ニール・サイモンの訃報に接して

ニール・サイモンの訃報に接して

 

昨日、劇作家・脚本家のニール・サイモン氏が肺炎による合併症のため91歳で死去しました(注1)。

コメディやミュージカル・コメディを通じて、普通の人々が都市での人間関係のなかで生きていく姿を描いてきました(注2)。20世紀後半を代表する劇作家であることは間違いないでしょう。

 

日本では、過去に二―ル・サイモン氏の戯曲をすべて上演するというプロジェクトなどもあり、人気のある劇作家でした。

個人的には、舞台よりも先に映画を通じてニール・サイモン氏の作品に触れていたので、「第2章」「泣かないで」「昔みたい」という80年代初めに公開されたラブ・コメディの諸作品が記憶に残っています。

特に「第2章」はその後、舞台で何度も観ることになった作品です。また、「昔みたい」は「ファール・プレイ」というコメディで主演だったゴールディ・ホーンとチェヴィ・チェイスが再度、共演した作品でした。いずれの作品も、ラブ・コメディとはいえ、ただ笑うだけの作品ではなく、再びの別れも描き、ほろ苦いものが残るものであった記憶があります。

その後、「スイート・チャリティ」「名探偵登場」「名探偵再登場」などを名画座などで楽しませてもらいました。

舞台については、「第2章」「ジンジャーブレッド・レディ」(映画「泣かないで」の原作戯曲)「映画に出たい」「おかしな二人」(男性版・女性版ともに)「名医先生」「はだしで散歩」などを観ました。作品によっては、いくつもの異なるステージ・配役・演出で観ているのですが、それぞれに味わい深いものに仕上がるあたりは、さすがにウェルメイド・プレイを作り出し続けた職人というべきでしょうか。

 

19世紀にアントン・チェーホフがロシアを舞台に生み出し、20世紀にはニール・サイモン氏がアメリカで作り上げた、普通の人々が生きているコメディは、21世紀にはどのようなものになるのでしょうか。氏の訃報を聞いて、改めて、いまのウェルメイド・プレイを観たくなりそうです。

 

【注1

たとえば、以下のように報じられています。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20180827-OYT1T50005.html

https://www.cnn.co.jp/showbiz/35124588.html

 

【注2

ニール・サイモン氏の戯曲は、早川書房より全6巻の戯曲集として刊行されています。

 

 

 作成・編集:QMS代表 井田修(2018827日)