新春CFO座談会(3)~CEOとともに成長できるか~

 

新春CFO座談会(3)~CEOとともに成長できるか~

 

この座談会では、一部、守秘義務を要する事項に言及しているものもあるため、個人名などを特定されないよう、お話しいただいた方はすべて匿名とさせていただきます。それぞれの方々が所属される企業について語っていらっしゃる内容も、企業名を特定されないように、一部、変更して掲載しています。

 

ご参加いただいた方々のプロフィールは以下の通りです。

Aさん(男性30歳代):金融関係の会社勤務からベンチャーへ転職。その後、あるスタートアップに創業メンバーとして参画したのち、現在の金融系ベンチャーにCFOとしてヘッドハントされる。

Bさん(女性30歳代):シンクタンク勤務ののち、ITサービスのベンチャーに転身。いくつかのスタートアップを経て、最初に転職したITベンチャーにCFOとして戻る。

Cさん(男性30歳代):友人たちと学生時代にIT関連のベンチャーを立ち上げ。管理や営業など、技術系が多い友人たちをカバーするうちに自らCFOに。

Dさん(男性40歳代):税理士法人を経て、経理事務担当として中小企業で働くうちに、管理部門全般の実務を経験。現在、成長著しい飲食サービス会社で管理部門の責任者に。

Eさん(男性50歳代):商社出身。関連会社や合弁会社の経営に携わった経験をもつベテランのCFO。子会社のITサービス会社のIPOに際して財務経理の責任者として陣頭指揮を執る。その後、別のベンチャーにCFOとして転じ、現在、上場を目指している。

 

― ところで、最初の起業資金は、どのように集められたのでしょうか。

 

Aさん いまの会社については、起業時にいたわけではないので詳しくはわかりません。聞くところによると、創業者であるCEOが業務委託として働いていた時に開発したプログラムを、委託先のIT系の会社に売却して得た資金があったそうです。

 

Bさん うちは、創業メンバーがスタートアップ向けのイベントで入賞したりして、関係者から注目を集めたことがきっかけとなって、スポンサーとなっていただける会社と出逢うことができました。今となっては、それが良かったのか、悪かったのか…

 

Cさん もともと普通の学生でしたから、元手はなかったですね。いろいろと手分けしてバイトをしながら、貯めたお金をもち寄りました。けっこう、バイト先で気に入られて、管理職みたいな仕事までやっていた者もいて、その退職金が一番まとまった金額だったかもしれません。

 

― Eさんが最初にCFOを経験されたところは、親会社がオーナーだったわけですね。

 

Eさん そうです。実質的には100%子会社同様でしたが、出資比率という点では、親会社がマジョリティをもって、グループ各社が少しずつ出資する形をとっていました。

多分、こう申し上げると他の皆さんからは資金で困ることはないように思われるかもしれませんが、その分、事業の枠とか取引先の制限とか、人事や業務管理などへの関与、とにかく口出しする人が多いんですよ。特にIPOをするとなってからは、社外との調整の10倍はグループ企業内の調整に労力を取られました。

 

Dさん 私は創業当初のことはよく知らないのですが、CEOが個人で経営していたお店が行列店みたいになり、それで儲けたお金を元手に大きくしてきたとは聞いています。とはいえ、今も金融機関からの借り入れが資金の大半ですから、資金と事業がうまく回っているだけ、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 

Aさん ひとつ前にいたスタートアップでは、社債を発行して1千万円程度の資金を調達したことはあります。VCに引き受けてもらいました。正確に言えば、VCが組成した投資事業組合と、そこに出資をしていたIT系の上場会社の子会社に、半分ずつお願いしました。

 

― CFOという仕事柄、資金調達でのご苦労は多いと思いますが、そのほかに大変なことというと何かありますか。

 

Bさん それは、もう昨年やったリストラです。私が今、CFOとしてやっている会社は、さきほど申し上げたように実質的に創業当初から外部資本が入っていました。始めはそれで良かったのですが…

 

― Bさんは一度、社外に出られて昨年戻られたそうですが。

 

Bさん ええ、4年ぶりに戻りました。いっしょに創業したCEOから、手助けして欲しいと頼まれまして、ちょうど、関わっていた別のスタートアップが一段落したところだったこともあって、戻りました。

