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働くのに最高の職場2023<2022年調査>(1)

働くのに最高の職場20232022年調査>(1

 

 コロナ禍への対応を超えて、労働力の不足感や賃金の上昇が目立っている状況において、“Quiet Quitting”(静かな退職)や“Turnover Contagion”(離職の伝染)がトレンドとなった2022年で、「働くのに最高の職場」はどのような組織でしょうか。

今回は110日にグラスドア社より発表された“Best Places to Work Employees’ Choice Award”の結果についてご紹介します。まず、アメリカ合衆国の大企業のうち上位100社にランキングされた企業を業種別にまとめたものが下表です。

 

大手企業上位100

         

 

 

2023

 

2022

業種

社数

累計%

過去平均

社数

累計%

コンピューター関連

34

34

21.0

26

26

金融

9

43

7.4

7

33

ITサービス

8

51

10.6

16

49

コンサルティング

7

58

5

5

54

メディカルサービス

5

63

9

5

59

不動産

5

68

4

5

64

建設・設計

4

72

1.8

1

65

メディカル製品

4

76

5.6

8

73

消費財メーカー

3

79

4.6

2

75

航空・宇宙

3

82

2.8

2

77

税務・会計サービス

3

85

-

0

77

教育・学校

2

87

1.4

1

78

電力・エネルギー

2

89

0.4

2

80

外食

1

90

2.4

1

81

宗教法人

1

91

2.2

1

82

物流

1

92

1.4

1

83

広告・マーケティング

1

93

-

0

83

メディア

1

94

-

0

83

ゲーム

1

95

-

0

83

出版

1

96

-

0

83

産業機器メーカー

1

97

0.4

2

85

自動車ディーラー

1

98

-

0

85

自動車サービス

1

99

0.4

2

87

小売

1

100

7.6

9

96

その他

0

100

7.2

4

100

 

         

 この表から明らかなように、今年は「コンピューター関連」が更に多くを占める傾向が強まり、上位100社のなかで3分の1を超えるようになりました。この傾向はここ数年高まる一方です。対照的に、「ITサービス」の社数は半減しています。これは、企業業績の悪化や株価の下落が目立つITサービス業界で今まさに進んでいるレイオフ(人員削減)やコストカットの影響が、数字となって現われているものと思われます。

 上位3業種でほぼ50%を占めるのは昨年と同様ですが、今年は1社だけの業種が6業種から11業種へと増えており、産業界全体で人材獲得競争が進む中で成功している会社がどの業界でも出現してきていることを窺わせます。

 反対に、そうした人材獲得競争に負けている企業では、まさに、“Quiet Quitting”(静かな退職)や“Turnover Contagion”(離職の伝染)が進んでいるはずです。それは個々の業界での問題というよりも、どの業界においても人材獲得競争に負けるような施策を採る企業の問題なのでしょう。もちろん、そうした施策を採る企業というのは、企業業績の悪化や株価の下落が目立つために、働きやすい職場を作るよりもレイオフ(人員削減)による人件費削減や福利厚生プログラムや職場環境整備のコストカットに迫られているため、仕方がないところもあります。

 

 次に中堅・中小企業について見てみましょう。

 

中堅・中小企業上位50

       

 

 

2023

 

2022

業種

社数

累計%

過去平均

社数

累計%

コンピューター関連

13

26

13.6

17

34

コンサルティング

10

46

2.2

1

36

ITサービス

5

56

4.6

7

50

不動産

3

62

2.8

2

54

金融

3

68

5.4

4

62

メディカルサービス

2

72

1.6

3

68

小売

2

76

1.6

1

70

エンターティンメント

2

80

-

0

70

人材サービス

1

82

2.8

5

80

広告・マーケティング

1

84

2.2

2

84

セキュリティ

1

86

0.4

2

88

宗教法人

1

88

2

0

88

教育・学校

1

90

1.4

0

88

出版

1

92

-

0

88

航空・宇宙

1

94

-

0

88

食品製造

1

96

0.2

1

90

卸売

1

98

0.2

1

92

その他

1

100

0.8

4

100

 

 中堅・中小企業について見ると、「コンサルティング」が10社と前年の1社(過去5年間の平均では2.2社)から急増し、2番目に多い業種となったことが特筆されます。

 これは、「ホスピタリティサービス」(ホテル&リゾート、テーマパーク、クルーズなど)や「外食」のように従業員が施設や店舗などの現場に出社しなければ成り立たないビジネスは元より、一部の「コンピューター関連」や「ITサービス」に見られるように昨年来のインフレと金利の上昇に対してレイオフ(人員削減)を行ったり、従業員に出社を強く要請したりする方向に経営の舵を切った企業に対して、従業員サイドが即座に見切りをつけて他社や他の業界に転じていった結果ではないかと推測されます。

 「コンサルティング」は、もともと企業を対象とする事業ですから、顧客も自社も業務委託先もリモートで繋げてプロジェクトを進めるのに適した業界ではあるでしょう。また、大手であればそれぞれのファームのネットワークやブランドの違いが従業員を引き付ける要素にもなりますが、中堅・中小となると従業員の相互の関係や影響力が仕事を大きく左右するでしょう。そうであれば、他の業界よりも一層、従業員が働きやすいと思える環境作りに力を入れる必要があります。その結果が、今回の調査結果に表れているのではないでしょうか。

 

 業種別に見た場合、大手企業にも中堅・中小企業にも共通して見られるのは、公的組織や研究機関などが上位に入ってこなくなったことです。

詳しい事情はわかりませんが、このように姿を消した業界や一般の製造業は、働きやすい職場作りやそうした環境を生み出すリーダーシップという点で、ポストコロナ時代において従業員を引き付けるものが弱いのでしょう。単に処遇水準が低いというのではなく、リモートワークを限定的にしか認めないとかいきなりレイオフ(人員削減)を行うといった組織や人事に関するポリシーの運用ミスが祟っているのではないでしょうか。

 そうなってしまうと、仕事量が増えても黙って言われたことをするだけで終業時刻が来れば帰ってしまう、いわゆる“Quiet Quitting”(静かな退職)が職場を覆ったり、核になる従業員が退職するとそれに釣られるかのように他のチームメンバーや同僚たちが次々と退職する“Turnover Contagion”(離職の伝染)が見られるようになっているのかもしれません。そうなっては遅いのですが、目先の仕事量や退職者の補充にばかり目が行ってしまい、本来の問題解決からは遠くなるのが多くの組織の実態であるのかもしれません。

 

(2)に続く

 

【注1

調査結果の概要は、グラスドア社の以下のサイトを参照してください。

Glassdoor's Best Places to Work List Revealed | Glassdoor Blog

大企業については、グラスドア社の以下のサイトに結果が公表されています。

Best Places to Work | Glassdoor

中堅・中小企業については、グラスドア社の以下のサイトをご覧ください。

Best Small and Medium Companies to Work For | Glassdoor

 

 

作成・編集:人事戦略チーム(2023117日)