ロレッタ・リン氏の訃報に接して
今日、シンガーソングライターのロレッタ・リン氏が自宅で死去したことが報じられました(注1)。90歳でした。アメリカの国民的な音楽ジャンルであるカントリーミュージックの世界で、1960年代を中心に女性にとっての家庭環境や生き方をテーマとした曲を作り出すなど大きく活躍しました。
彼女が13歳で結婚して多くの子供を産み育てる一方で、たまたま手にしたギターを独学で学んで弾きながら歌い、曲を作り、レコードデビューし、カントリーの女王へと歩んでいく、そのプロセスを「歌え!ロレッタ、愛のために」(1980年USA)という映画で観ました。
この映画の原題“Coal Miner’s Daughter”(注2)の通り、炭鉱夫の娘として貧しい環境に生まれた彼女は、自身のことを題材に曲を作り自ら歌いました。ちなみに、映画を観た当時はもとよりその後もカントリーミュージックにはあまりなじみがなかった筆者は、ロレッタ・リンの歌声もほとんど耳にしたことがありません。
この映画では主演のシシー・スペイセク(注3)が自ら歌っているので、その声や姿を通じてカントリーミュージックとはこういうものというイメージが決定づけられたことは確かです。
それまでは、オーストラリア出身のオリビア・ニュートン=ジョンが70年代にカバーした“Jolene”や“Take Me Home, Country Roads”がカントリーだと思っていた筆者にとって、カントリーミュージックはアメリカンポップというよりも、本当にカントリーな土地で地元の人々が楽しむ音楽らしいと認識を改める契機となりました。
後年、ロレッタ・リン自身が歌う姿(注2)を重ねて見ると、映画でのカントリー色の強いイメージよりも、一般的な歌手がカントリーミュージックを歌っているに過ぎないように見えます。それだけ、カントリーミュージックはアメリカの音楽の中で主流となっていたようです。その代表的な存在がロレッタ・リンでした。
【注1】
たとえば、以下のように報じられています。
伝説のカントリー歌手ロレッタ・リンさん死去、90歳 | Reuters
ロレッタ・リンさん死去 90歳 女性カントリー歌手の草分け:時事ドットコム (jiji.com)
【注2】
【注3】
この当時、シシー・スペイセクは既に「キャリー」で主人公の内気な少女(だが実は途方もない力を秘めておりその力は滅びにつながる)を演じていました。演じるキャラクターの面でも、自らギターを弾いて歌う技術の面でも、同じ女優が扮しているとはとても思えない幅広さを感じます。
【注4】
作成・編集:QMS代表 井田修(2022年10 月5日)