新着コラムをご紹介いたします。

過去のコラムについてはこちらへどうぞ。

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(1)

 

はじめに

 

経済産業省中小企業庁が行っている「創業補助金」制度は、毎年、日本全国から多種多様な創業プランを募り、その中から、その年度の政策目的や予算規模などに応じて、補助金を支給する対象を選ぶものです。

支給要件や募集時期などは、毎年、変わっているところがありますが、基本的には、新たな需要や雇用を生み出し、経済の活性化を目指すものです(注1)。

 

「創業補助金」は、その採択結果が採択一覧の形で公表されています。そこには、応募者の氏名、地域(都道府県および市区町村)、事業テーマが記載されており、現実にどのような起業(創業)テーマがあるのか、見ることができます。今回は、その一覧表をもとに、近年の創業動向を振り返ってみたいと思います。

 

【注1

「創業補助金」についての詳細は、以下のウェブサイトを参照してください。

http://sogyo-shokei.jp/sogyo/

 

(1)全体の動向について

 

 まず、直近4年の採択件数を見てみましょう。

 

1:平成2629年度の年度別採択件数

   

 

26年度

27年度

28年度

29年度

4年度合計

採択件数

1631.0

755.0

134.0

109.0

2629.0

構成比(%

62.0

28.7

5.1

4.1

100.0

 

 4年間で、合計2600件を超える創業プランに補助が行われています。ただし、その多くは、平成26年度・27年度のものが占めています。

 

それでは、そもそも応募の状況はどうかといえば、表2に示すとおりです。

 

2:平成2629年度の年度別採択動向

   

 

26年度

27年度

28年度

29年度

4年度合計

応募件数

2984

1170

2866

739

7759

採択件数

1631

755

134

109

2629

採択率(%

54.7

64.5

4.7

14.7

33.9

 

 隔年で応募が3000件に近い時と1000件程度のときがあるように思われます。この結果を見ると、急激に採択が絞り込まれている印象を受けます。これは、政策目的の変化や予算規模の問題があることを窺わせます。

 

 次に、採択された事業テーマを業種別に見てみましょう。

 

3:平成2629年度の業種別補助件数

         

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

合計

補助件数

711.0

347.0

496.0

176.5

148.0

111.5

171.0

468.0

2629.0

構成比(%

27.0

13.2

18.9

6.7

5.6

4.2

6.5

17.8

100.0

 

 今回データをとりまとめるに当たって、公表されている事業テーマを8種類に分けてみました(注2)。

 その結果、「食」に関連するものが4分の1を超えて最も多くを占め、次いで製販に関するもの、ケアに関するものが10%以上となっています。これらの3業種で、全体の約6割を占めます。

 起業というと一般に注目度が高いように感じられるITT&Rについては、「創業補助金」ではそれほど多くを占めているわけではない、と指摘できます。

 

【注2

業種分類については、以下の通り、個々の事業テーマを勘案して取り扱いました。

「食」:

食に関連するもの。食材や食品の製造・販売、飲食業、食品や飲食に関するコンサルティングといったもの。

ケア:

医療や介護に関するもの。人間や動物を対象とする病院や診療所、医療関連サービス、介護や障害者支援に関するものなど。

製販:

ものつくりおよびその販売に関するもの。新しい製品の開発・製造・販売およびそれらを支援する各種のサービスなど。輸出入も含めている。

IT

情報技術に関するもの。システム、プログラム、アプリ、ICTサービスなどを開発・販売・導入するもの。

T&R

旅行関連および不動産関連のもの。このふたつは、近年のインバウンド需要の盛り上がりを受けて、多く創業されているのではないかと仮説を設定したため、ひとつの業種区分として設けてみた。

教育:

学校や塾や資格取得サポートなどはもとより、広く何かを教えるもの。ただし、企業の人材育成をテーマとするものは除く。

美容:

美容室、美容目的のサロンや教室など。理容は除く。

その他:

上記の7種類に該当しないもの。

 

 今回の業種分類に当たっては、公表されている事業テーマが該当する業種があれば、その業種で1.0としてカウントしていますが、二つの業種に関わるものについては、0.5を計上しています。たとえば、「健康を足元から支えるため接骨院とオーダーメードインソールの作成販売の複合事業」というテーマは、ケアと製販の両方の業種でそれぞれ0.5としてカウントしています。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017817日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(2)

 

(2)地域別の動向について

 

 次に、地域別の採択件数を見てみましょう(注3)。

 

表4:地域別採択件数(平成2629年度)

 

件数

構成比(%)

1県平均

北海道

81.0

3.1

81.0

東北

172.0

6.5

28.7

北関東

99.0

3.8

33.0

南関東

260.0

9.9

86.7

東京

504.0

19.2

504.0

甲信越

88.0

3.3

29.3

北陸

79.0

3.0

26.3

中部

146.0

5.6

48.7

愛知

144.0

5.5

144.0

近畿

223.0

8.5

44.6

大阪

166.0

6.3

166.0

中国

194.0

7.4

38.8

四国

99.0

3.8

24.8

九州沖縄

224.0

8.5

32.0

福岡

150.0

5.7

150.0

全国

2629.0

100.0

55.9

       

 このように、採択件数の絶対値が地域によって大きく異なるとともに、1都道府県当たりの採択件数は、最も多い東京都と最も少ない四国4県の平均値では、20倍以上の開きがあります。これは、人口の違い(注4)が13.8倍程度であることに比べても、顕著であることが指摘できます。

 

5:地域別年度別採択件数(平成2629年度)

 

 

26年度

27年度

28年度

29年度

通算

北海道

50.0

26.0

3.0

2.0

81.0

東北

106.0

42.0

14.0

10.0

172.0

北関東

54.0

30.0

8.0

7.0

99.0

南関東

154.0

86.0

10.0

10.0

260.0

東京

363.0

126.0

7.0

8.0

504.0

甲信越

55.0

19.0

8.0

6.0

88.0

北陸

47.0

22.0

8.0

2.0

79.0

中部

94.0

38.0

8.0

6.0

146.0

愛知

92.0

45.0

3.0

4.0

144.0

近畿

126.0

68.0

16.0

13.0

223.0

大阪

92.0

64.0

4.0

6.0

166.0

中国

121.0

51.0

13.0

9.0

194.0

四国

65.0

19.0

10.0

5.0

99.0

九州沖縄

130.0

61.0

18.0

15.0

224.0

福岡

82.0

58.0

4.0

6.0

150.0

全国

1631.0

755.0

134.0

109.0

2629.0

 

 年度別に採択件数の動向を地域別に見てみると、全体の採択件数の減少傾向と同様に、それぞれの地域も減少しているように見えます。

特に大都市を擁する4都府県(東京、愛知、大阪、福岡)の減少が平成28年度で極めて大きいことがわかります。これらの地域については、全体では減少傾向にあるはずの平成29年度において、前年度よりも増加する傾向が一様に見られることも、実に特徴的です。こうした特徴は、次表にも現れています。

 

6:地域別年度別採択シェア(平成2629年度/%)

 

 

