アニエス・ヴァルダの訃報に接して

アニエス・ヴァルダの訃報に接して

 

昨日、フランスの映画監督のアニエス・ヴァルダ氏が90歳で死去しました(注1)。氏は50年代半ばから、映画やテレビのドラマやドキュメンタリーで数多くの作品を監督しました(注2)。

今年2月に亡くなったミシェル・ルグランとほぼ同時代を生きた人で、夫であったジャック・ドゥミ監督とともに、フランスの映画運動“ヌーベルバーグ”の左岸派を代表する人物であり、“ヌーベルバーグの祖母”と称されることもあります。

実際に鑑賞したことがある作品としては、「5時から7時までのクレオ(原題:Cleo de 5 a 7)」(ドラマ)、「歌う女、歌わない女(原題:L’une chante l’autre pas )」(ドラマ)、「アニエスv.によるジェーンb. (原題:Jane B. par Agnes V.)」(ドキュメンタリー)、「ジャック・ドゥミの少年期(原題:Jacquot de Nantes)」(ドラマ)の4本(注3)しかありませんが、いずれも深く印象に残った作品です。

なかでも「アニエスv.によるジェーンb.)」は、ジェーン・バーキンの魅力が溢れていて、このドキュメンタリー映画を見ていなければ、ジェーン・バーキンのコンサートを見に行くことはなかったでしょう。

また「ジャック・ドゥミの少年期」は、ドゥミ監督が生まれ育った港町ナントを舞台に、その子供時代を描いた作品です。港町を舞台にしたドゥミ監督の作品群(デビュー作「ローラ」(注4)、ヒット作「シェルブールの雨傘」、アメリカのスターたちもキャスティングした「ロシュフォールの恋人たち」)と合わせて見ると、ドゥミ監督とミュージカル映画との関係が納得できる気がします。

ちなみに、「ジャック・ドゥミの少年期」は確か、妻であったアニエス・ヴァルダ監督に生前語っていた子供のころのエピソードをもとに、ドゥミ監督の死後に作られた作品だったはずです。その点、ドラマではありますが、彼女にとっては亡き夫が語るドキュメンタリーであったのかもしれません。

 

【注1

たとえば、以下のように報じられています。

https://www.cinematoday.jp/news/N0107828

 

【注2

以下の映画サイト(IMDB)にあった作品リストによると、54作品を監督しています。監督した作品の多くで脚本も担当しています。

https://www.imdb.com/name/nm0889513/

 

【注3

5時から7時までのクレオ」予告編

https://www.imdb.com/title/tt0055852/videoplayer/vi4145789465?ref_=tt_ov_vi

「歌う女、歌わない女」概要紹介

https://www.imdb.com/title/tt0076855/?ref_=nm_flmg_dr_34

「アニエスv.によるジェーンb.」予告編

https://www.imdb.com/title/tt0093295/videoplayer/vi3206395929?ref_=tt_ov_vi

「ジャック・ドゥミの少年期」予告編

https://www.imdb.com/title/tt0102141/videoplayer/vi2595160345?ref_=tt_ov_vi

 

【注4

 

「ローラ」オープニングシーン

 

  作成・編集:QMS代表 井田修(2019330日)