起業する場所を選ぶには(2)
前回は「事業の特性」から起業する場所を選ぶ上でのポイントを述べました。今回は「顧客との関連性」について考えてみます。
「顧客との関連性」というのは、顧客がいるところ、顧客にできるだけ近いところに拠点を置くことで、事業を発展させるのに効果的なものをいいます。顧客の開拓を図るとともに、顧客のニーズにより合った製品やサービスを生み出していくのに、実際の顧客からフィードバックを得たり顧客の間での評判がより多くの顧客を獲得したりするのに効果的なビジネスであれば、顧客に関連性のある場所にオフィスを構えることが望まれます。
法人向けに事業を展開するのであれば、開発する製品やサービスを利用する事業所が近くにあるのに越したことはないでしょう。
なかでも、ある特定の業界を顧客とするのであれば、その業界の企業が集まっているところがあれば、そこに拠点を置くのは必然でしょう。伝統的には、証券業は兜町や北浜など証券取引所を中心とした地域、倉庫などを含む物流関連の業界は湾岸部・空港周辺・主要道路沿いなどに集中する傾向があります。IT関連の会社なども都市部の特定の地域に集中する傾向があります。アメリカにはシリコンバレーやハリウッドといった世界的な集積地もあります。
こうした業界を顧客とするビジネスを始めるのであれば、その業界の集積地に拠点を設けるべきでしょう。
一方、本来は特定の業界だけをターゲットとするものでなくても、まずはある業界が集中する地域に拠点をおくことで、その業界において早期に実績を挙げることができることできれば、ビジネスがうまく回り始めるきっかけとなるかもしれません。特定の業界における実績が、より幅広い顧客(業界)にアピールすることを可能とするでしょう。
こうしたことは、個人向けのビジネスについてもあてはまります。飲食や物販の店舗やサービス提供の拠点など、顧客が直接訪れることを前提とするビジネスでは、想定する顧客層が訪れやすい地理的条件(交通の便、通勤や通学などの途中の立地、駐車場・駐輪場などの付帯設備の状況など)を満たしている場所に、一号店兼創業拠点(オフィスなど)を設けるべきでしょう。
また、旅行者や通勤客、病院に通院する人や子供を預ける人など特定の状況における個人であったり、学生や在宅勤務者など職業や就業形態などで絞った個人などを顧客とするのであれば、そうした人々が集まったり、利用するものがある場所に拠点を設けるべきでしょう。
たとえば、交通機関の拠点や病院や薬局などの関連施設の周辺など、想定する顧客を直接観察することができたり、テストマーケティングを実行しようと思えばすぐに実行できたりするような場所が望ましいでしょう。
特定の趣味や嗜好をもった個人を顧客として想定する場合も同様です。あるスポーツを楽しむ人を顧客としようとするのであれば、起業の拠点として検討すべきは、実際にそのスポーツをする場所であったり、そのスポーツに必要な道具や機材などを販売したり、そのスポーツを習得したりする場所(店舗や練習場など)であったりするでしょう。
もちろん、ネット関連のビジネスのように、顧客といっても地理的な条件に関係ないことが、顧客を集めるうえでメリットとなるものもあります。こうした事業の場合、確かに顧客との関係から起業の場所を考える必要はないかもしれませんが、次に述べる「調達すべき経営資源へのアクセス」という点で、地理的な条件を重視すべき場合もあります。
作成・編集:経営支援チーム(2016年10月8日更新)