2015年8月から9月にかけて掲載した、株式会社エイチアールグロウス 座間保氏のインタビューを以下にご紹介いたします。

2015年9月15日

 


座間保氏スペシャル・インタビュー

第1回「人材サービスのインフラを作りたい」

株式会社エイチアールグロウス        代表取締役 座間 保 氏
株式会社エイチアールグロウス        代表取締役 座間 保 氏

 さまざまなベンチャー企業の「人材・組織・働き方」をご紹介していくインタビューの第4弾。

 

今回は、ウェブ・マーケティングの知見を人事管理・人材マネジメントの分野に応用して、新たな人材サービスの事業を展開されている、株式会社エイチアールグロウス 代表取締役 座間保さんにお話を伺います。

 

― はじめに、御社の事業についてご紹介ください。

 

座間さん 現在、取り組んでいるのは、中途採用を支援するサービスと転職した人たちの体験談を載せるメディアの運営サービスのふたつです。いずれもウェブサイトを活用したものです。

 

― 採用支援というのは、QSUKEというサービスですね。

 

座間さん そうです。QSUKEは、求人に特化したGoogleであるアグリゲーションサイトを活用し、お客様が自社HPに求職者を誘導して、より詳しく会社を知ってもらうことができるように支援するサービスです。

 

― もう少し詳しく教えてください。

 

座間さん QSUKEは求人広告のサイトではありません。

いま、多くの企業は、単にHPをもつだけではなくて、いわゆるオウンドメディアとしての活用を図っています。人材採用においても、オウンドメディアを活用したいところですが、求職者にはなかなか届かないのが実態でしょう。

 一方、いわゆる求人サイトというと、大手のサイトともなると、約5000社が登録しているとも言われています。また、大手のアグリゲーションサイトでは10万社と言われており、求職者からすると、自分にあった求人に出会うことが容易ではありません。

 

― 数千から数万から選ぶとなると、結局は、業種・業界、年齢・資格、職種や役職とか、勤務地や給与などの労働条件などで、条件を絞るだけになりそうですね。

 

座間さん それでは、求職者も自分にあった会社と出会うことが難しいでしょうし、登録されている企業も数が多すぎて、個々の会社はなかなか求職者に注目してもらえません。

また、広告サイトとなると、出稿料もばかになりません。特に中小企業やベンチャーにとっては、コストパフォーマンスも大きな問題です。

そこで、QSUKEは、ウェブ・マーケティングの知見を活用して、人材募集向けのアグリゲーションサイトから求職者を自社サイトに誘導できるように、お客様をサポートするサービスです。求人広告サイトではありませんから、広告掲載料や成功報酬も発生しません。

 

― QSUKEの強みというと、コストパフォーマンスとともに、自社サイトに誘導するノウハウということでしょうか。

 

座間さん 求人と一口に言っても、お客様の事情はさまざまです。より多くの求職者の集団から多くの人材を採用したい企業もあるでしょう。反対に、応募してくる人数は少なくてもいいから、採用してもすぐに辞めたり、戦力にならなかったりすることなく、自社にフィットした人や本当に戦力となる人が欲しい、という企業もあります。

そこで、アグリゲーションサイトから誘導してくるノウハウは異なりますし、それにあったサイトを作ることも当然、必要です。

 

― 理屈はわかっても、なかなか自社ですべて対応するのは困難ですね。

 

座間さん 特にベンチャーや中小企業ではそうですが、採用担当者はほとんどの場合、兼務であり、採用だけに特化していないので、採用に多くの時間を割けないというのも実情です。そうした採用担当者の方でも、手軽にご利用いただけるように、このサービスを運営しています。


QSUKE と Roots&Vision について    説明する座間さん
QSUKE と Roots&Vision について    説明する座間さん

― なるほど。それでは、次に、メディアの運営サービスについて、教えてください。

 

座間さん もうひとつのサービスは、Roots & Visionといいます。これは現状、転職者のインタビューを掲載するメディアですが、今後はインタビューとそこに登場している企業を直接、繋げていきたいと考えています。

たとえば、インタビュー記事の中に、バナー広告を入れて、そこに求人のアグリゲーションサイトやQSUKEなどを載せてはどうか、などと検討しています。

 

― かなりのペースで記事が増えているようですが。

 

座間さん 年内に300件くらいを予定しています。

 

― インタビューはどなたが担当されているのですか。やはり、プロのライターの方?

