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働くのに最高の職場2020<2019年調査>(1)

 

働くのに最高の職場20202019年調査>(1

 

 ご存知の方も多いと思いますが、昨年もまた12月に、グラスドア社より“Best Places to Work Employees’ Choice Award”が発表されました。その直近5年の結果をまとめてご紹介したものが表1です。対象はアメリカ合衆国の大企業です。 

 

1:直近5年間のベスト10の動向(注1) 

 

2015

2016

2017

2018

 

2019

(今年の発表)

Airbnb

ベイン

フェイスブック

ベイン

ハブスポット

ベイン

フェイスブック

ベイン

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ

ベイン

ガイドワイア

BCG

BCG

インNアウト・

バーガー

ドキュサイン

ハブスポット

グーグル

インNアウト・

バーガー

プロコア・テクノロジーズ

インNアウト・

バーガー

フェイスブック

ワールドワイド・

テクノロジー

グーグル

BCG

サモンズFG

リンクトイン

ファスト・

テクノロジー

ルルレモン

リンクトイン

ローレンス・リバモア研究所

BCG

インNアウト・

バーガー

ハブスポット

フェイスブック

インテュイティブ・サージカル

グーグル

リンクトイン

ワールドワイドテクノロジー

グーグル

アルティメット・ソフトウエア

ネスレ・ピュリナ・ペットケア

アドビ

セントジュード・チルドレンズ・リサーチ・ホスピタル

ルルレモン

VIPキッズ

10

ズィロウ

パワー・ホーム・リモデリング

アルティメイト・

ソフトウエア

サウスウェスト航空

サウスウエスト航空

 

 今回の特徴は、ハブスポットが前年の16位から一気に1位になったこと、前年2位だったズーム・ビデオ・コミュニケーションズが上位ランキングから消え去ってしまったこと、2011年(2010年調査)以来ベスト10にランクインし続けていたグーグルが11位に落ちてしまったこと、そして、相変わらずベインが最上位を争い続けている安定性でしょう。 

ハブスポットについては当HPでも以前ご紹介した資料もあります(注2)が、独自のカルチャーで急成長を遂げている企業として注目を集めてきた企業です。カルチャーや人材の特徴はもとより、それらをより高めて現に生きているものとなっているからこそ、最も高く評価されるに至ったのではないかと推測できます。 

ランキングから消え去ってしまったズーム・ビデオ・コミュニケーションズは、昨年4月にNASDAQIPO(新規株式公開)を行いました。これが、どの程度、マネジメントに変化をもたらしたのかわかりませんが、今回のランキングの変化からIPOが少なからぬ影響を与えたことを窺わせます。

一般に株式公開を行うと、株価を絶えず向上させようとする市場の圧力がマネジメントによくも悪くも影響してしまい、その会社独自のユニークな経営や長期的な視野に立った投資や研究開発などに支障を来すことはよく見られます。そうした弊害が株式公開前の予想以上であったが故に、改めて株式の非公開化に踏み切る企業も時々見かけます。 

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズも幅の広い選択肢の中から、従業員に高く評価されるマネジメントスタイルを今以上に志向する必要性が将来的には出てくるかもしれません。その第一段階が今回の結果に表れている可能性があります。 

久々にトップ10から姿を消したグーグルは、5位のサモンズ・フィナンシャル・グループから19位のMDアンダーソン癌センターまで同じレーティング(4.5)であるため、レーティングそのものは僅かな数字の差に過ぎないとも言えます。ちなみに、14位のレーティングは4.6ですから、トップに返り咲くのは、点数だけ見れば、容易に思えます。 

とはいえ、2015年にグーグルが1位だったときは4.5でしたから、従業員重視の姿勢がアメリカの企業社会全体でより高まっているなかで、グーグルといえどもレーティングを更に向上させるのは、容易なことではないかもしれません。 

また、同じグラスドア社の調査「トップCEO」において、グーグルは2015年の1位をピークに下がり続け、2017年以降はトップ10に入ることができないままでいること、ここ数年行われてきたトップマネジメントの変更やアルファベットの設立などの組織改革、さらにほぼ同時期に目立ってきた経営幹部によるセクハラや解雇をめぐるトラブル、姿を見せない創業者など、気がかりなマネジメント上の問題が続出しています。そろそろどこかで適切な措置をとって従業員からの評価をしっかりと高めていかないと、近い将来ビジネス上大きな試練を招くのではないかと危惧されます。 

