目標は立ててはみたけれど……(後)

目標は立ててみたけれど……(後)

 

(前半より続く)

 

いろいろと事情を伺ってみたところ、他の目標は個々のプロジェクトや部下の人材育成など、Aさんが管理職に登用される前から、実質的に任されてきた仕事に関するものばかりだったようです。ところが、「新サービスの企画」というように、何か新しいものを考えて企画・提案することは、ほとんど経験がなかったようです。

 

「もしかすると、何から始めたらいいのか、わからなかったのでは?」

「それなら、ちょっと聞いて欲しかったよ。」

「日常の仕事はそれなりに忙しいでしょうから、すぐに着手しないと、敬遠してそのまま、というのはありがちですよ。」

「でもねえ、この目標だって、A君から挑戦したいって、書いてきたんだよ。」

「仕事ができる人なら、会社の方針や上の人の顔色を読んで、先回りくらいできます。きっと、Aさんも管理職らしい目標を設定してはみたものの、何から手をつけていいかわからないまま、あっという間に1か月近く経ってしまったんじゃあ、ないでしょうか。」

 

目標管理というと、面談の進め方や期中でのフォローアップなど目標の設定・管理のプロセスが適切に行われているかどうか、個々の目標の内容や要件などが担当する人のキャリアや能力に合っているかどうか、また事業の方向や戦略などに合致しているかどうか、などといったことに目が行きがちです。

現実には、目標を設定すると同時に着手できるかどうか、ということを見落としがちではないでしょうか。

 

たとえば、100件の新規開拓が目標の営業担当でも、1件目のアポが取れていて、今日これから訪問することになっていれば、ノルマとして押し付けられても達成できる可能性はあります。しかし、自己申告で10件の新規開拓を目標にしても、どうやったらアポが取れそうなのか、そもそも潜在的な顧客がどこにいるのか、皆目分からない状況で放っておかれては、徒に時間が過ぎていくことでしょう。

本人のやる気やモチベーションがいかにあっても、日々の業務活動のどこかを変えていかなければ、その目標を達成することに繋がりません。そこで、進捗状況をモニタリングする方法やマイルストン(途中のチェックポイント)をきちんと定めることが重要なのは、改めて指摘するまでもないでしょう。

Aさんの場合も、上司の執行役員の方がちょっと訊いたことが幸いしたと言えそうです。ただ、すべての上司が何気なくフォローできるわけではありません。また、本来であれば、目標を設定したときから、具体的な行動に移るべきであると言われれば、その通りです。

実際には、目標設定のミーティングの最後に、自分のデスクに戻ったら、まず、何(具体的な行動)に着手するのか、本人に確認したほうがいいでしょう。もし、具体的な行動のアイデアが出てこないのであれば、ヒントや指示を与えて、すぐに着手できるようにしておくことが必要でしょう。

 

目標をノルマとしてトップダウンで押し付けようが、自己管理のツールとして目標を設定しようが、どのようなタイプの目標管理であっても、今日の仕事のなかでにすぐに手をつけることがなければ、結局、忘れ去られてしまうか、思い出した時には既に遅く、着手すらしていないまま、ということに陥りがちです。

結果につなげるために目標を立てると考えれば、目標を設定した瞬間から具体的な行動に移すことが求められるはずです。もし、そうした行動が翌日になっても見えないとしたら、最初の一歩を個別に具体的に指示するのもマネジメントの果たすべき役割ではないでしょうか。

 

作成・編集:人事戦略チーム(201553日更新)