 

座間さん 今はプロのライターにも書いて貰っていますが、学生のインターンの皆さんにもお願いしています。

原稿の書き方やインタビューの進め方など、必要な業務スキルは事前に学習していただきます。そのうえで、インタビューを行うインターン本人が希望する会社や人を選んで、記事を書きあげるところまで行います。

 

― 私も学生だったら、やってみたいですね。仕事のやり方を、実践を通じて学びながら、お金も貰えるなんて、なんとも、うらやましい……ところで、このインタビューは、読者といいますか、ある程度、対象を絞って掲載されていますか。

 

座間さん ターゲットは27歳くらいで、転職に踏み切る前段階の人たちを想定しています。ちょうど、今いる会社の仕事はそれなりにできるようになったものの、このまま仕事を続けていくのがよいのか、疑問をもち始め、ちょっと外の世界を見てみようと思い始めたくらい、というところでしょうか。

 

― 記事とともに映像で表情が見えるというのは、いいですね。これを見たり読んだりしで、ちょっと興味をもった人は、どうすればいいでしょうか。

 

座間さん いまのところ読んでいただくだけですが、今後は、サイトの中でQ&Aのチャットを用意して、インタビューされているご本人に質問したり、その企業の人事担当者と直接話し合ったりしながら、転職活動を進められるようにできれば、と考えています。

 

― QSUKEとは別に、このメディアを立ち上げられた理由は?

 

座間さん 転職といっても、単に今が嫌だから辞めるというのでは、次のキャリアが開発されません。転職の前に、次のステップを考えてみることが重要です。

そのときに、漠然と考えるのではなく、何かの軸をもって考えなければ、転職の決断が適切にできないでしょう。その軸を何となく迷っている人たちに提示できればと考えています。


第2回「知らないからこそ、新しいアイデアを起業化できた」

株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏
株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏

 起業された会社がすでに3社目という、座間保さんへのインタビューの第2回は、起業されてきた経緯を中心にお話を伺います。

 

― ところで、座間さんはもともと不動産関連の会社にお勤めだったそうですね。

 

座間さん そうです。とてもいい会社でしたが、いま振り返ってみると、仕事の緊張感とか厳しさという点は、あまり感じられなかったかもしれません。

 

― 起業してみようと思われた、直接のきっかけは何ですか。

 

座間さん 私の友人がアメリカに留学していて、そこで知り合った人と3人で最初の会社を立ち上げました。

 

― それも人材関連?

 

座間さん いいえ、人材には関係ありません。新しいタイプの広告を扱う代理店です。

 

― 広告ですか。

 

座間さん アメリカに留学していた友人が、向こうのスーパーマーケットではレシートの裏を広告として活用するなどして、本業の小売業では利益が取れないところを、広告の収益で稼いでいるという話をしていました。インストア・マーケティングの一種です。

日本でもそういうビジネスをやったら、いけるんじゃないか、ということで、3人でチャレンジしてみました。

 

― いきなり、事業化されたのですか。

 

座間さん ビジネスプランとか戦略とか、いまなら少しは考えますが、当時は3人で行けそうだという感覚があったから、やってみたという感じです。

実際、やってみると、なかなか大変でした。たとえば、当時のスーパーマーケットでは、レシートの紙が感熱紙で、カラー印刷には不向きでした。そこで適当な紙や印刷方法を開発してもらったり、創業メンバーが駅前に立って、チラシ配りをしてみたり、いろいろとやりました。

 

― 事業が軌道に乗り始めたのは、いつごろですか。

 

座間さん そうこうするうち、3か月くらいたった頃でしょうか、ようやく初出稿が取れました、世田谷の地元のスーパーマーケットでした。

 それから、いろいろなスーパーマーケットに営業をかけていきました。そうこうするうちに、ある大手のナショナル・チェーンから配信許可を貰ってきました。

それをきっかけに、他のスーパーマーケットや大手のドラッグストアなどから受注できるようになり、1年半くらいのうちに、全国で約2万店に導入されるようになりました。


最初の起業について語る座間さん
最初の起業について語る座間さん

― 資金は、どうされたのですか。

 

座間さん 代表となった友人が政策金融公庫から300万円を借りてきました。これが大きかったですね。もちろん、これだけでは資金が回りませんから、実際のところ、創業当初、稼いでいたのは、HP作成を受託する仕事です。

自分たちは無給で働くのは覚悟していましたが、現実に銀行口座の残高が確実に減っていくのには、さすがに参りました。

 

― 創業から一定期間は、資金の問題は大変ですね。

 

座間さん お恥ずかしい話ですが、ビジネスプランとか資金計画とか、何もなかったです。ただ、何とか続けるには、どうしたらいいか、ということは、よく3人で話し合っていました。早め早めに、ダメにならないように対策を打つことだけは、実行できていたかもしれません。

 

― ビジネスプランや資金計画はなかったとは言っても、何かマイルストンとか事業を続ける目途みたいなものは、おもちではなかったのでしょうか。

 

座間さん 具体的に決めてあったものは記憶にありません。敢えて言えば、23年やってみて、どうしても芽が出ないなら、そのときはやめよう、というようなことは、代表とよく話していたことは覚えています。

 

― 不動産から小売業のインストア・マーケティングというと、かなり距離があるように思われますが。

 

