従業員番号が一桁ということ(前)
どんな会社でも、新たに採用する従業員の質が重要なのは当然です。特にスタートアップの企業や中小企業となると、従業員一人ひとりの及ぼす影響力が大きいので、新たに採用する従業員をさまざまな角度からチェックして、慎重に採否を決定しようとするでしょう。
とは言うものの、現実には、目先の忙しさから、質的なことには目を瞑って、応募してきた人をそのまま採用したり、友人や知人など創業メンバーの個人的なつながりで、一時的な手伝いとして来てもらった人がそのまま従業員となってしまったり、というようなことが多いのではないでしょうか。
そもそも、ベンチャーや中小企業では、組織や職務分掌が明確に定義されて、担当する職務内容がしっかりと確立されていることは、まず見られないでしょう。言い換えれば、採用するときに、採用後に担当してほしい職務内容、それに見合うスキルや職務経験など、求める人材の要件(スペック)がはっきりしていないのが、通例かもしれません。
多くの場合、採用時に問われることといえば、人材の要件(スペック)というよりも、目先の仕事をこなせるどうか、一緒に働くのに向いているキャラクター(他のメンバーと折り合いがつきそう)かどうか、といったことではないでしょうか。もっと極端な表現をすれば、経営者にとって使える(使いやすそう)かどうか、が採用基準でしょう。
実際のところ、特にスタートアップで最初期に採用されて入社する人(ここでは従業員番号一桁の社員と呼びます)は、その後の会社の成長に、本人の意図や意識と関係なく、大きな影響力を発揮します。
たとえば、雇用形態がどうであっても、創業直後から働いている従業員番号一桁の社員と、IPOの後など会社が一定の規模や形を整えた後に入社してくる従業員では、仮に後から入社した人が役員や管理職であっても、すでにいる従業員番号一桁の社員を無視して仕事をするわけにはいきません。まして、創業直後からその会社に居続けるということは、創業者がその存在を認めていることは確実です。
特に経営者自身が営業や開発などで社内にいることが少ないケースでは、従業員番号一桁の社員のなかで、創業当初から事務的な仕事を任されている従業員が存在することがよくあります。その人の影響力は会社のカルチャーを体現することもありえます。本人にその気がなくても、そうした従業員のちょっとした言葉使いや行動が、その会社のカルチャーを醸成してしまいがちです。
経営者、特に創業経営者としては、こうした影響力が自ら望むものであれば、そのまま放っておいてかまいませんが、そうでないならば、早急に対策を取らなければなりません。それだけ、従業員番号一桁の社員の存在は、会社のありかたを左右しかねないものです。
作成・編集:経営支援チーム(2015年10月28日更新)