リモートワークで評価するには(6)

リモートワークで評価するには(6

 

リモートワークでの評価を行う上で特に留意すべきポイントについて述べてきましたが、最後にその要点をまとめてみましょう。

 

まず始めに、必要があれば仕事を定義し直すということがあります。

これは、コロナ禍のように日々状況が変化する際には、毎日、仕事を定義(再定義)することが必要となります。そうすると、昨日、今日、明日とやるべきことが変わるかもしれませんし、誰が何をやっているのかわからなくなるかもしれませんから、映像(リモートの朝礼や終礼)でも文書(日報)でもよいから記録を残しておくことが求められます。経営トップや上司が細部まで指揮命令するよりも、より現場に近いところで本人や周囲が発案し実行することで仕事が進みやすいでしょう。そこで、一定期間(毎月~四半期毎に)で振り返って再定義した仕事を公式化(文書化)することで、組織としてどの仕事を誰が担当したのかという認識をすり合わせておくことになります。

 

第二に、仕事をする環境をできる限り整備しておくことが重要です。

この環境整備は主にIT環境の整備を意味します。リモートワークを現に行っているということは、既にその仕事や職場がITで処理可能なものであるはずです。その多くは、既に世の中にあってそれなりに普及しているものを導入することになります。たとえば、ZoomTeamsを活用したり、ファイルの共有やデータのクラウド化も進めたりすることです。実際にリモートワークをうまく進めているところは、現場主導でより使いやすいツールやアプリを試験的に導入して、それらがいつの間にかそれらが仕事を回すうえで不可欠なものになっており、ITに個人的に詳しい現場の社員や若手社員がベテラン社員や経営層・マネージャー層に使い方を手取り足取り教えていたりします。

 

第二のポイントに伴って第三のポイントがあります。すなわち、経営層や管理職といった評価を行う人と現場の社員など評価の対象となる人との関係が逆転していることに適切に対応しなければなりません。

従来の仕事であれば、先輩や上司がより熟知しており、後輩や部下を指導するという構図が実態と一致しますが、リモートワークや働き方改革といったことを推進しようとすると、後輩や部下が先輩や上司に教えなければならない事態が多発します。そしていざ評価を行うときになると、被評価者のほうが仕事のできる立場にあることを評価者(上司)の方が認めたくない心理が働いていたりするのかもしれません。それがまた、リモートワークの普及・定着を心理的に妨げることになりかねません。

リモートワークを契機に、評価は上司がするものという既成概念を脱却して、評価は関係する人々が相互で行うフィードバックの場と捉え直すこともできます。むしろ、そう捉え直して評価制度を見直すことが求められるでしょう。

 

次に第四のポイントとして、評価を行うタイミングを柔軟に考えて実態に合わせて運用することが求められます。

コロナ禍のように急激な事業環境の変化が起きているときには、リモートワークの導入を始めとしてさまざまな仕組みやツールを試行して事業運営をなんとかやりくりしていかなければなりません。コロナ禍であろうとなかろうと、状況の変化に柔軟に対応できる組織では、「会社のルールだから」とか「年度末は評価を行う時季だから」といった理由で評価を行うわけではありません。評価の目的や狙いを実現するのに今は適切なタイミングではないと思えば、正式な評価を延期したり簡素化して一部分だけを行ったりするなど、マネジメントの現実に即した対応が求められます。

 

第五のポイントは、評価の基準についてです。評価のタイミングを変えざるを得ないとともに、具体的な評価基準も変えざるを得ない会社も多いはずです。

たとえば、顧客訪問〇件といっても、コロナ禍では実行できません。仮にZoomでの面談実施の件数を訪問件数に代用したとしても、顧客の受け入れかたも違えば、こちらのプレゼンや商談フォローのやりかたも変わるので、同じ件数をそのまま目標値にして、それが未達かクリアしたかを論じても意味がありません。

