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“正しい”努力(3)

“正しい”努力(3)

 

“正しい”努力は、ゴールのイメージをできるだけ具体的に描くことから始まります。それが組織の中で一人ひとりの担当者までイメージを具体的に描くことができたとしても、それだけでは不十分です。イメージしているゴールが結果として得られるまでの確たる見通しをもてなければ、意味のあるものとはなりません。

例えば、未経験者に新規開拓を担当させるとして、向こう1ヶ月の間に1件でも成約できればよいのであれば、その第一歩として何から行動すればよいのか、まずは本人の腹積もりを訊ねることから始めるべきでしょう。

もし、「やってみます」とか「頑張ります」といった言葉しか出てこないのであれば、“正しい”努力が見られないどころか、無駄な動きしか期待できません。まして、上司や先輩などの指導する立場にある者が、表面的な言葉を真に受けて、「よし、頑張ってこい」などと精神論にもならない指示を与えるようでは、本人も何をどのように努力すればいいのか、わからないままでしょう。

もしかすると、明日には黙って退職するつもりかもしれません。せめて、「営業マニュアルにある通り担当地域の地域分析をします」程度の具体的な行動につながる答えが欲しいところです。もしも、本人に具体的な行動が見えていないのであれば、そのヒントを与えたり、上司や先輩がやって見せることが必要かもしれません。

つまり、手段やプロセスが目に見えているか、今、この瞬間から何に着手すればよいのか理解しているのかということが、“正しい”努力をするのに不可欠な要素です。ただ、手段やプロセスの理解度は人によって大きく異なります。

個人であれば、自分の理解に応じて、とりあえずやってみる、というアプローチで構いません。その結果が見当外れであったとしても、すぐに別のやりかたに変えればいいのです。「今年の夏は25メートル泳げるようになる」という目標に対して、現状、まったく泳げないのであれば、まずは水に慣れるところから始めるべきですが、その方法としてスイミングスクールに通い始めるのでもいいですし、水で遊ぶ施設に連れて行ってもらうことでもいいでしょう。本人の年齢や居住地域などの属性条件や、本人の置かれている家庭環境や経済状況などの環境条件などにより、選択できる手段は限られているかもしれませんが、その中から適切なものを選び、今日明日から実行するだけです。

組織として“正しい”努力をするには、一人ひとりが手段やプロセスを理解するとともに、具体的な行動に移すために予算や必要経費を確保したり、労働時間から一定の時間を割いたり、活用可能なリソース(社内外の学習ツール、参考となる経営情報など)へのアクセスを認めたり、他者(同僚や他部門など)の協力などを得られたりすることが必要なのは改めて言うまでもありません。

その上で、すぐに行動に移すことができるように習慣を変えることです。

頭ではゴールのイメージをもつことができても、日々のルーティンでやることがあると、新たに取り組む事項は後回しになり、結局、着手すらしないのが常でしょう。“正しい”努力を妨げる最大の要因は日々のルーティンや習慣的な行動かもしれず、行動に移すと決めた時が実行に着手する時でないと、何も進みません。

言い換えれば、なんとなく同じことを繰り返すだけではない何かが必要なのです。これまでの習慣や一時的な感情に流されて、やった気になっただけではないか、と本人も周囲も問うべきです。

マネジメントとしては、社員一人ひとりに単にゴールのイメージをもたせて終わりではなく、そのゴールに向けて何をすればよいのか、何から取り組みたいのか、本人に聞いてみることは必須です。そして、必要な手段(予算や時間配分の見直し、他部門や同僚たちなどへ協力を要請することなど)を手配したり、時には本人が自ら試みてうまく行きそうかどうか黙ってみているなど、相手や状況に応じた対応をとることが肝要でしょう。

このように、“正しい”努力の第2段階は、具体的にイメージしているゴールに至る道筋をある程度明確に見通すことができているかどうかが問われます。このように環境を整えた上で、後は本人のやる気や努力を待つというのではダメで、合目的的に本人が動き始めたかどうかを見定めることも望まれます。そこには、日頃の行動が多少なりとも変わったと確認できるものがあるはずです。

 

(4)に続く

 

  作成・編集:経営支援チーム(2023726日)