創業補助金の採択事例に見る創業動向について(2)

 

(2)地域別の動向について

 

 次に、地域別の採択件数を見てみましょう(注3)。

 

表4:地域別採択件数(平成2629年度)

 

件数

構成比(%)

1県平均

北海道

81.0

3.1

81.0

東北

172.0

6.5

28.7

北関東

99.0

3.8

33.0

南関東

260.0

9.9

86.7

東京

504.0

19.2

504.0

甲信越

88.0

3.3

29.3

北陸

79.0

3.0

26.3

中部

146.0

5.6

48.7

愛知

144.0

5.5

144.0

近畿

223.0

8.5

44.6

大阪

166.0

6.3

166.0

中国

194.0

7.4

38.8

四国

99.0

3.8

24.8

九州沖縄

224.0

8.5

32.0

福岡

150.0

5.7

150.0

全国

2629.0

100.0

55.9

       

 このように、採択件数の絶対値が地域によって大きく異なるとともに、1都道府県当たりの採択件数は、最も多い東京都と最も少ない四国4県の平均値では、20倍以上の開きがあります。これは、人口の違い(注4)が13.8倍程度であることに比べても、顕著であることが指摘できます。

 

5:地域別年度別採択件数(平成2629年度)

 

 

26年度

27年度

28年度

29年度

通算

北海道

50.0

26.0

3.0

2.0

81.0

東北

106.0

42.0

14.0

10.0

172.0

北関東

54.0

30.0

8.0

7.0

99.0

南関東

154.0

86.0

10.0

10.0

260.0

東京

363.0

126.0

7.0

8.0

504.0

甲信越

55.0

19.0

8.0

6.0

88.0

北陸

47.0

22.0

8.0

2.0

79.0

中部

94.0

38.0

8.0

6.0

146.0

愛知

92.0

45.0

3.0

4.0

144.0

近畿

126.0

68.0

16.0

13.0

223.0

大阪

92.0

64.0

4.0

6.0

166.0

中国

121.0

51.0

13.0

9.0

194.0

四国

65.0

19.0

10.0

5.0

99.0

九州沖縄

130.0

61.0

18.0

15.0

224.0

福岡

82.0

58.0

4.0

6.0

150.0

全国

1631.0

755.0

134.0

109.0

2629.0

 

 年度別に採択件数の動向を地域別に見てみると、全体の採択件数の減少傾向と同様に、それぞれの地域も減少しているように見えます。

特に大都市を擁する4都府県(東京、愛知、大阪、福岡)の減少が平成28年度で極めて大きいことがわかります。これらの地域については、全体では減少傾向にあるはずの平成29年度において、前年度よりも増加する傾向が一様に見られることも、実に特徴的です。こうした特徴は、次表にも現れています。

 

6:地域別年度別採択シェア(平成2629年度/%)

 

 

26年度

27年度

28年度

29年度

平均

北海道

3.1

3.4

2.2

1.8

3.1

東北

6.5

5.6

10.4

9.2

6.5

北関東

3.3

4.0

6.0

6.4

3.8

南関東

9.4

11.4

7.5

9.2

9.9

東京

22.3

16.7

5.2

7.3

19.2

甲信越

3.4

2.5

6.0

5.5

3.3

北陸

2.9

2.9

6.0

1.8

3.0

中部

5.8

5.0

6.0

5.5

5.6

愛知

5.6

6.0

2.2

3.7

5.5

近畿

7.7

9.0

11.9

11.9

8.5

大阪

5.6

8.5

3.0

5.5

6.3

中国

7.4

6.8

9.7

8.3

7.4

四国

4.0

2.5

7.5

4.6

3.8

九州沖縄

8.0

8.1

13.4

13.8

8.5

福岡

5.0

7.7

3.0

5.5

5.7

全国

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

 

 年度別の地域ごとのシェア(全国の採択件数に占める当該地域の採択数の構成比率)は、平成28年度に、東北・北関東・甲信越・中部(愛知を除く)・近畿(大阪を除く)・中国・四国・九州沖縄(福岡を除く)が上昇するという、

はっきりとした特徴が出ています。

 

 地域別の特徴は、業種による違いにも見てとれます。

 

7:地域別業種別採択件数(平成2629年度)

         

