事業の成長と人材採用(後)

事業の成長と人材採用(後)

 

(前半より続く)

 

1世代の社員は、一定の期間の内に、大半が退職することになりがちです。もともと、別の仕事にチャレンジしたいとか、自分でも起業してみたいなど、それぞれに個人的な事情があります。

そこで、ある程度の規模になってくると、第1世代と入れ替わるように、公募や人材紹介で入社してくる社員がでてきます。これを第2世代としましょう。

 

この時期になると、新しい会社の方向性やビジョンが固まりつつあり、求める人材の要件も経営者の頭の中には確立されていることが多いのですが、それらが公式化・制度化されておらず、事業の成長に人材採用が追いつけないことが常態化してしまいがちです。人材を募集するに際して会社が提示する、給与や勤務形態などの労働条件すら、かなりバラバラで交渉次第という面があります。

一方、採用される社員も、その時々の緊急性や必要性などにより、能力レベルおよび資質や適性なども統一感がなく、幅広くなりがちです。後々振り返ってみると、なぜこんな条件で採用したのか?どうしてこんな人が入社できたのか?といった疑問が、いい意味でも悪い意味でも湧き上がってくることが珍しくありません。

 

事業がそれなりに軌道に乗っている第3世代ともなると、企業の仕組みや組織体制が多少なりとも整備されてきており、一般的な公募が採用の中心になります。経営幹部や幹部候補の社員は、ヘッドハンティングや人材紹介などを通じて採用することもあります。

この段階になると、事業の成長とともに会社のルールも確立してくるので、あまりに極端に例外的な存在はほとんどなくなっていきます。むしろ、先に入社していた社員と第3世代の社員との処遇格差が問題となることが、たびたび見られます。

 

3世代から見ると、第1世代や第2世代の社員は企業の成長とともに成長していればましのほうで、大半はいまでは次の成長の足をひっぱっているに過ぎない、と批判的になりがちです。

実際、仕事をしている現場では、明らかに第3世代のほうができる人が多いのです。これは当然の結果で、もし、事業や組織の成長を第2世代までの社員でリードしていけるのであれば、第3世代を経営幹部や幹部候補として新たに雇用する必要はないはずです。経営者もそのあたりは実感しているからこそ、外部から新たな人材を入れようとするのです。

一方、もともといた社員から見れば、第3世代はリスクを取っていないということになります。自分たちは、何の知名度もなく、この先どうなるか分からない会社に入ってここまで頑張ってきた功労者であるという意識が、どこかにあるのもまた事実でしょう。

 

経営者としては、特に起業家から経営者に変わるCEOとしては、この時期のできるだけ早いところで、人材の入れ替えを決断し実施に移すことが不可避です。その決断・実行が遅れれば遅れるほど、創業期にいかに素晴らしい会社であっても、そしてそれがIPOを行うなどして成功を手に入れたように見えても、すぐに凡庸な会社になってしまい、次の成長が実現できなかった例は、枚挙に暇がありません。

そうならないためには、たとえば、第1世代や第2世代の社員には、ストックオプションなどを付与して報いることで、次のキャリアに踏み出す元手を得てもらうとか、業績が良い時にこそ早期退職優遇制度を導入して、人材の入れ替えに本気で取り組むことを第3世代の社員にも周知するといった仕掛けが必要と思われます。

 

作成・編集:経営支援チーム(2015425日更新)