26年度

27年度

28年度

29年度

平均

北海道

3.1

3.4

2.2

1.8

3.1

東北

6.5

5.6

10.4

9.2

6.5

北関東

3.3

4.0

6.0

6.4

3.8

南関東

9.4

11.4

7.5

9.2

9.9

東京

22.3

16.7

5.2

7.3

19.2

甲信越

3.4

2.5

6.0

5.5

3.3

北陸

2.9

2.9

6.0

1.8

3.0

中部

5.8

5.0

6.0

5.5

5.6

愛知

5.6

6.0

2.2

3.7

5.5

近畿

7.7

9.0

11.9

11.9

8.5

大阪

5.6

8.5

3.0

5.5

6.3

中国

7.4

6.8

9.7

8.3

7.4

四国

4.0

2.5

7.5

4.6

3.8

九州沖縄

8.0

8.1

13.4

13.8

8.5

福岡

5.0

7.7

3.0

5.5

5.7

全国

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

 

 年度別の地域ごとのシェア(全国の採択件数に占める当該地域の採択数の構成比率)は、平成28年度に、東北・北関東・甲信越・中部(愛知を除く)・近畿(大阪を除く)・中国・四国・九州沖縄(福岡を除く)が上昇するという、

はっきりとした特徴が出ています。

 

 地域別の特徴は、業種による違いにも見てとれます。

 

7:地域別業種別採択件数(平成2629年度)

         

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

小計

北海道

29.5

13.5

11.5

4.5

5.0

2.0

4.0

11.0

81.0

東北

65.0

18.5

24.0

11.0

5.5

6.0

6.0

36.0

172.0

北関東

27.0

17.5

29.0

3.0

6.0

5.5

3.0

8.0

99.0

南関東

61.5

38.5

45.0

19.5

14.0

19.5

8.5

53.5

260.0

東京

82.5

54.0

111.0

69.5

24.5

29.0

22.0

111.5

504.0

甲信越

30.0

13.5

12.5

3.0

7.0

1.0

5.0

16.0

88.0

北陸

23.0

11.5

16.0

3.5

2.0

4.0

4.0

15.0

79.0

中部

39.5

26.5

32.5

5.5

8.5

6.5

10.0

17.0

146.0

愛知

40.5

19.5

29.0

6.0

6.0

3.5

10.5

29.0

144.0

近畿

70.5

26.0

37.5

13.5

20.0

10.5

10.0

35.0

223.0

大阪

30.5

23.0

38.5

16.0

9.5

7.5

16.0

25.0

166.0

中国

73.0

21.5

26.5

5.0

7.5

2.5

18.5

39.5

194.0

四国

31.5

17.5

17.0

1.5

7.5

3.0

10.0

11.0

99.0

九州沖縄

72.5

28.5

30.5

9.0

19.0

9.5

24.5

30.5

224.0

福岡

34.5

17.5

35.5

6.0

6.0

1.5

19.0

30.0

150.0

全国

711.0

347.0

496.0

176.5

148.0

111.5

171.0

468.0

2629.0

 

8:地域別業種別採択シェア(平成2629年度/%)

       

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

全体

北海道

36.4

16.7

14.2

5.6

6.2

2.5

4.9

13.6

100.0

東北

37.8

10.8

14.0

6.4

3.2

3.5

3.5

20.9

100.0

北関東

27.3

17.7

29.3

3.0

6.1

5.6

3.0

8.1

100.0

南関東

23.7

14.8

17.3

7.5

5.4

7.5

3.3

20.6

100.0

東京

16.4

10.7

22.0

13.8

4.9

5.8

4.4

22.1

100.0

甲信越

34.1

15.3

14.2

3.4

8.0

1.1

5.7

18.2

100.0

北陸

29.1

14.6

20.3

4.4

2.5

5.1

5.1

19.0

100.0

中部

27.1

18.2

22.3

3.8

5.8

4.5

6.8

11.6

100.0

愛知

28.1

13.5

20.1

4.2

4.2

2.4

7.3

20.1

100.0

近畿

31.6

11.7

16.8

6.1

9.0

4.7

4.5

15.7

100.0

大阪

18.4

13.9

23.2

9.6

5.7

4.5

9.6

15.1

100.0

中国

37.6

11.1

13.7

2.6

3.9

1.3

9.5

20.4

100.0

四国

31.8

17.7

17.2

1.5

7.6

3.0

10.1

11.1

100.0

九州沖縄

32.4

12.7

13.6

4.0

8.5

4.2

10.9

13.6

100.0

福岡

23.0

11.7

23.7

4.0

4.0

1.0

12.7

20.0

100.0

全国平均

27.0

13.2

18.9

6.7

5.6

4.2

6.5

17.8

100.0

 

 表8赤字の部分は、全国平均よりも明らかに高い(注5)ところを示しています。

 この結果から、「食」に関する比率が高い東北と中国、製販が高い北関東、ITが高い東京と大阪、T&Rが高い甲信越・近畿(大阪を除く)・九州沖縄(福岡を除く)、教育が高い南関東、美容が高い四国・九州沖縄・福岡、という傾向があります。特に美容は、大阪と中国も高めの傾向があり、西日本では全般的に高い傾向があると言えそうです。ケアについては、目立った地域上の特徴はないように思われます。

 こうした地域別の業種別の傾向は、それぞれの地域で起業する件数自体が多い業種が採択数も多い傾向にあるのか、起業件数自体には特に目立った差はなくても、採択率に何か大きな特徴があるのか、詳細は不明です。

 

【注3

地域区分は以下のとおりです。

東北:青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島の6

北関東:茨城、栃木、群馬の3

南関東:埼玉、千葉、神奈川の3

甲信越:山梨、長野、新潟の3

北陸:富山、石川、福井の3

中部:静岡、岐阜、三重の3

近畿:滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の14

中国:鳥取、島根、岡山、広島、山口の5

四国:徳島、香川、愛媛、高知の4

九州沖縄:長崎、佐賀、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の7

北海道、東京都、大阪府、愛知県、福岡県は単独で表示しています。

 

【注4

平成24年度の人口推計結果(総務省統計局)に基づき、東京都および四国4県の人口の平均値から算出しました。もとのデータは以下のサイトを参照してください。

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/pdf/gaiyou3.pdf

 

【注5

「食」については全国平均よりも10%以上、それ以外の業種については全国平均値の1.5倍以上を、それぞれ「明らかに高い」ものとしてピックアップしています。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017822日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(3)

 

(3)採択件数の少ない県の特徴について

 

平成29年度は富山県、27年度は山形県と山梨県、以上の3県が採択件数ゼロとなったことがある県(注6)です。

これらに加えて、採択件数がゼロになったことはないものの、1件だったことがあるなど、この4年間の採択件数が目立って少ない青森・鳥取・島根・香川・高知の5県も加えて、業種別傾向をみたものが下表です。

 

表9:採択件数の少ない県と最も多い東京都との比較

         

 

「食」

ケア

製販

IT

T&R

教育

美容

その他

小計

青森

5

1

3

1

1

0

0

3

14

山形

6

2

0

1

0

0

2

3

14

山梨

3

0

3.5

1

1.5

0

0

5

14

富山

6

0

3

1

1

0

1

3

15

鳥取

3

1

4

0

1

0

2

0

11

島根

7

0

1

0

1

0

0

2

11

香川

3

4

3

0

3

0

1

1

15

高知

2

3

1

0

1.5

1.5

4

0

13

8県合計

35

11

18.5

4

10

1.5

10

17

107

1県平均

4.4

1.4

2.3

0.5

1.3

0.2

1.3

2.1

13.4

構成比%

32.7

10.3

17.3

3.7

9.3

1.4

9.3

15.9

100.0

東京

16.4

10.7

22.0

13.8

4.9

5.8

4.4

22.1

100.0

 

