ロバート・ウィルソン氏の訃報に接して
先週木曜日(7月31日)、アメリカの舞台演出家兼劇作家のロバート・ウィルソン氏が83歳で死去したことが公式HPで発表されました(注1)。それを受けてメディアでも訃報が報じられました(注2)。
氏は1960年代より実験的なステージを創作する舞台演出家兼劇作家として活躍し、演劇・オペラ・ダンスなどの舞台芸術の分野で20世紀後半を代表する演出家でした。また、舞台照明やインスタレーションなどステージに関連するものだけでなく、彫刻、絵画、家具などのデザインでもさまざまな業績を残しています。
個人的には、オペラ“浜辺のアインシュタイン”(注3)と“白鳥の歌”、“浜辺のアインシュタイン”の製作模様を描いたドキュメンタリー映画(注4)を観たことがあります。
最初に触れたのは“浜辺のアインシュタイン”のドキュメンタリー映画です。1981年だったか、歌舞伎町にできたシアターアプル(現在の新宿東宝ビル、当時のコマ劇場の地下にあった劇場でもともとはコマ劇場の稽古場だったところ)の杮落しでコンテンポラリーダンスカンパニーの公演をゲネプロから観たこともあり、現代の舞台芸術の製作過程に多少の興味を持っていた頃でした。この映画で、ロバート・ウィルソンとパフォーマーたちのやりとりやフィリップ・グラスの音楽(注5)とルシンダ・チャイルズの振付にも注目するようになりました。
それから数年が経ち、天王洲アイル劇場(現在の天王洲銀河劇場)が開場することを知りました。その杮落し公演としてオペラ“浜辺のアインシュタイン”が行われた記憶があります。
この作品は上演時間が4時間はあったでしょうか。初日と最終日のチケットを事前に購入して、いよいよ体験するに至ったのですが、想像以上に舞台パフォーマンスにも音楽にもはまり込んで、1週間ほどの公演期間にわたってほぼ毎夜劇場に通って当日券を買って観続けました。当時、演劇やオペラやバレエなどを頻繁に観ていましたが、ここまで引き込まれた作品はありません。
今、オペラ“浜辺のアインシュタイン”の映像を見返してみると、30年以上も前に嵌まった感情が改めて蘇ってくるものです。こうした作品を生み出した人が亡くなったという知らせを聞くと極めて残念です。
【注1】
【注2】
たとえば、以下のように報じられています。
ロバート・ウィルソンさん死去 米舞台演出家、83歳:時事ドットコム
演出家ロバート・ウィルソン死去、「浜辺のアインシュタイン」ほか前衛舞台芸術の巨匠 - ステージナタリー
【注3】
【注4】
【注5】
映画“コヤニスカッツィ”のほうが先だったかもしれません。
作成・編集:QMS代表 井田修(2025年8月3日)