 戻って最初の仕事がリストラです。スポンサーからは早期に事業を立ち上げるように、けっこう迫られていたらしく、社員や協業先を無理に拡大していたようです。

その後始末ということで、新たにスポンサーを探して、減増資を行いました。実は、資金は減増資でほぼ使い切ってしまいまして、社員に辞めてもらうのは、前回お話しした補助金が入金されたものを転用しました。人員整理といっても、役員を除くと10名にもなりませんが、前任のCFOが対象者ときっちりと面談を行って、残った社員は私のほうで対応しました。

 

― そういう経験をされると、CEOとの関係とか大きく変化しませんか。

 

Bさん どうなんでしょう、昔からの知り合いですし、私がいなかった4年間にも、CEOや他の経営陣とも時々情報交換をしていましたから、実情も何となく知っていました。大丈夫かと少しは心配していましたが、もう一度、力を貸してほしいと役員全員から頭を下げられれば、断るのもどうかと。まあ、仕方がないです。

 

Eさん 多分、BさんやCさんのように仕事をする前からの知り合いというのと、私のように、サラリーマン的といいますか、ベンチャーの経営者であっても、こちらは「雇われ」という立場にある場合では、創業者CEOCFOの関係は違うでしょう。

 

Dさん そうですね。私も「雇われ」であることに違いはありませんから、いうべきことややるべきことは、いつも意識して仕事をしているつもりです。ただ、引くべきところといいますか、創業者の決めたことに、基本的に異は唱えません。

 

Aさん それはわかります。入社する前までと、入社した後に実際に仕事をするのとでは、言葉遣いから違いますから。ヘッドハンティングというと聞こえはいいですが、「雇われ」であることには変わりはありませんから。

 

Cさん 当初は同じように学生気分でスタートしても、数年も経たないうちに、それぞれの役割に応じた格みたいなものは出てきますね。やはり、CEOとなった人はリーダーというか経営者というか、顔つきも言うことも事業を引っ張ってく責任が表に出てくるようになりますね。

 弊社のCEOはもともとエンジニアだったので、技術やマーケティングに注力しても経理や人事などはあまり関わってこなかったのですが、創業後34年くらいでしょうか、人事でいえば採用や評価、経理では金融機関との交渉、移転先のオフィスの内装などに積極的に関わるようになりましたね。

 

Bさん そうでないと困ります。他社さんを見ても、創業者が経営者に変わっていくところは、スタートアップからベンチャー企業に成長するように思います。創業者に成長がないと、事業もなかなか成長しない気がします。

 

Dさん ふと思い出したのですが、同業者がCFOといいますか、経理の責任者を探してことがありました。3ヶ月くらい経って、その後どうなったのか尋ねたところ、CEOや他の役員も高く買っていたはずの人が入社直前になって会社のほうから断ったそうです。

その理由というのが、入社前日に管理系のスタッフと顔合わせも兼ねて行ったカラオケで、どうもセクハラみたいなことをしたようです。後から顔を出したCEOにその場で直訴、警察沙汰の一歩手前だったそうです。

 

Cさん そういうことは事前に面接とかリファレンスチェックとかで、わからないものですか。

 

Dさん わかるくらいだったら、採用オファーを出すわけはないですよ。その会社のCEOがその人をけっこう気に入って、処遇面も良い条件を提示していたらしく、本人もそれで舞い上がってしまったのかもしれません。

 

― それはまた、困ったことですね。

 

Eさん 困ったでは済まないですよ。ヘッドハンターでも使っていたら、クレームものというか、着手金まで全額返せと言いたいくらいですよ。

 

Dさん いまお話ししたケースも、人材紹介会社から違約金は取ったみたいです。その代わり、口外しない約束なのでしょうけれど、CEOどうし、CFOどうしの間では、噂話として広まってしまうのは避けられません。狭い世界ですから。

 

― そういう失敗も含めて、創業者の成長を後押しするのもCFOの役割かもしれませんね。

 

(4)に続く

  

文章作成・編集:QMS+行政書士井田道子事務所(2017112日更新)