 この表では、比較のため、最も採択件数の多い東京都の業種別構成比を最下欄に示しています。

 採択件数の少ない県では、「食」に関連するものが多くを占めていることがわかります。東京との比較でいえば、ITの占める割合が極端に低いとか、製販や教育のウエイトが低いことにも気がつきます。ケアはほぼ同じですが、T&Rや美容については、東京よりもウエイトが高い傾向にあります。

 ここで「食」とT&Rの比率が高い傾向にある点に注目すれば、観光に関連した起業アイデアが採択されているのかもしれません。

 これらの県では、もともと人口が少ないせいか、起業件数および採択件数そのものが少ないことは十分に予想されます。ただ、人口が少ないこと以上に、事業所が少ないことが起業には大きく影響しているかもしれません。

 というのも、東京では、その他もかなり高い割合となっています。これは、事業所向けのサービスなど、多種多様なものが採択されている結果と思われます。もともと東京では、法人向けのサービスがいろいろと起業されていると推測できる上に、ITの採択比率が高いこととも、事業所向けの起業アイデアが採択されていることを窺わせます。

 

【注6

平成28年度の熊本県は採択件数がゼロです。これは4月に発生した熊本地震の影響なので、この分析では採択件数が目立って少ない県から除外しています。実際、熊本県の採択件数は、平成2629年度(実質3年間)で合計50件あります。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017829日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(4)

 

(4)人口10万人当たりの採択件数について

 

採択件数は、単純に多い少ないというよりも、たとえば人口との比較において採択件数の多寡を見るべきでしょう。

そこで、平成2629年度の4年間の採択件数の合計を平成27年の人口(注7)で除した値(以下、採択率と呼びます)を比較した結果、次のことが明らかとなりました。

 

  全国平均では人口10万人につき、採択率は2.07件となっている

  最も高い値は徳島県の6.08で、石川・東京・宮崎・岡山・大分が人口10万人当たり3.0以上の採択件数を示している

  反対に採択率が低いのは、埼玉と千葉が1.0に満たないほか、茨城・青森・山形・岐阜・鹿児島・富山・長崎が1.5未満となっている

 

 さて、表10で採択率が高い地域を見てみましょう。

 

10:人口10万人当たり採択件数上位10

 

採択件数

人口

10万人当たり

徳島

46

756

6.08

石川

45

1,154

3.90

東京

504

13,515

3.73

宮崎

41

1,104

3.71

岡山

66

1,922

3.43

大分

35

1,166

3.00

広島

84

2,844

2.95

福岡

150

5,102

2.94

熊本

50

1,786

2.80

京都

68

2,610

2.61

人口の単位は千人

 

 もともと人口も多く法人も多いため、起業件数も多く採択件数も多いと予想される東京都は、実は採択率も全国平均よりも50%以上も高く、数が質を高めているのではないかと想像されます。

その一方、福岡や京都以外の地域、なかでも全国平均の3倍もの採択率を示す徳島県は、人口や法人数が少なく、起業件数も多いとは想像できません。特に人口が同程度で同じ四国の高知県(1.79)と比べるとその違いが目立ちます。

採択率が2番目に高い(全国平均の2倍近い)石川県についても、同様のことが言えます。

 

 次に採択率が低い地域を見てみましょう。

 

11:人口10万人当たり採択件数下位10

 

採択件数

人口

10万人当たり

埼玉

66

7,267

0.91

千葉

57

6,223

0.92

茨城

31

2,917

1.06

青森

14

1,308

1.07

山形

14

1,124

1.25

岐阜

27

2,032

1.33

鹿児島

22

1,648

1.33

富山

15

1,066

1.41

長崎

20

1,377

1.45

神奈川

137

9,126

1.50

人口の単位は千人

 

 この表からは、次の3点に気がつきます。

第一に、首都圏、特に東京に隣接する埼玉・千葉・神奈川の3県の低さが目につきます。もしかすると、これらの地域で起業しようとする人は、東京で事務所を構えるなどして、より顧客が多いと思われる東京で起業する傾向があるのかもしれません。確かに、東京に本社や営業拠点を設けて、その周辺の地域に工場・研究施設・開発拠点などの作業施設を設ける企業は、一般に数多く見受けられます。起業する場合にも、同様の傾向があるのかもしれません。こうした見方は、茨城についても当てはまるように思われます。

第二に、青森・山形・富山など東北や北陸で降雪量が多い地域が目立つ傾向があります。ただし、同様の地理的条件である石川県の採択率が高いので、地理的条件だけではないことは確かでしょう。

そして、鹿児島や長崎といった九州の一部の地域についても、宮崎・大分・熊本・福岡といった採択率が高いほうのリストに挙がっている県の近隣地域ということから、必ずしも地理的要因だけはないと思われます。

 

敢えて申し上げるまでもなく、各自治体の起業促進の政策や地元の金融機関や商工会議所などの経済団体など関連する諸機関の支援など、起業および創業補助金の採択をバックアップする体制の違いなどが採択率に大きく影響するであろうことは論を俟ちません。

とはいうものの、採択率の高い地域のすぐ近くに採択率が低い地域が存在するという傾向は、首都圏・北陸・九州に広く見られることから、起業という行為が集まることでその内容もレベルアップするのではないかという仮説は捨てがたいものがあります。

 

【注7

都道府県別人口については、平成27年の国勢調査の結果(総務省統計局「国勢調査結果」)による。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(201791日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(5)

 

(5)具体的な起業テーマについて

 

次に、採択された事例に見られる起業テーマについて、その特徴などを業種別にご紹介しましょう。

 

①「食」に関連するもの

 

 「食」に関連するものは採択件数の4分の1以上を占めており、その数が多いのですが、その中から典型的な採択事例として、次のようなものがあります(注8)。

 

・全粒粉・ライ麦を使用した健康パン・手作りパンの製造販売(26・岐阜)

・自社生産の無農薬野菜を使った地ビール製造とカフェレストランの展開(26・茨城)

・本物志向のそばを提供し、地域の豊かな食文化に貢献する手打ちそば店の開設(26・徳島)

・薬膳カレーと天然食材をメインとした健康志向の料理店事業の展開(26・佐賀)

・農学博士が作る高付加価値ジャム・ジュース・アップルパイ等の製造販売(26・熊本)

・地元の食材を活かした地域密着型の和食居酒屋の展開(26・大分)

 

 業態別に「食」で採択事例を見てみると、パンの製造・販売が最も目立っています。次いで、カフェやレストラン(イタリアンやフレンチ)、和食店や居酒屋、ラーメン店といったものが多いようです。

 その一方で、おにぎり店など米をメインに据えた業態はほとんど見られず、弁当店・移動販売、定食店なども数少ない事例となっています。

 「食」の場合、地元の食材や自家(自社)生産の食材をキーワードとしたものが一般的といえるほど、地域に関係なく数多く見受けられます。そのなかの代表的なものを以下にピックアップしてみました。

 

・北海道の選りすぐり食材を使ったジェラ―トショップの展開(27・北海道)

・地元食材を使用したコース料理主体のレストラン開業(29・秋田)

・庄内の食材を通してつながりや食文化交流で地域を活性化する飲食店事業(28・山形)

・秋保ワイナリー内で軽食・お菓子・雑貨販売の実施(26・宮城)

・地域食材によるアイデア洋菓子の製造販売と立地(総合病院そば)を活用した低糖カフェの展開(29・栃木)

・江戸東京野菜や地元食材を酒菜に交流を楽しめる居酒屋(27・東京)

・鎌倉にてアメリカンスタイルのバーベキュー料理を食べられるカフェを出展(27・神奈川)

