更新)