リモートワークで評価するには(2)

リモートワークで評価するには(2

 

評価を考える最初のポイントは仕事の定義です。リモートワークにせよリアルな職場(オフィス、店舗、工場など)にせよ、評価を行うということは、誰かが誰かにどういう仕事を任せるのか、ということが仕事を任せる側(上司)と引き受ける側(部下)の間で共通の認識があるということが大前提となります。リモートワークにおける評価がうまく機能していないとすれば、その前提が本当にあるかどうかを、まずは問うべきです。

いわゆるジョブ型の人事を行っている組織であれば、自分のすべき仕事が何かがわからない従業員というのは存在するはずがありません。なにしろ、○○という仕事をするのに××というスキルや条件を満たす人を雇用したのですから、仕事のやりかたやその結果について評価すればいいはずです。

一方、いわゆるメンバーシップ型の人事では、多くの日本企業がそうである(あった)ように、一人ひとりに割り当てられた仕事は必ずしも明確ではないでしょう。しかし、というか、そうであるからこそ、自分のやるべきことや果たすべき役割は理解できているのが、本来のメンバーシップ型人事です。そうである以上、明文化された職務記述書や職務権限規程などがなくても、自分のやるべき仕事はわかっているに違いありません。

リモートワークになったからと言って、いきなり従来の組織運営がすべて崩壊するわけではありません。もともと不明確だったり、相互に認識のすり合わせができていなかったりしたまま、リモートワークになってしまった場合に、仕事に関する認識のずれがより目立ってしまいます。リモートであるが故に職場でのちょっとした確認や相談がしにくくなり、日常的な仕事のずれが評価の時にまで後ろ倒しになってしまい、雪だるま式に本人の評価と上司や周囲の評価が大きく食い違うまで誰も気がつかないといったことも起きているようです。

そうならないために、リアルな職場では行っていなかった朝礼を敢えて実施するようにした会社もあります。在宅勤務であるからこそリモートワークの始まりを職場のメンバー全員で画面を通じて共有して、昨日の仕事はどこまで進捗したのか、今日一日それぞれのメンバーが何をするのか、当面気がかりなことがあればいつ誰に相談するのか、といったことを5分でも10分でもよいから打ち合わせの時間をもつことで、仕事についての認識のずれが大きな問題とならないように習慣化することが肝要です。

同様の効果を狙って、終業時に日報に記入したり、日報の代わりに映像でマネージャーに終業報告を行ったりする企業もあります。いずれにしても、日々の仕事に関する認識の相違は必ず起こるものとして、マネジメントのルールとして毎日のコミュニケーションを何らかの形で取って、職場のメンバー全員がマネージャーに対して相談しやすい雰囲気を作れるかどうかがポイントとなります。そこで、マネージャーがすべてを仕切るのではなく、職場のメンバーがそれぞれの持ち分について、毎日一言でもいいので発言するとか、今日やる(やった)ことを各自が自分の言葉で述べたり記載したりして、それを相互に確認するといった方法も採り入れることが望まれます。

例えば、営業データを基に顧客別チャネル別の売上動向や利益率の違いを取りまとめて、月次の営業報告書を作成する仕事を部下に依頼したとしましょう。マネージャーは日頃からこの仕事を処理してきているので、データの取り扱いには慣れています。しかし、部下はあまりやったことがないので、そもそも参照すべき営業データのタイミング(月末にアップデートされるのか毎日アップデートされるのか)によって、使うべきデータが違ってしまうことにも気がついていないかもしれません。そのため、納期ぎりぎりに出てきた部下からの営業報告書はデータが1ヶ月遅れのもので、使い物になりませんでした。

さて、この部下の評価を低くしてよいのでしょうか。悪い評価をつけるべきでしょうか。

リモートワークでなくても、データの確認を指示しなかったマネージャーのせいなのか、数字がおかしいことに気づかず、そのまま取りまとめた部下の落ち度なのか、双方に言い分はあるでしょう。業務指示の際に、マネージャーは「データをちゃんと確認してからやって」と言ったとしても、部下は入力やコピーのミスがないように十分に注意してほしいという意味に受け止めてしまうかもしれません。業務マニュアルを作成してミスが生じないようにするとか、RPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション)を導入して報告書作成業務を自動化すればいいのですが、すぐには実現できそうにありません。

この例で言えば、仕事の結果に問題がある点は悪い評価をするしかありませんが、本質は評価を行う時点にあるのではありません。仕事を指示する時点にあるのです。したがって、リモートワークで意思の疎通がうまく図れないのであれば、今回紹介したような方法を導入するなどしてコミュニケーションを取ることがマネジメントの必須事項となります。

結局、仕事の定義というのは、文書を取り交わしたり心理的な刷り込みで行ったりするものではなく、日々のやりとりの中で形成されるものです。リモートワークでは雑談やちょっとした相談が難しいのであれば、リモートワークの開始時や終了時、ときにはリモートでのランチ・ミーティングなどの場を設けて、意図的に仕事の定義を修正してすり合わせておくことが必要です。

そして、日々の再定義と修正を一定期間(毎月~四半期)の分を振り返って取りまとめることで、仕事の定義をいつもアップデートしておくことが望まれます。

 

リモートワークでの評価を機能させるのに、仕事の定義に関してまとめてみると、以下の4点となります。

  仕事は日々定義(再定義)する

  映像(リモートの朝礼や終礼)でも文書(日報)でもよいから記録を残す

  上司が指示命令するスタイルよりも本人や周囲が発案し助言するスタイルを採る

  一定期間(毎月~四半期毎に)で振り返って再定義した仕事を公式化(文書化)する

 

(3)に続く 

 

作成・編集:人事戦略チーム(2021216日更新)