・自ら狩猟するジビエを提供する市内初のイタリアンレストラン(26・静岡)

・武家屋敷の自宅土蔵を改装して農作物を活かした農カフェ事業(26・長野)

・富山県産バイ貝等を使い、楽しんでいただける貝料理専門店(27・富山)

・店主自家栽培の京野菜とワインによる京イタリアンのおもてなし(27・京都)

・大和食材による日本食文化「神饌」を世界に誇れる長寿飲食事業として実施(29・奈良)

・置き薬風の売り方を導入し、福山の特産品を世界に発信していくカフェの展開(27・広島)

・地元の食材を使用して安心して食べられるベーグルカフェ(26・徳島)

・築60年超の古民家を活用したベーカリー事業の展開(26・愛媛)

・分子ガストロノミーに基づいた鹿児島県産黒牛・魚介フライ料理の提供(26・鹿児島)

 

 こうしてみると、地域の食材をアピールするとともに、健康や観光などとも連動して「食」で起業するのが主流のようです。

 また、独自の技術で開発したものを事業展開するという、ベンチャーらしい起業事例もあります。

 

・「活〆神経抜き」処理を施した魚の仕入・飲食店への販売の事業化(27・宮城)

・八百屋直結型グリーンスムージー販売事業の展開(27・福岡)

・オリジナルレシピのマヨネーズ「Magic Mayonnaise」の新規製造・販売(26・神奈川)

・岡山発 ミッシェル・ブラスの技法を継承したフランス料理店(26・岡山)

 

 シェアリングエコノミーの発想をもって「食」で起業するものもあります。具体的には、稼働していない不動産や捨てられている材料を活用するものです。

 

・廃校を活用したきのこ工場で北海道を椎茸生産日本一に(26・北海道)

・フラワーセンター跡地利用苺園(体験型いちごカフェ・巨大迷路)の開園(26・静岡)

・廃棄対象となる新鮮野菜を活用したドレッシングやディップ等の加工品製造販売(26・神奈川)

 

 顧客ターゲットを明確に絞り込んだ事業プランも、次のように採択されています。

 

・地域密着型大人の男女のための婚活居酒屋の展開(27・東京)

・単身者の方が通いたくなる創作中華料理店の展開(27・福岡)

・薬剤師がプロデュースする糖質オフの健康カフェ(26・埼玉)

・アスリートの体調管理を目的とした会員制食堂の運営(26・愛知)

・地域貢献と人材育成を目的として飲食店の空き時間を利用した子供用カフェ(29・東京)

 

 そして、海外に販路を拡大するという事業プランもあります。

 

・福岡県産フルーツを海外市場に売り込む販路開拓の実施(28・福岡)

・愛知県産日本茶と日本文化の中国への輸出事業(27・愛知)

 

 さらに、食材を開発・生産・販売したり飲食店を開業したりするというだけでなく、「食」を文化として捉えて事業展開を図る起業プランも採択されています。

 

・博多や久留米に負けない新しい宇部ラーメンのブランド作りと発信(26・山口)

・宮崎ラーメンの文化定着・発信基地創造事業(29・宮崎)

・海外も注目する日本の珈琲文化を守り既存店・創業を支援する事業(27・大阪)

 

 数は限られていますが、「食」に関する事業者をサポートするビジネスを提案する事例も採択されています。

 

・中小飲食企業のプロモーションに特化したコンサルタントの開業(26・滋賀)

・全国2位の野菜ソムリエが提案する「食」に特化した広告事業の展開(26・福岡)

 

 以上、「食」に関するものの中から、特徴的な採択事例をいくつかご紹介しましたが、まとめると次のように言えるでしょう。

 すでにある「食」そのものを扱う場合、地元食材とか何らかの地域性や独自性を打ち出すことが求められます。もちろん、新たに開発した食材や調理法というものも、検討に値します。

 次に、何らかのトレンドを「食」にも持ち込んだものも有力です。それは、シェアリングエコノミーでも安全安心でも不稼働不動産の再活用でもインバウンド観光でも、十分にありえます。

 そして、顧客ターゲットの絞り込みという視点も見逃せません。その先には、海外展開や新たな文化の創造・発信もあります。

 忘れてならないのは、「食」にダイレクトに関わるものだけでなく、「食」に関わるビジネスを成功させるには、その周りでサポートを求める需要もあるということです。ここにもビジネスチャンスはありそうです。

 

【注8

()内は、数字が採択年度(平成○○年度)、地名は採択された事例の都道府県名を表します。次回以降の事例紹介でも同様の記述となります。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(201798日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(6)

 

②ケアに関連するもの

 

 ケアに関連するものは、全国平均で13.2%を占めており、「食」や製販に関連するものに次いで創業補助金の採択事例が多くなっています。

 その代表的なものとしてまず挙げられるのは、何らかの技術開発をもって医療や健康などに関連する機器やシステムなどを提供するものです。

 

1細胞ハンドリング装置の開発と販売(26・神奈川)

・微量タンパク質の酵素活性を高感度で検出する解析ツールの展開(26・東京)

・独創的理論に基づいた歯周病予防用電動歯ブラシの開発・販売(29・岡山)

 

 こうした技術開発をメインに据えたものは創業補助金に採択された件数が多くはありません。医療系でハードウエアやシステムを開発するとなれば、相応の資金・人材・設備などが必要になるためか、創業補助金に応募する起業規模では収まり切れないのかもしれません。

 ただし、技術開発は必ずしもハードウエアを伴う必要はありません。特にケアの場合、新たなサービスを提供することが起業のコアとなることもあります。また、ハードウエアといっても、クリニックやサロンを開業する程度であれば、創業補助金で対応可能なものもあるようです。

 

・「自分の歯で一生を送る」ための最先端マイクロ精密根管治療を推進する歯科医院の運営(26・神奈川)

・専門性が高い乳癌治療と患者様の社会復帰を援助するクリニックの開設(27・佐賀)

・スポーツコミュニティに参加する女性への施術に特化した整骨院の開設(26・千葉)

・妊娠中のトラブルや産後の変調に悩む女性のための完全予約制鍼灸サロンの設立(28・三重)

・新生児集中治療室を退院した児の退院後のフォローアップ事業(27・滋賀)

・「人生の物語」を活用した高品質な認知症ケアの展開(27・愛知)

・心身の障害の軽減回復、機能の維持改善、生活の質を向上させる音楽療法プログラムの実施(26・大阪)

 

 ケアの対象は個人に限りません。企業や特定のニーズを持ったグループに対して、独自のサービスを提供することでケアを実現するものもあります。

 

・薬剤師によるドーピング検査対策のサポートの実施(27・長野)

・健康経営を目指す企業へのヘルスインテグレーションサービスの展開(27・愛知)

 

 さらに言えば、ケアの対象は人間だけではありません。動物も、その対象となりえます。

動物病院も相当に競争が激しいのではないかと思わせるように、さまざまなサービスが開発されたり、特定のマーケットにフォーカスして独自性を生み出そうとしたりするものが多く見られます。

 

・西洋医学だけでなく東洋医学(鍼、漢方薬等)による治療を同時に行う動物病院の開業(29・新潟)

・猫にやさしい「キャットフレンドリー」な地域密着型動物病院の開業(29・石川)

・小動物診療、パピークラス、捨て猫保護を主軸とした動物病院の展開(26・広島)

・ワンちゃん幼稚園を中心とした犬のための総合サービス施策の展開(26・東京)

 