目標達成度だけでなく、行動やスキルの評価についても同様です。リモートワークに即した基準を組織全体で討議・検証して定義することは、現時点では間に合いません。今回はむしろ、現場で当事者同士が評価できる点と改善が望まれる点を洗い出して、話し合っておくのに止めておくほうがよいでしょう。

ちなみに、リモートワークだから部下の仕事ぶりを目の前で確認できないため、仮に仕事結果が完璧に出ていたとしても、そのまま結果オーライで良い評価を下すわけにはいかない、といった意見をきくこともあります。しかし、リモートでの打ち合わせやデジタル情報のやりとりを、日常的に習慣化して蓄積して活用していれば、部下の仕事ぶりが把握できないことはあり得ません。

 

第六に、評価結果とその処遇への反映の程度が妥当なものだと社員の多くが納得しうるものであることを忘れてはなりません。これまであまり経験したことのないリモートワークを基本とした職場において評価を行うとなると、事前準備や変更点の周知などに相当な労力をかけたとしても、相当な不安感がつきまとうものです。

そこで評価の納得性や妥当性を担保する上でのポイントとして、次の3点があります。

まず、直近評価や印象評価などの評価のブレを防ぐことです。これは、リモートワークであるが故に評価者は目の前に部下がいないため、客観的に実績や行動にフォーカスして評価せざるを得なくなるため、自然と実現されうる可能性があります。

こうした冷静な見方ができるようになったのはいいことですが、部下の方はこれまでと同じかそれ以上に高く評価してくれるという期待をもっているかもしれません。この期待(部下の認識)と評価(上司の認識)とのずれが、より明確に表出する可能性が高いでしょう。

そこで、従来以上に評価面談が重要なものになります。これが第二のポイントです。方向性としては、評価面談をより公式化して言語化・明文化したものに進化させることです。

従来はこれらの面談やミーティングを対面で行うことで、上司がすべてを説明しなくても部下の方が上司の口調・態度・表情などから自分の評価を察して対応することもできたでしょう。しかし、リモートでの面接となると、できる限り言語化して明示的に説明しないと、互いに相手が何を言いたいのか、なかなか理解しにくいものです。面談だけでなく、評価の根拠となる事象を列挙したフォーマットに本人がコメント(言い訳)を記入することを求めてもいいでしょう。こうした場合、やはり多面評価の結果や日々の日報データの蓄積がものを言います。

第三に、評価を通じて職場の心理的安全性をはっきりと意識することです。評価の基準や手続き、処遇への反映方法など、コロナ禍での臨時対応もあって、評価全般について従業員からの質問や要望・意見などが数多く出てくるはずです。もし、従業員からの質問や要望・意見などがほとんど出てこないのであれば、これまでは心理的安全性が低かったと経営者や人事責任者は反省しなければなりません。

そうした質問や意見について、経営者や人事責任者が社内に向けてリモートの画面越しであっても自ら語りかける機会を設けて、評価に関する疑問や要望などに答えることが重要です。心理的安全性を高めるひとつのきっかけとして、こうした直接的なコミュニケーションの場を設けることが望まれます。

 

リモートワークでの評価を行う上で特に留意すべき第七のポイントとして、評価の公開性があります。

社員の中には職場内でのうわさ話や評価結果を居酒屋などで語り合う機会を喪失して、その不安や不満から評価時に否定的なことばかりを述べる者が出現するかもしれません。そうした際には、個人名は明らかにしない上で、こういう意見もあったということで事後に会社全体で評価や評価面接で出た話題を集約して、それぞれに会社としての見解や改善プランを示すことが重要です。直接会って話ができないからこそITツールを活用して、できる限り多くの疑問や異見を把握することで、リアルタイムでは困難かもしれませんが、リモートでの対話を試みることは忘れてはなりません。その積み重ねが評価の納得性や妥当性を担保します。

 

リモートワークを本格的に導入し始めている職場では、以上の7点について特に十分に留意して評価に臨むことが経営者や管理職及び人事部門に求められます。

 

 

作成・編集:人事戦略チーム(2021311日更新)