こうした変動の大きい企業がある一方で、ベインのように安定して最上位クラスに位置付けられている企業もあります。インNアウト・バーガーやサウスウエスト航空も同様に安定して評価されている企業と判断してよさそうです。コンサルティング、外食、航空と業種は異なりますが、いずれも顧客へのサービスに定評のある企業です。顧客へのサービスの前提条件として、サービスを提供する従業員自身が会社やマネジメントを評価できると認識していることが必要と思われます。 

 

次に中堅・中小企業の上位10社の過去5年間の変遷を見てみましょう。

 

2:直近5年間の中堅・中小企業ベスト10の動向(注3 

 

2015

2016

2017

2018

 

2019

(今年の発表)

マドワイア

グリーンハウス・

ソフトウエア

シルバーライン

ヒープ

ライフ.チャーチ

グランド・

ラウンズ

イルミネート・

エデュケーション

ニューホーム

スター

ホライゾン・イノベーションズ

クロス・カントリー・コンサルティング

クラウド・ロックス

エンテロ

ネクストセンチュリー

シルバーライン

15ファイブ

インストラクチャー

セイルポイント・

テクノロジーズ

アクセラレーションパートナーズ

マーケティング360

IGNW

ウィロー・ツリー

シート・ギーク

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ

デジタル・プロスペクターズ

バンブーHR

ヴェンテラ・

リアルティ

メトロマイル

オプローンズ

ゲット・ユー・ワイアード

ハイスポット

ヘルス・

カタリスト

クラッシィ

グリント

ウィーヴ

ノウ・ビー4

プレゼンス・

ラーニング

アサナ

ライフ.チャーチ

マルーフ

セールス・ロフト

ファスト・エンタープライズ

センデロ

CBインサイト

ハイスポット

シーク・キャピタル

10

ディマンドベース

ライブ・ランプ

カーシールド

ピーボディ・プロパティーズ

ソートスポット

 

 これまでも、事業環境の変化や自社の事業モデルの変化などに対応する余裕が小さいであろう中堅・中小企業については、トップ10に連続してランクインする企業が少ない傾向がありました。 

今年は、一昨年8位にランキングされていたライフ.チャーチという宗教法人が1位となったり、昨年9位のハイスポットが6位にランクを上げたりするなど、継続的に上位に位置付けられる企業が見られるところに特徴があります。 

トップ10には及びませんでしたが、12位にラジオ・フライヤーという1917年創業の玩具メーカーが初めてランクインしました。この中堅・中小企業のランキングに入ってくる企業は、一般には、創業して間もないベンチャーや、製造業よりも非製造業(サービス業)の企業が多いように見受けられます。そうした中、創業100年を超える消費財メーカーがランクインしてきたのは驚きです。 

中堅・中小企業ですから、マネジメントが変わったり、人事や組織運営の方針が変わったりすることで、会社のありようも一変し従業員からの評価が一気に高くなることも起こりうるのでしょう。ラジオ・フライヤーについて詳細はわかりませんが、同社HPの“Culture”(注4)にあるとおりのことが相当程度に実行・実現されているとすれば、12位にランクインしたことも不思議ではありません。創業100周年を契機に、会社やマネジメントが大きく変わってきているのかもしれません。 

こうした事例は、日本の中堅・中小企業にも見習うべきところがありそうです。特に後継者がいない場合、どのような人物が事業を承継するかによって、会社は消えることもあれば、大きく脱皮して従業員満足度の高い組織に転換することもあるでしょう。 

 

(2)に続く

 

【注1

大企業については、グラスドア社の以下のサイトに結果が公表されています。

https://www.glassdoor.com/Award/Best-Places-to-Work-LST_KQ0,19.htm

 

【注2

ハブスポットのカルチャーや人事方針などに関する資料として、“HubSpot Culture CodeCreating A Lovable Company”がありますが、当HPでも以前にその概要をご紹介したことがあります。興味のある方は、以下の「書籍のご紹介」をご参照ください。

https://www.qms-imo.com/書籍のご紹介/hubspot/

 

【注3

中堅・中小企業については、グラスドア社の以下のサイトをご覧ください。

https://www.glassdoor.com/Award/Best-Small-and-Medium-Companies-to-Work-For-LST_KQ0,43.htm

 

【注4

ラジオ・フライヤー社HPの“Culture”には、同社の人事や組織運営の方針が示されています。以下のサイトをご覧ください。

https://blog.radioflyer.com/content/our-culture-0

  

作成・編集:人事戦略チーム(202013日)