 ケアは医療サービスに限りません。障害者や高齢者などに対してQOL(生活の質)を維持・向上させるものも、起業の対象となりえます。

 

・地域中小ものづくり業の失注を解消するための障害者雇用の促進(28・群馬)

・障害児プレイパーク事業(27・埼玉)

・障害児を対象とした放課後デイサービス事業(27・神奈川)

・伊丹市初の障害者就労A型施設の立ち上げと地域密着型多店舗展開(26・兵庫)

・地域に密着した高齢者向け生活支援型介護タクシーの展開(27・宮城)

 

 そして、ケアサービスをより効果的に実施できるように、ケアビジネスの事業主体をサポートする事業も採択されています。

 

・中国からの患者招聘および医療職に対する技術指導支援事業(26・東京)

・看護師の復職・転職支援と地域包括ケアを両立する訪問看護事業(27・東京)

 

 以上、ケアについてまとめてみると、起業のアイデアはかなり幅広く存在することがわかります。

ハードウエアを開発して新たなサービスやビジネスを創業しようとすることはもとより、ケアのなかに身近なサービスを持ちこんだり、ちょっとした一工夫をしたケアを実施したりすることが、さまざまな起業につながっているように思われます。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017912日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(7)

 

③製販

 

 製販には、「食」やケア以外の分野で一般にモノを作って売る、またはモノを仕入れて(加工して)売るビジネスが該当します。「食」についで創業補助金の採択件数が多く、製販は全体の2割弱を占めます。

 そのなかで代表的なものといえば、その地域の特産物や固有の製品を製造・販売するものです。こうしたものは、イベントとの連動や通信販売などを契機として事業展開されるようです。

 

・国産材のみを使用した無添加家具製作・能登ヒバDIYキットの開発(27・石川)

・岡山県産の農産物及び自然派の地域ブランド産品の通信販売事業(27・岡山)

・もみ殻を原料とした固形燃料の製造及び販売(26・長野)

・ラグビーW2019年花園開催に向けた花園ぽんずの販売と工場拡張(27・大阪)

 

 その地域の特産物でなくても、新しい技術や製品を開発して販売するというのも、製販での起業の王道といえます。特に、技術や趣味などを絞り込んだものが典型的と言えそうです。

 

・セーリングヨット型ドローンの研究開発と事業化(29・茨城)

・プラズマ技術を使った高耐久非粘着コートの事業化(27・長野)

・国内初となる成型インナー(インナーシャツ)の製造販売(29・熊本)

・ドールを中心としたホビー・アート・雑貨商品の製造販売の展開(27・東京)

・釣り具・アウトドア用品のネット通販事業(27・東京)

・子供向けモータースポーツ関連商品販売と修理メンテナンス(27・福島)

 

 そのなかで、環境に関する課題を解決しようとするものも目につきます。

 

・電力使用機器の個別電力使用量の表示とその効率化を図る製品の製造事業(27・京都)

・生ごみ等を前処理と微生物醗酵で処理する機器販売を実施(26・宮城)

 

 リサイクルなど既にある資源の再活用を目指すものも、環境に関する課題を解決する事業テーマであるかもしれません。実際の採択事例を見ると、単に再利用・再活用を図るだけでなく、新たな価値を見出すところにビジネスの芽があるのかもしれません。

 

・中古の着物・帯を起用したレディース・メンズのファッショ事業の展開(28・東京)

・中古ピアノを活用し付加価値を備えた再生ピアノの販売事業展開(27・愛知)

・廃棄プリンターの再活用による総合プリンタービジネスの展開(26・宮城)

・古書や古い美術印刷物の中から新たな価値を見出し提供する専門店の展開(26・愛知)

 

 製販のなかには、直接モノを販売するだけでなく、製造・販売をサポートする起業テーマもあります。

 

・地方特産物の首都圏PRイベント等の運営・販売(27・東京)

・独自開発した「ロングテールSEO法」を使った商品拡売技術の提供(26・大阪)

 

 以上、製販についてまとめてみると、やはり、どのようなモノを開発し販売するかというところで勝負しようとしているものが大半と思われます。そこに何か一工夫があって、初めて起業アイデアが実際の事業に成長していくのでしょう。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017914日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(8)

 

IT

 

 ITに関するものとしては、まず、ロボットやIoTなど技術開発の動向に即して起業するアイデアがあります。

 

・インテリジェントロボットシステムの開発とその展開(26・静岡)

・高齢者の心配事トイレを簡潔にする人間支援型ロボット「トイレアシスト」の実用化(26・広島)

IoTを活用した農場管理システムの展開(28・大分)

IoT宅配ロッカーを用いた物流宅配システムの構築(29・東京)

1000名の占い師を活かしたチャット占いサービス(27・埼玉)

 

 また、新たなサービスを提供するプラットフォームを開発するものも、IT関連らしいテーマとして採択されています。

 

・中小企業向けに手軽に活用できる安全なクラウドサービスの提供(27・秋田)

・電子請求システムのクラウド開発(26・東京)

・ロシア向けインターネット通販プラットフォーム事業の展開(27・東京)

・最先端科学技術の3D立体映像コンテンツ制作とそのプラットフォーム運用(28・茨城)

 

 もちろん、既存のIT技術やITサービスに一工夫を施したものもあります。

 

・顔をスキャンしてそのデータを基に着せ替えをした3Dフィギュア販売事業(27・岡山)

・高品質かつ短納期を実現する画像処理・PLCソフトウエアのパッケージ開発・販売(28・鹿児島)

WEBで完結、ビザ申請書類作成・代行申請サービス(26・東京)

・飲食店特化型税理士事務所の経理業務自動化サポートの実施(26・東京)

 

 なかには、ITの開発のやりかたに独自のものを展開する起業プランもあります。特に開発する人材に独自性を見出すものが特徴的です。

 

・主婦SE活用によるローコストシステム開発の提供(27・東京)

・高齢ベテランSEと障害者SEによるシステム開発・保守事業(26・福岡)

 

T&R

 

 旅行や不動産に関連するものといえば、典型的には次のように旅行と不動産を通じて地域の活性化を図るものがあります。

 

・地域初の不動産業の創業とニセコインバウンドを取り込む地域活性連動型不動産ビジネス(29・北海道)

・小規模旅館の運営・再生および地域再生ビジネス(28・新潟)

 

 旅行関連の起業では、ターゲットを絞り込んだものが目立ちます。

 

・インターネットを使った訪日中国人観光客むけ旅行情報サービスの提供(27・千葉)

・来日外国人観光客向け簡易クレジット決済サービスの提供事業(27・愛知)

・海外富裕層に特化した九州地域内への集客・長期滞在促進事業(29・福岡)

・富裕層外国人旅行者をメインターゲットとした町屋一棟貸・宿泊施設の展開(28・奈良)

 

 一方、提供するサービスを絞り込むことで起業を目指すアイデアも、旅行関連では見られます。

 

・坊主が案内する京和文化の探訪ツアーの実施(27・京都)

・ディープな岐阜を紹介する少人数制ツアーの実施(28・岐阜)

・出張茶会(外国人観光客の伝統文化体験)事業の実施(26・兵庫)

・モーターパラグライダー2人乗り観光遊覧飛行(26・沖縄)

 

 不動産に関する起業アイデアについていえば、やはり地域活性化を意識して、空き家などの遊休不動産をシェアハウスなどに活用するものが注目されます。

 

・地域商店街と連携したベトナム人留学生向けシェアハウスの展開(26・東京)

