クラウディア・カルディナーレ氏の訃報に接して

クラウディア・カルディナーレ氏の訃報に接して

 

20世紀後半のヨーロッパを代表した女優の1人が87歳で亡くなったと報じられました。シチリア出身者の両親のもとに生まれチュニジアで育ち、主にイタリア映画界で活躍したクラウディア・カルディナーレ氏です(注1)。

アメリカ、特にハリウッドで活躍した女優にはハリウッドらしい明るい魅力がありますが、イタリアやフランスなどのヨーロッパの女優にはまた大きく異なる魅力があります。その中でも、氏は若い娘のもつ魅力から妻や娼婦などの魅力までも幅広く体現してきた女優でした。

ちなみに、筆者が個人的に観たことがあるのは以下の作品(注27)です。

 

「若者のすべて」(“Rocco e i soui fratelli1960年伊・仏合作)

「81/2」(“Otto e mezzo1963年伊・仏合作)

「山猫」(“il Gattopardo1963年伊・仏合作)

「家族の肖像」(“Gruppo di famiglia in un interno1974年伊・仏合作)

「ナザレのイエス」(“Jesus of Nazareth1977年英・米合作)

「フィッツカラルド」(“Fitzcarraldo1982年西独)

 

「若者のすべて」「山猫」「家族の肖像」の3作品はいずれもルキノ・ヴィスコンティ監督の映画で、それぞれ他の女優には代えがたい存在感を見せています。この中で「山猫」における若き日のアラン・ドロンとの競演ぶりは、作品全体の貴族趣味とも相俟って、贅沢の限りを尽くしているように思われます。

「81/2」と「ナザレのイエス」では、出演シーンは多くありませんが、そこでも明確な存在感を示しています。前者はフェデリコ・フェリーニ監督、後者はフランコ・ゼフィレッリ監督という、20世紀後半のイタリアを代表する映画監督(兼オペラ演出家)との仕事でした。多分、他の女優が当該の役に扮していたならば、作品全体の価値や印象を左右しかねないものでしょう。

「フィッツカラルド」は当時西ドイツで活躍していたヴェルナー・ヘルツォーク監督の作品です。この映画は、アマゾンの流域にオペラハウスを造ろうとする主人公の物語で、実際にアマゾンで長期ロケを敢行しますが、主役の交代を繰り返したり一から撮り直したりするなど、ストーリー以上に映画製作自体が「憑りつかれた男」の姿を彷彿とさせるものになっています。ここでは、主人公のビジョンを理解して支援する唯一のキャラクターである娼館の女将を演じています。

 これらの他にも多数の作品に出演しています。西部劇もあれば、大ヒットしてシリーズ化されるコメディーもあれば、フィルム・ノワールもあります。現代劇や歴史劇もあれば、ラブ・ストーリーや宗教劇もあります。演じる役は様々ですが、あくまでもヨーロッパの女優として活躍を続けてきたことは確かです。

 

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クラウディア・カルディナーレさん死去、87歳 「8 1/2」など出演 | ロイター

名女優クラウディア・カルディナーレさん死去 87歳 「8 1/2」「山猫」など出演 - スポニチ Sponichi Annex 芸能

 

 

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  作成・編集:QMS代表 井田修(2025924日)