働くのに最高の職場2021<2020年調査>(2)
次に、業種別の傾向や特徴などを見てみましょう。
大手企業の上位100社について、その業種別分布をみたものが表3です。
表3:大手企業上位100社の業種別内訳
業種 |
社数 |
累計% |
過去平均 |
コンピューター関連 |
17 |
17 |
20.7 |
ITサービス |
11 |
28 |
8.7 |
小売 |
10 |
38 |
6.3 |
金融 |
9 |
47 |
7.0 |
メディカルサービス |
8 |
55 |
11.3 |
メディカル製品 |
8 |
63 |
4.0 |
ホスピタリティサービス |
6 |
69 |
4.3 |
消費財メーカー |
5 |
74 |
5.3 |
コンサルティング |
4 |
78 |
5.3 |
外食 |
4 |
82 |
2.3 |
会計サービス |
3 |
85 |
2.3 |
航空・宇宙 |
3 |
88 |
3.0 |
その他サービス |
3 |
91 |
2.3 |
通信 |
2 |
93 |
1.3 |
人材サービス |
2 |
95 |
1.3 |
不動産 |
2 |
97 |
4.3 |
建設・建築 |
1 |
98 |
2.3 |
卸売 |
1 |
99 |
1.7 |
連邦政府機関 |
1 |
100 |
1.3 |
(注)「過去平均」は過去3年間の各業種の社数の平均値
緑字は過去平均よりも増加が著しい業種で、太字は2倍以上になったもの。
赤字は過去平均よりも減少が著しい業種で、太字は半分以下になったもの。
大手企業の上位100社については、上位を占める業種の間でかなりの変化が見られます。
コンピューター関連(ハード、ソフト、システム、セキュリティなど)が最も多くを占めるのは例年通りですが、メディカルサービス(病院など)は減少しているのに対して、ITサービス・小売・金融・メディカル製品が増加しています。これは、やはりコロナ禍の影響が出ているのではないかと推測されます。
メディカルサービス(病院など)は地域にもよるとはいえ、押し並べて勤務状況が厳しかったことは十分に想定できます。コロナ禍で忙しいのはメディカル製品も同様だったかもしれませんが、製薬会社や医療機器メーカーに働く人にとっては必要な薬剤や機材を供給する緊急対応や業務繁忙に対する報酬といった面で評点が上がったのかもしれません。
ITサービスは、多くの人々が在宅勤務となれば仕事をするのに必要なコミュニケーション・ツールを提供したり、情報のやりとりを安全に行うためにも必須のツールを用意したりして、必然的にビジネスが拡大したのでしょう。そこで働く人々にとって、多くの人や企業に求められるサービスを提供することは、やりがいにもなりますし、処遇もよくなることはあっても悪くなりようがありません。
小売や金融も外食も、コロナ禍で外に出ることも間々ならない一般の人々にとっては必要不可欠なビジネスです。そこで事業を成功裏に進めていくには、従業員満足度を高めることが求められますが、それがうまく行くことと会社が成長し収益を上げることとは同じことでしょう。
表4:中堅中小企業上位50社の業種別内訳
業種 |
社数 |
累計% |
過去平均 |
コンピューター関連 |
8 |
16 |
14.3 |
金融 |
7 |
30 |
5.3 |
人材サービス |
6 |
42 |
1.0 |
ITサービス |
5 |
52 |
3.7 |
コンサルティング |
4 |
60 |
2.0 |
広告・マーケティング |
3 |
66 |
2.0 |
メディカルサービス |
3 |
72 |
0.7 |
不動産 |
2 |
76 |
3.3 |
小売 |
2 |
80 |
1.7 |
レンタル |
2 |
84 |
0.0 |
宗教法人 |
1 |
86 |
0.3 |
消費財メーカー |
1 |
88 |
1.7 |
会計サービス |
1 |
90 |
0.7 |
ギャンブル |
1 |
92 |
0.0 |
出版 |
1 |
94 |
0.0 |
建設・建築 |
1 |
96 |
0.7 |
物流 |
1 |
98 |
0.0 |
公益法人 |
1 |
100 |
0.0 |
(注)「過去平均」は過去3年間の各業種の社数の平均値
緑字は過去平均よりも増加が著しい業種で、太字は2倍以上になったもの。
赤字は過去平均よりも減少が著しい業種。
中堅・中小企業の上位50社を業種別に見ると、コンピューター関連が大きく減少している分、他の業種が増加しているように見えます。なかでも、人材サービス・コンサルティング・メディカルサービス・レンタルといったところの増加が目立ちます。
中堅・中小企業は大手企業に比べてもともと変動が大きいのですが、今年は更に大きな変化があったように思われます。特に人材サービス・メディカルサービス・レンタルといったところは、人材の確保や安全に働くことができる環境や条件を整備しなければ、コロナ禍でビジネスを展開することは困難でしょう。また、コロナ禍の最中であったが故に、人材サービスやレンタルへの需要も高まっていたのかもしれません。少なくとも、メディカルサービスは規模の大小を問わず、需要は高いでしょうから、その渦中で事業を運営していこうとすれば、そこで働く従業員の労働環境をハード面だけでなくソフト面(組織運営のありかたなど)にも注目して、安心して働くことができるようにいち早く整備した企業が評価されているのではないかと推測されます。
今年のようにコロナ禍といった緊急事態が起こった年は、企業規模や業種特性の違い以上に、事態に対応する上でのリーダーシップが働きやすい職場かどうかを決める基準となっていたのかもしれません。次第に状況が悪化していくなかで、従業員や顧客がまずは落ち着いて日常の行動(仕事)に対処できるように指示を出したり、いち早く新たな状況に応じた仕事のやり方をやって見せたりするのがリーダーの果たすべき役割だった1年でした。言い換えれば、仕事のニューノーマルを試行錯誤はあっても実行してみせることが、リーダーシップにほかならなかったのです。
同じメディカルサービスでも、大企業(大規模な病院など)では当面のコロナ対応に手一杯というところが多く、従業員の評価は厳しくなりがちであったのに対して、中堅・中小企業(クリニックやメディカルサービスプロバイダーなど)ではトップのリーダーシップのもとに状況に陣族に対応できたところは従業員の評価も高いのではないかと思われます。
そうした意味で、個々の企業(組織)の緊急事態への対応能力の差が、ランキングの大きな変動を生み出した大きな要因であったのかもしれません。
作成・編集:人事戦略チーム(2021年2月5日)