・空き家を活用した次世代シェアリング個室ジムのシステム提供(29・広島)

・遊休不動産の一括管理サービスによる空き家再生事業の実施(28・長野)

・滋賀県に特化した高齢者住宅の入居希望者と提供者のマッチング事業(27・滋賀)

・空き家を活用したシングルマザーシェアハウス事業(26・福岡)

 

 以上のように、ITや旅行・不動産に関連した起業では、それぞれの分野でのトレンドを意識したもの、そこに更に一工夫あるものが採択されている傾向にあるように思われます。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017918日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(9)

 

⑥教育

 

 教育に関するものには、まず、子供の教育に直接関係するものがあります。

 次に例示するものからわかるように、事業の独自性(既存の事業者との違い)は、学習や教育のシステムそのものにありそうです。具体的には、教育の手法であったり、教材であったりするのでしょう。

 

・次世代に向けた個別自立学習塾の展開(28・福井)

・中学生高校生を対象とした学習塾とシステム教育の実践(27・北海道)

・障害児を主に対象とした能力開発教室の展開と独自教材の開発事業(27・熊本)

・モンテッソーリ教育を取り入れた子供と保護者のための育児支援施設の実施(26・長野)

 

 教育に関するものは、対象を子供に限定しているわけではありません。採択件数としては、むしろ子供以外を対象とするもののほうが主流と呼べるでしょう。これも少子化の影響と言えるのかもしれません。

 

・世界に通用する空手選手育成のための空手道場の運営(26・埼玉)

・誰でも楽しめる安全でゲーム性の高いブラジリアン柔術スクールの経営(27・神奈川)

・外国人留学生アルバイト特化型の教育事業の展開(26・東京)

・農業ビジネス大学校および農業ビジネスプラットフォーム運営事業(27・愛知)

・植物工場を経営できる起業家の育成と植物工場の技術開発の実施(26・東京)

・絵巻き寿司を活用したインストラクター認定事業等の展開(28・神奈川)

・映画業界で活躍できる人材の育成と供給を行うスクール及びイベント事業の運営(26・大阪)

 

 こうした子供以外の一般向けの教育サービスで起業する場合、大きくは3種類の起業のアプローチが見られます。

第一は、外国人留学生や映画業界で活躍したいと思っている人など対象を絞っていくものです。次に、空手とかブラジリアン柔術というように分野や競技種目などに独自性を打ち出すものです。最後に、農業ビジネス大学校とかインストラクター認定事業というように、教育サービスのシステムを確立するものです。

 

⑦美容

 

 創業補助金で採択された業界業態のなかで顕著に多かったものが、美容に関するものです。これは、美容業界(美容室、エステティックサロン、ネイルサロンなど)が過当競争の状態に置かれていることのではないかと想像させるものでもあります。

 

・トータルコーディネートを行い地域活性化コミュニティとなる美容室創業事業(29・長野)

・「働く女性を応援する」地域コミュニティ創造型エステティックサロンの開業(28・高知)

5060代大人の女性の髪の若返りにより「美の幸せ」を提供する美容院(27・愛知)

4060代女性向けのネイルサロン経営とネイルグッズの開発・販売(27・愛知)

・ママさん美容師積極雇用で高齢者への訪問美容を提供する地域密着型美容室の展開(26・静岡)

・カイロプラクティックとピラティスによる姿勢矯正美容サロンの展開(27・岡山)

 

 美容というと、女性だけが顧客ターゲットというわけでもありません。男性をターゲットとするものも当然、あります。

 

・男性専用の美容と健康と癒しを提供するトータルライフサポートサロン(27・福岡)

 

 製販のところでも見られたように、その業界そのものでなく、その業界のビジネスをサポートするものも起業アイデアとしてありえます。その一例として次のようなものがあります。

 

・東北地方の年商210億円規模の美容院特化型経営コンサルティング(26・宮城)

 

 以上、美容関連で採択されたもののなかから典型的なものをご紹介しました。地域・顧客対象・従業員の特徴など何らかの絞り込みで特徴のある事業を目指しているものが多いようです。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017921日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(10

 

⑧その他

 

 これまでご紹介してきた7業種業態以外のものにも、創業補助金の採択事例はいろいろとあります。その大半は、新たなサービスを提供するものです。

 

・資源ゴミの分別ノウハウを活用した適正な資源リサイクル事業の展開(26・新潟)

・次世代環境対応型の鈑金塗装設備のある自動車整備工場(29・京都)

・一軒家を改装したハウススタジオ型こども写真館の展開(26・静岡)

・カーエアコンを快適に「カーエアコン洗浄サービス」事業の開始(28・山口)

・地方拠点で東京を超えるアニメスタジオを作る(28・岡山)

・搬送・安置に特化した低価格葬儀サービスの提供(27・埼玉)

 

 このように環境や高齢化といったテーマに直結するものがあり、現実の社会的な課題や経営上の課題を解決できるように起業するものがあります。

その一方、創業補助金という名称からも予想できるように、中小企業や起業を支援するサービスを起業しようとするのも、目立つ存在です。

 

・石川で起業し石川で暮らすための起業総合支援事業(26・石川)

・ワンストップで企業の人事部門を支援する人材総合ソリューション(27・石川)

・中小企業向けハンズオン経営コンサルティング事業の展開(26・東京)

・中小企業の総務・人事・経理・財務等の共通業務(シェアードサービス)のアウトソーシング受託の展開(26・愛知)

・若手経営者向け「家業から企業への転身支援サービス」(27・宮崎)

・コワーキング総合サイトを軸としたスタートアップ支援事業(26・埼玉)

・女性の起業・副業を支援するコミュニティスペース事業の展開(26・神奈川)

・女性創業者のスタートアップを応援するNPO団体(26・埼玉)

 

 また、次のように、いわゆる士業のなかで独自のサービスを展開しようとするものもあります。

 

・裁判関係業務に特化した法的支援を行う司法書士事務所の運営ならびに司法書士の育成(27・千葉)

・川崎から発信する外国人の総合サポートを中心とする行政書士事務所(26神奈川)

・労務管理と営業実績向上をサポートする戦術指導型の社会保険労務士事務所の開業(26・広島)

・若手公認会計士向けキャリア形成支援事業(26・神奈川)

 

 そして、地域や商店街の活性化にダイレクトにつながる起業アイデアも採択されています。

 

・まちなかライブラリーを利用した有田まちおこし代理店~商店街の新たなコミュニティ形成と活性化~(26・佐賀)

・奈良県内での映画・ドラマ等のロケーション誘致活動の実施(27・奈良)

 

 こうして業種業態の面から、代表的な採択事例に見られる特徴を概観してきましたが、地域・顧客対象・従業員の特徴など何らかの絞り込みをして起業するものが採択されているように思われます。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017925日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(11

 

⑨採択理由や事業内容が不詳なもの

 

 公表されている資料の限界とはいえ、採択事例のテーマだけを見ると、採択された理由や事業内容などがよく分からないものもあります。そのなかから、典型的なものをいくつかご紹介します。

 

・コンビニエンスストア(セブンイレブン)の経営(27・大分)

・ラケルとのFC契約を活用した卵料理専門の飲食店事業の展開(26・広島)

・勤務先の唐揚げ専門店の暖簾分けによる独立開業(26・滋賀)

 

 FC契約や暖簾分けによる開業というのも、創業・起業に違いはありませんが、それだけでは創業補助金という制度で補助対象とするものとは思えません。テーマで表示されているもの以外に、独自の工夫や地域への貢献などがあってのことに違いないはずです。

