リモートワークで評価するには(4)

リモートワークで評価するには(4

 

年に1回とか半期に1回というように、毎年時期と回数を決めて評価を行っている企業にとって、直近の評価は通常通りのタイミングで実施することができなくなったり、具体的な評価基準がコロコロと変わったりして、評価をどのように行えばよいのか、評価者も評価される本人も途方に暮れることもあるでしょう。

コロナ禍のように急激な事業環境の変化が起きているときには、リモートワークの導入を始めとしてさまざまな仕組みやツールを試行して事業運営をなんとかやりくりしていかなければなりません。そのような状況でスケジュールありきの発想で評価を行うと、かえって問題を拗らせる虞があります。

というのは、評価を行うと決められた時期が来たから、機械的に評価を行おうとすると、日常の仕事もスムーズに進んでいない時に更に負荷をかけることになるからです。まして、常日頃からコミュニケーションがうまくいっていない関係にある上司と部下ともなれば、互いにストレスを抱えて評価のほかの本来の仕事に支障が生じるかもしれません。そのストレスが評価をきっかけに爆発してしまう例も耳にします。

コロナ禍であろうとなかろうと、状況の変化に柔軟に対応できる組織では、「会社のルールだから」とか「年度末は評価を行う時季だから」といった理由で評価を行うわけではありません。人材育成を目的とするにしても処遇に何らかの差をつけるのが評価の狙いであるにしても、その目的や狙いを実現するのに今は適切なタイミングではないと思えば、正式な評価を延期したり簡素化して一部分だけを行ったりするなど、マネジメントの現実に即した対応が求められます。大きな組織であれば、人事部門が経営陣に提案し説得して、評価の手続きを一部飛ばしたり、時期をずらしたりしても大きな問題が生じないように処遇への反映方法を部分的に変更するでしょう。

このように評価のタイミングを変えざるを得ないとともに、具体的な評価基準も変えざるを得ない会社も多いはずです。

たとえば、顧客訪問〇件といっても、コロナ禍では実行できません。仮にZoomでの面談実施の件数を訪問件数に代用したとしても、顧客の受け入れかたも違えば、こちらのプレゼンや商談フォローのやりかたも変わるので、同じ件数をそのまま目標値にして、それが未達かクリアしたかを論じても意味がありません。

目標管理だけではありません。行動やスキルを評価するにしても、仕事のやり方がリモートワーク中心に変われば、行動やスキルも変わります。

行動についていえば、通勤というグレーゾーンがなくなったために、オン(業務中)とオフ(プライベート)の切り替えが即時であることが大きく影響するでしょう。在宅勤務では、電話やチャットでの問い合わせに応じるのも仕事のうちですが、9時ちょうどから頭も体も仕事モードになるかどうかは個人差もあります。

また、Zoomでミーティング中にお子さんやペットなどの同居者が闖入してしまうなど、オンにオフが侵食するケースひとつとっても、これをどのように評価するのか決めかねていたり、そうした事実を無視して評価を行ったりする企業もあります。

スキルについても同様です。期初にはリモートワークを想定していなかった多くの企業にとって、リモートワークを行うのに必要なスキルの定義とその習得レベルの判定を真正面から行えば、管理職やベテラン社員の方がスキルの評価としては低くならざるを得ません。この点ひとつを採ってみても、ルールとしての評価基準と仕事の実態から要請される評価基準の不一致が、コロナ禍という環境変化の下で顕在化しているのは事実です。

行動やスキルの評価についてリモートワークに即した基準を組織全体で討議・検証して定義することは、現時点では間に合いません。今回はむしろ、現場で当事者同士が評価できる点と改善が望まれる点を洗い出して、話し合っておくのに止めておくほうがよいでしょう。そうした作業を仕事の一環として日常的に行いながら、月に1回は取りまとめたものを振り返ることをしておけば、評価の時季だからといって評価基準の見直しに慌てて取り組むこともありません。

ちなみに、リモートワークだから部下の仕事ぶりを目の前で確認できないため、仮に仕事結果が完璧に出ていたとしても、そのまま結果オーライで良い評価を下すわけにはいかない、といった意見をきくこともありますが、こういうことを平気で口にする管理職の大半は、コロナ禍が起きる前でも、まともに部下の仕事ぶりを見ていなかったように思われます。

この連載コラムの第2回でも述べましたが、ITツールを使って日報や朝礼などを行うことも可能です。また、リモートであるからこそ、会議室やミーティングブースをわざわざ確保しなくても、1on1ミーティングを実践することもできます。リモートでの打ち合わせやデジタル情報のやりとりを、日常的に習慣化して蓄積して活用していれば、部下の仕事ぶりが把握できないことはあり得ません。今週、上司がどの部下とどのような打ち合わせをしたのか、すぐに思い出せるかどうかがポイントです。ITツールなども使ってちゃんと思い出せるのであれば、少なくとも評価を行うのに必要な情報は持っているはずです。

以上、ほんの一例ですが、コロナ禍を通じて、公式化された評価制度の仕組みと現実の運用実態に大きな乖離が更に目に見えるようになってきました。そのズレを今すぐに解消することは難しいとすれば、実態に合った柔軟な運用を行うことこそ、マネジメントに求められます。

 

(5)に続く

 

作成・編集:人事戦略チーム(202132日更新)