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

小計

北海道

29.5

13.5

11.5

4.5

5.0

2.0

4.0

11.0

81.0

東北

65.0

18.5

24.0

11.0

5.5

6.0

6.0

36.0

172.0

北関東

27.0

17.5

29.0

3.0

6.0

5.5

3.0

8.0

99.0

南関東

61.5

38.5

45.0

19.5

14.0

19.5

8.5

53.5

260.0

東京

82.5

54.0

111.0

69.5

24.5

29.0

22.0

111.5

504.0

甲信越

30.0

13.5

12.5

3.0

7.0

1.0

5.0

16.0

88.0

北陸

23.0

11.5

16.0

3.5

2.0

4.0

4.0

15.0

79.0

中部

39.5

26.5

32.5

5.5

8.5

6.5

10.0

17.0

146.0

愛知

40.5

19.5

29.0

6.0

6.0

3.5

10.5

29.0

144.0

近畿

70.5

26.0

37.5

13.5

20.0

10.5

10.0

35.0

223.0

大阪

30.5

23.0

38.5

16.0

9.5

7.5

16.0

25.0

166.0

中国

73.0

21.5

26.5

5.0

7.5

2.5

18.5

39.5

194.0

四国

31.5

17.5

17.0

1.5

7.5

3.0

10.0

11.0

99.0

九州沖縄

72.5

28.5

30.5

9.0

19.0

9.5

24.5

30.5

224.0

福岡

34.5

17.5

35.5

6.0

6.0

1.5

19.0

30.0

150.0

全国

711.0

347.0

496.0

176.5

148.0

111.5

171.0

468.0

2629.0

 

8:地域別業種別採択シェア(平成2629年度/%)

       

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

全体

北海道

36.4

16.7

14.2

5.6

6.2

2.5

4.9

13.6

100.0

東北

37.8

10.8

14.0

6.4

3.2

3.5

3.5

20.9

100.0

北関東

27.3

17.7

29.3

3.0

6.1

5.6

3.0

8.1

100.0

南関東

23.7

14.8

17.3

7.5

5.4

7.5

3.3

20.6

100.0

東京

16.4

10.7

22.0

13.8

4.9

5.8

4.4

22.1

100.0

甲信越

34.1

15.3

14.2

3.4

8.0

1.1

5.7

18.2

100.0

北陸

29.1

14.6

20.3

4.4

2.5

5.1

5.1

19.0

100.0

中部

27.1

18.2

22.3

3.8

5.8

4.5

6.8

11.6

100.0

愛知

28.1

13.5

20.1

4.2

4.2

2.4

7.3

20.1

100.0

近畿

31.6

11.7

16.8

6.1

9.0

4.7

4.5

15.7

100.0

大阪

18.4

13.9

23.2

9.6

5.7

4.5

9.6

15.1

100.0

中国

37.6

11.1

13.7

2.6

3.9

1.3

9.5

20.4

100.0

四国

31.8

17.7

17.2

1.5

7.6

3.0

10.1

11.1

100.0

九州沖縄

32.4

12.7

13.6

4.0

8.5

4.2

10.9

13.6

100.0

福岡

23.0

11.7

23.7

4.0

4.0

1.0

12.7

20.0

100.0

全国平均

27.0

13.2

18.9

6.7

5.6

4.2

6.5

17.8

100.0

 

 表8赤字の部分は、全国平均よりも明らかに高い(注5)ところを示しています。

 この結果から、「食」に関する比率が高い東北と中国、製販が高い北関東、ITが高い東京と大阪、T&Rが高い甲信越・近畿(大阪を除く)・九州沖縄(福岡を除く)、教育が高い南関東、美容が高い四国・九州沖縄・福岡、という傾向があります。特に美容は、大阪と中国も高めの傾向があり、西日本では全般的に高い傾向があると言えそうです。ケアについては、目立った地域上の特徴はないように思われます。

 こうした地域別の業種別の傾向は、それぞれの地域で起業する件数自体が多い業種が採択数も多い傾向にあるのか、起業件数自体には特に目立った差はなくても、採択率に何か大きな特徴があるのか、詳細は不明です。

 

【注3

地域区分は以下のとおりです。

東北:青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島の6

北関東:茨城、栃木、群馬の3

南関東:埼玉、千葉、神奈川の3

甲信越:山梨、長野、新潟の3

北陸:富山、石川、福井の3

中部:静岡、岐阜、三重の3

近畿:滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の14

中国:鳥取、島根、岡山、広島、山口の5

四国:徳島、香川、愛媛、高知の4

九州沖縄:長崎、佐賀、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の7

北海道、東京都、大阪府、愛知県、福岡県は単独で表示しています。

 

【注4

平成24年度の人口推計結果(総務省統計局)に基づき、東京都および四国4県の人口の平均値から算出しました。もとのデータは以下のサイトを参照してください。

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/pdf/gaiyou3.pdf

 

【注5

「食」については全国平均よりも10%以上、それ以外の業種については全国平均値の1.5倍以上を、それぞれ「明らかに高い」ものとしてピックアップしています。

 

(3)に続く

         作成・編集:QMS代表 井田修(2017822日)更新