 

・焼き立てパンの製造販売(26・埼玉)

・みんなを笑顔にする街のケーキ屋さん(27・神奈川)

・こだわった菓子の製造・販売事業の展開(26・愛知)

・女性店主によるラーメン店の開業(27・福島)

40年間変わらない昔ながらの博多豚骨ラーメンの提供(27・福岡)

 

 このように、特に「食」に関連するテーマでは、一般によく見られる起業テーマが掲げられているだけというものもあります。同様に「食」に関連するもの以外にも見られます。

 

・主に国際輸出貿易会社(26・東京)

・建築用金物等の製造・販売(26・岐阜)

・自動車整備販売業(26・和歌山)

・インターネットを活用したWEB広告事業の実施(26・兵庫)

・ペンション宿泊施設経営(26・沖縄)

・習字の師範として地域の子供たちに向けた書道教室の開設(27・三重)

・写真スタジオ経営(26・東京)

 

 ここまでご紹介してきたものは、どのような事業に取り組もうとしているのか、一目で理解できるテーマでしたが、なかには、掲げられているテーマだけでは、事業内容を想像しにくいものもあります。

 

・焼き鳥研究の集大成(26・福岡)

・和食という食文化の提案(26・広島)

・少子化ストップ、空き家フル活用(26・東京)

・つながるハウス(26・大分)

・「スロービューティフル」による「精神的な充足」の提供(27・福島)

・人と人との繋がりを日常化し、地域の活性化に貢献する(26・愛知)

 

 「焼き鳥研究」とか「和食という食文化」であれば「食」に関連するものでありそうとか、「空き家フル活用」とか「つながるハウス」というのも不動産に関連性がありそうなものと想像できるところもありますが、具体的なビジネスをイメージできないものもあります。

 

こうして個々の採択事例を振り返ってみると、起業の参考となりうるものも数多く見られるとともに、テーマだけからは想像しえない何かをもった創業プランもありうると言えそうです。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017928日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(12

 

(6)今後の課題について

 

 ところで、創業補助金の制度では、申し込みがあったものも採択された事例についても、代表者の属人的な情報(年齢、性別、最終学歴、家族構成、現職、これまでの職業経験、過去の起業経験など)は、個別にも集約されたものも公表されていません。

比較のために、日本政策金融公庫の実施している「新規開業に関する調査」(注9)を見てみましょう。ここでは、以下の5項目から、開業した人の属性を調査しています。

 

・開業時の年齢

・性別

・最終学歴

・開業直前の職業

・勤務キャリア(業界や職種の経験)

 

また、次のような質問もあり、起業した人(正確にいえば「開業して1年以内に日本政策金融公庫の国民生活事業の融資を受けた人」)が起業する前や1年程度を経た時点でもっている意識(の変化)を窺い知ることができます。

 

・開業したビジネスを選んだ理由

・開業時や回答時の苦労している点

・開業しようとした動機

・開業前後での知識や能力の変化

・現在の満足感

・今後の方針

 

この調査では、開業した会社についても、次のような質問があり開業の前後で比較することができるものもあります。

 

・アンケート回答時の開業からの経過月数

・開業時の従業員数

・開業した業種

・フランチャイズチェーンへの加盟の有無

・商圏の範囲

・回答時の従業員数

・開業費用の額とその調達先

・売上と採算の状況

 

これらの質問から業種や開業費用にまつわる傾向などを推測することもできます。

このうち、開業費用について見ると、平均値も中央値も長期的に漸減傾向にあり、2016年度では中央値で670万円と3年ぶりに700万円を切っています。特に自己資金については平均で320万円となっており、金融機関からの借入額の平均931万円に対して3分の1程度となっています。

開業資金全体が1400万円強と2016年度とおおむね同程度の1998年について見ると、自己資金435万円に対して金融機関からの借入額が723万円となっており、自己資金は借入のほぼ6割に相当していました。つまり、この間に自己資金調達力は半分近く低下したことは否めません。

こうした傾向を目にするにつけ、起業プロセスにおいて創業補助金の果たすべき役割は大きいものがあると思われます。

 

ただ、創業補助金は現状では採択された起業者も申し込んだ起業家についても、その属性などが公表されていないため、その政策目的がどの程度実現されているのか不明です。

たとえば、若手や女性の起業をバックアップしようとしているとしても、実際に申し込んだ人や採択された人の年齢分布や男女比などのデータが明らかにならなければ、政策目的に沿って運営されているかどうかは、外部から判断できません。

さらに、属性情報が明らかになること以上に、創業補助金が本来の目的であるはずの「創業」を実現し、多少なりとも雇用の拡大につながっているのか、事後の検証も必要です。そのためには、5年とか10年といった一定の期間、補助金を受けた起業家や会社について、その経営状況をトラッキングするような調査も重要でしょう。

もちろん、こうしたトラッキング調査は、創業補助金に限ったことではなく、広く様々な補助金制度や起業に対する優遇措置のある融資制度などについて、フォローアップ・プログラムとして求められることは、改めて申し上げるまでもありません。

 

【注9

以下のサイトに、毎年の新規開業に関する調査の結果や、その年の特別調査(2016年度は「経営経験者の開業」の実態についての調査)の結果などが公開されています。

https://www.jfc.go.jp/n/findings/eb_findings.html

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017103日)更新

 

創業補助金の採択事例にみる創業動向について(13

 

(7)まとめ

 

 以上、これまで述べてきたことをまとめてみましょう。

 

採択件数そのものは全体的にみると、平成26年から29年度にかけて、1631件から109件へと低下傾向にあります。また、採択率は平成27年度が60%を超えていましたが、平成28年度には5%弱と急減し、この間に創業補助金の制度そのものが大きく変化したことが読み取れます。応募件数は隔年で増減を繰り返しており、多い年で3000件弱、少ない年で7001000件程度となっています。

 

業種別にみると、「食」、製販、ケアに関するものの3業種で6割ほどを占めます。創業補助金の採択対象は、ITや新たなサービスというよりも、既にあるビジネスに何らかの工夫を施したものが主流と思われます。

 

地域別にみると、都道府県別では、東京が2割弱を占め、次いで大阪・愛知・福岡といった大都市を有するところが56%台をそれぞれ占めています。

これを年度別にみると、採択件数が急減した平成28年度・29年度は東京・大阪・愛知・福岡は件数が減少するとともに、採択シェア(採択件数全体に占める割合)も減少していることがわかります。同時期に反対に採択シェアが増えているのは、東北・北関東・甲信越・中部(愛知を除く)・近畿(大阪を除く)・中国・四国・九州沖縄(福岡を除く)となっています。

地域ごとの業種特性をみてみると、「食」に関する比率が高い東北と中国、製販の比率が高い北関東、ITが高い東京と大阪、T&Rが高い甲信越・近畿(大阪を除く)・九州沖縄(福岡を除く)、教育が高い南関東、美容が高い四国・九州沖縄・福岡といった傾向が指摘できます。

採択件数が少ないほうの8県(青森、山形、山梨、富山、鳥取、島根、香川、高知)を最も多い東京と比較してみると、次のような特徴があります。

 

・「食」の占める比率が2倍ほど高い

ITの占める比率は大きく低い

・製販のウエイトを低い

・ケアはほとんど同じ

 

さらに、人口10万に当たりの採択率を算出してみると、別の地域別の特徴が見て取れます。

 

