AIが仕事を奪う?(5)

 

AIが仕事を奪う?(5

 

(4)より続く

 

実際に従事している人が多い職種というと、営業・販売・接客・サービス・一般事務などでしょうか。こうした、いわば普通の仕事についてAIの影響はどのようなものが出てくるのでしょうか。

 

今年はPepperが広く営業や販売の現場で実用化されてきた1年でもありました(注17)。Pepperはサービスの現場にも登場しているように、サービス業の現場の仕事についても、ロボティックスが実用化される例が昨年頃から次々と現れてきています。なかでも「変なホテル」(注18)は、サービス業におけるロボット活用の代表例から、次の事業展開に向けて進みつつあります。ドローンを活用した配送サービスなども、こうしたトレンドのひとつでしょう。

事務部門についても、NECが自社の事務作業にロボティックスを導入する(注19)など、ロボッティクス・プロセス・オートメーションが進展しています。ICT関連の企業だけでなく、大手監査法人系のコンサルティング会社などが導入支援に積極的な動きを見せた1年でもありました。

 

そもそも、実店舗で売る商品の割合が減少するとすれば、店舗もそこで働く人も減るのが必然です。これは、AIやロボットが人間から仕事を奪うというよりも、消費者の購買行動の変化(を促すICTサービスの発展)の影響です。

接客の仕事のうち、かなりの部分は自動化されてきました。たとえば、飲食店で注文をとったり、料理を運んだりするのは、既に回転寿司店などでは自動化されています。これらも、AIやロボットの導入というよりも、「食べたいネタを手ごろな価格で気軽にすぐに食べたい」という顧客のニーズを満足させるための方法論として、新しい業務システムを開発・導入してきた結果に過ぎません。

 

 つまるところ、何らかのパターンに当てはめて対応する仕事は、AIやロボットなどを活用したものに取って代わられる方向にあることは間違いないでしょう。特に、規模が大きい(処理件数が多い)ものほど、AIやロボットに任せないとビジネスが成立しません。

もちろん、AIやロボットを導入するのに必要な投資と運用コストについて人間が行う場合の賃金等の労働コストとの比較という観点から、経済合理性は必ず問われます。したがって、人間が対応した方が手早く、規模的にも小さいものであれば、人間が対応することになります。

人間がこれまでと同様のやり方で営業・販売やサービスや一般事務を仕事としてやっていくには、AIやロボットを導入するほどの量がないとか、仕事をする場面が時間的・空間的に限られていてAIやロボットを導入する手間をかけられないなど、ある種の限定された状況の下でしか、今後はあり得ないのかもしれません。

そうであるならば、人間はAIやロボットを導入する作業を仕事にすることになります。つまり、営業のやり方、販売手法、サービスの提供方法、事務処理のやり方などを、より新しいものに挑戦して試行錯誤しながら開発していくことが仕事となるでしょう。

 

一方、意思決定者となるキーパーソンや経営責任者などと関係を構築し、その意思決定に影響を与えていく仕事というのもありえます。ただし、それが単なる情報提供であったり、課題解決手法の提供であったりするのであれば、AIやロボットで十分でしょう。既に個人向け資産運用などでは、ロボバイザーが実用化されています。こうしたものが、分野毎に次々と現れて来ることは間違いありません。

こういう場合、意思決定者となるキーパーソンや経営責任者などを満足させない限り、仕事をしたことにはなりません。そのためには、顧客となる人々自身が自覚している問題だけでなく、その背後にあって隠れていたり、まだ見えていなかったりする課題に対して、それを顕在化させて課題として提示し、その解決策をともに考え出すといったプロセスを通じて、真の課題を解決することが求められるのではないでしょうか。そうしたことができて初めて、顧客となる人々は満足感や納得感が得られるでしょう。

営業やサービスや事務といった仕事においても同様で、その仕事の顧客が満足感や納得感を得るにはどうすればよいか、そのことを考えることは人間でないとできないことではないでしょうか。そもそも顧客が誰なのか、一見明白であるように思える営業や販売と、よくわからないように思える事務的な仕事ですが、どちらも顧客を定義するところから仕事を見直すと、AIやロボットにはまだまだできない仕事を改めて見つけ出すことが可能でしょう。

 

以上をとりまとめてみると、営業・販売・接客・サービス・一般事務などは、大きく次のような3種類の仕事が今後も人間が対応すべきものとして考えられるのではないでしょうか。

第一は、AIやロボットを導入するほどの量がないとか、仕事をする場面が時間的・空間的に限られていてAIやロボットを導入する手間をかけられないなど、今と変わらないやり方を続けるほうが経済合理性から見て明らかに望ましい場合です。ただ、これは、安定した職場というわけにはいかず、毎日行く先が変わるとか労働時間が日々変動するといった不安定さを、仕事とする人自身が覚悟するしかありません。

第二に、営業のやり方、販売手法、サービスの提供方法、事務処理のやり方などを、より新しいものに挑戦して試行錯誤しながら開発していく仕事です。この仕事の結果として生み出された手法や方法論などは、AIやロボットなどを活用して実現することが多いでしょう。

そして、第三は、顧客を定義するところから仕事を見直し、顧客とともに課題を設定するところから着手し、ともに解決策を探し出すような仕事です。この場合、実際に課題を設定する作業を行ったり、解決策を実行して業績を挙げるなどの結果を出したりするのは、AIやロボットに任せるということが当然あるでしょう。

 

【注17

Pepperの導入事例、特に販売やサービスの場面における導入については、以下のITビジネス・オンラインの記事をご覧ください。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161227-00000005-zdn_mkt-bus_all

 

【注18

「変なホテル」について詳しくは、以下の公式HPをご覧ください。

http://www.h-n-h.jp/

 

【注19

たとえば、NECで事務作業にロボティックスを導入するケースは、以下の日刊工業新聞電子版の記事をご覧ください。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161220-00010001-nkogyo-ind

 

 

作成・編集:経営支援チーム(20161231日)