・徳島が突出して高い

・石川、東京、宮崎、岡山が10万人当たり3件以上となり多いほうの上位を占める

・埼玉と千葉は10万人当たり1件に満たず、下位4位に茨城、下位10位に神奈川が位置づけられるなど東京近郊の県の低さが目立っている

 

 こうした特徴から、東京に代表される都市部はITやその他(サービス)の占める比率が高いこと、一般に採択件数が少ない地域ほど「食」が多くを占めることなどがわかります。

 

 採択された個々のテーマについて見ると、業種別の特徴が表れています。

 

まず、「食」についてです。

 すでにある「食」そのものを扱う場合、地元食材とか何らかの地域性や独自性を打ち出すことが求められます。新たに開発した食材や調理法というものも、検討に値します。

 何らかのトレンドを「食」にも持ち込んだものも有力です。トレンドというのは、たとえば、シェアリングエコノミー、安全安心、不稼働不動産の再活用、インバウンド観光など、いずれも十分にありえます。

 顧客ターゲットの絞り込みという視点も見逃せません。その先には、海外展開や新たな文化の創造・発信もあります。

 忘れてならないのは、「食」にダイレクトに関わるものだけでなく、「食」に関わるビジネスを成功させるには、その周りでサポートを求める需要もあるということです。ここにもビジネスチャンスはありそうです。

 

次に、ケアについてです。

ケアといっても実は、技術開発をメインに据えたものは多くはありません。医療系でハードウエアやシステムを開発するとなれば、相応の資金・人材・設備などが必要になるためか、創業補助金に応募する事業規模では収まり切れないのかもしれません。

 技術開発には必ずしもハードウエアを伴う必要はありません。特にケアの場合、新たなサービスを提供することが起業のコアとなることもあります。また、ハードウエアといっても、クリニックやサロンを開業する程度であれば、創業補助金で対応可能なものもあるようです。

ケアの対象は人間だけではありません。企業や動物も、その対象となりえます。動物病院も相当に競争が激しいのではないかと思わせるように、さまざまなサービスが開発されたり、特定のマーケットにフォーカスして独自性を生み出そうとしたりするものが多く見られます。

ケアは医療サービスに限りません。障害者や高齢者などに対してQOL(生活の質)を維持・向上させるものも、起業の対象となりえます。ケアサービスをより効果的に実施できるように、ケアビジネスの事業主体をサポートする事業も採択されています。

 

次は、製販についてです。

 製販で代表的なものといえば、その地域の特産物や固有の製品を製造・販売するものです。こうしたものは、イベントとの連動や通信販売などを契機として事業展開されるようです。

  その地域の特産物でなくても、新しい技術や製品を開発して販売するというのも、製販での起業の王道といえます。特に、技術や趣味などを絞り込んだものが典型的です。

なかでも、環境に関する課題を解決しようとするものも目につきます。リサイクルなど既にある資源の再活用を目指すものに限らず、新たな価値を見出すところにビジネスの芽があるのかもしれません。

 製販のなかには、直接モノを販売するだけでなく、製造・販売をサポートするものもあります。

 

ITに関するものとしては、ロボットやIoTなど技術開発の動向に即して起業するアイデアがあります。新たなサービスを提供するプラットフォームを開発するものも、IT関連らしいテーマとして採択されています。

もちろん、既存のIT技術やITサービスに一工夫を施したものもあります。ITの開発のやりかたに独自のものを展開する起業プランもあります。特に開発する人材に独自性を見出すものが特徴的です。

 

T&R旅行・不動産)に関連するものといえば、典型的には旅行と不動産を通じて地域の活性化を図るものがあります。

旅行関連の起業では、ターゲットを絞り込んだものが目立つ一方、提供するサービスを絞り込むことで起業を目指すアイデアも見られます。

不動産に関する起業アイデアについていえば、地域活性化を意識して、空き家などの遊休不動産をシェアハウスなどに活用するものが注目されます。

 このように、ITや旅行・不動産に関連した起業では、それぞれの分野でのトレンドを意識したもの、そこに更に一工夫あるものが採択されている傾向にあるように思われます。

 

 教育に関するものといえばまず、子供の教育に直接関係するものがあります。教育の手法や教材など、学習や教育のシステムそのものに事業の独自性(既存の事業者との違い)がありそうです。

教育に関するものは、対象を子供に限定しているわけではありません。採択件数としては、むしろ子供以外を対象とするもののほうが主流と呼べるでしょう。これも少子化の影響と言えるのかもしれません。

具体的には、外国人留学生や映画業界で活躍したいと思っている人など対象を絞っていくもの、空手とかブラジリアン柔術というように分野や競技種目などに独自性を打ち出すもの、農業ビジネス大学校とかインストラクター認定事業というように、教育サービスのシステムを確立するものなどがあります。

 

 個別の業界業態のなかで採択件数が顕著に多かったものが、美容に関するものです。これは、美容業界(美容室、エステティックサロン、ネイルサロンなど)が過当競争の状態に置かれていることのではないかと想像させるものでもあります。

  美容というと、女性だけが顧客ターゲットというわけでもありません。男性をターゲットとするものも当然、あります。地域・顧客対象・従業員の特徴など何らかの絞り込みで特徴のある事業を目指しているものが多いようです。

  製販のところでも見られたように、その業界そのものでなく、その業界のビジネスをサポートするものも起業アイデアとしてあります。

 

 以上の7業種業態以外のものにも、創業補助金の採択事例はいろいろとあります。その大半は、新たなサービスを提供するものです。

代表的には、環境や高齢化といったテーマに直結するものがあり、現実の社会的な課題や経営上の課題を解決できるように起業するものがあります。

その一方、創業補助金という名称からも予想できるように、中小企業や起業を支援するサービスを起業しようとするのも、目立つ存在です。また、いわゆる士業のなかで独自のサービスを展開しようとするものもあります。そして、地域や商店街の活性化にダイレクトにつながる起業アイデアも採択されています。

 

 公表されている資料の限界とはいえ、採択事例のテーマだけを見ると、採択された理由や事業内容などがよく分からないものも少なくありません。

 たとえば、FC契約や暖簾分けによる開業というのも、創業・起業に違いはありませんが、それだけでは創業補助金という制度で補助対象とするものとは思えません。テーマで表示されているもの以外に、独自の工夫や地域への貢献などがあってのことに違いないはずです。

 

 ところで、創業補助金の制度では、申し込みがあったものも採択された事例についても、代表者の属人的な情報(年齢、性別、最終学歴、家族構成、現職、これまでの職業経験、過去の起業経験など)は、個別にも集約されたものも公表されていません。その結果、創業補助金の政策目的がどの程度実現されているのか不明です。

たとえば、若手や女性の起業を重点的にバックアップしようとしているとしても、実際に申し込んだ人や採択された人の年齢分布や男女比などのデータが明らかにならなければ、政策目的に沿って運営されているかどうかは、外部から判断できません。

また、属性情報が明らかになること以上に、創業補助金が本来の目的であるはずの「創業」を実現し、多少なりとも雇用の拡大につながっているのか、事後の検証も必要です。そのためには、5年とか10年といった一定の期間、補助金を受けた起業家や会社について、その経営状況をトラッキングするような調査も重要でしょう。

もちろん、こうしたトラッキング調査は、創業補助金に限ったことではなく、広く様々な補助金制度や起業に対する優遇措置のある融資制度などについて、フォローアップ・プログラムとして求められることは、改めて申し上げるまでもありません。

 

作成・編集:QMS代表 井田修(2017109日)更新

 

 

 

このサイトは、行政書士井田道子事務所のホームページです。