座間さん 広告業とか広告代理店のことも、小売業のことも、事業の立ち上げ方とかも、何も知らないのに、よくやったなあと思います。

その半面、それぞれの業界について、従来のことを知らなかったからこそ、新しいやり方を提案して、それを現実のものにすることに、躊躇なくチャレンジできたのでしょう。

 新しいことをやろうとすれば、むしろ、従来のことを知らないことの方が、いいのではないかと思います。これまでを知っていると、どうしても旧来の枠組みでしか、ものを考えることができませんから。

 

― 知らないことの利点はわかりますが、何もないところでアイデアだけで起業して、事業化に漕ぎつけるには、何かポイントはありますか。

 

座間さん これといって、ベンチャー・キャピタルなどの有力なバックアップもなく、営業基盤もないなかで、潰れないようにするには、現実にどうやったら日銭を稼ぐか、が大事です。

そこを、私たちは、HP制作などで何とか対応しました。

そして、顧客に何をしたら喜ばれるか、その一点に注力して知恵を絞ったり、汗をかいたりすることも経験しました。少なくとも、お客様のために汗をかくことだけは、忘れてはならないでしょう。


第3回「チームで起業するのに必要なもの~資金、人材、そして、理念・ビジョン」

株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏
株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏

いまのビジネス(人材サービス)を含めて、起業に関わられたのは3社目となる座間保さん。第3回は、これまでのご経験から実感されている、起業する者が心得ておくべきことや起業家のとるべき行動などを伺いました。

 

― 前回お伺いした、最初に起業されたインストア・マーケティングに特化した広告代理店のビジネスは、その後どうされたのでしょうか。

 

座間さん 実は、レシートの裏を使った広告を採用してくれた大手のナショナル・チェーンには、ある大手の広告代理店の関連する会社がインストア・メディアを扱う代理店として、既に入っていたのです。そのことすら、私たちは知りませんでした。今となっては、ありえないことですが。

 その代理店にうちの代表が呼びつけられました。先方にすれば、何を勝手なことをやっているんだ、ということでしょうね。

 

― それは、もめそうですね。

 

座間さん ところが、どういうわけか、代表が先方に気にいられまして、結局、先方がうちのほうを買収することで話がつきました。こちらが泥臭いやり方ながらも、顧客を掴んでいたことも評価されたのかもしれません。

その結果、株を売却して子会社化されたので、買収された会社で1年半ほど仕事をしました。

 

― いきなり、エグジットですね。それからは、どうされたのですか。

 

座間さん もともと、現場の人たちに興味があるというか、採用、仕事の進め方、評価など、人材のマネジメントについて、サラリーマンの頃から関心といいますか、自分なりに問題意識はもっていました。

多分、できあがった会社に勤めていた経験、ゼロから立ち上げて急成長していった会社の経験、その両方から、人材そのものとか、そのマネジメントに関わるビジネスをやりたい、という気持ちがでてきた気がします。

 

― 今度は、どこから起業をスタートされたのですか。

 

座間さん いきなり起業するというのは、いろいろな面で難しいことは経験済みです。

そこで、まずは、資金の裏付けを確実にしようと思い、不動産ビジネスを手掛けました。私はもともと不動産ビジネスに関わっていたので、税金などの面も考慮して、個人でやるよりは、法人としてやったほうがいいと判断して、不動産のビジネスを行うことにしました。

ある程度、日銭ではありませんが、日々のキャッシュを安定化させる仕組みを作ってみました。少しは、資金面で余裕がないと、何をするにしても気持に余裕がもてません。

それに、資金の心配は起業する人自身がすればいいことで、一緒に働いてくれる人たちまで巻き込む必要はないと思います。コスト意識はないと困りますが、「銀行口座から残高が減っていく恐怖」という経験を、皆がする必要はないでしょう。

 

― 起業で最大の問題は、やはり、資金かもしれませんね。

 

座間さん まあ、どんなビジネスをやろうとするにしても、初めの12年は無給を覚悟しておかなければなりません。そうなると、継続的なキャッシュインが望めるものが必要になります。

 すぐにできる日銭稼ぎとなると、目に見えないソフトやシステムというよりは、目に見えるモノを介在させたビジネスのほうが、いいと思います。在庫などの資産を、できる限りリスクを減らしながら現金化していくスキームが、ちょうどいいでしょう。私の場合、やはり前職の経験から不動産に関連したものとなったわけです。


人材サービスの起業について語る座間さん
人材サービスの起業について語る座間さん

― それから、いよいよ人材関連のビジネスを始められたのですか。

 

座間さん そうです。エイチアールグロウスを立ち上げました。

 

― 資金面の準備はできても、人材面は?

 

座間さん これは、理念やビジョンを軸に多くの人々に語っていき、「知り合いの知り合い」を紹介してもらうことで、いっしょにやってもらう人たちと出会っていけば、何とかなるものです。

 まあ、100人に語ってもダメなら、1000人に話しかける、泥臭いかもしれませんが、十分に効果的だと思います。

 

― けっこう時間がかかりませんか。

 

座間さん ええ、実際には10カ月かけて、ようやく、いっしょにやってもらうことになった人もいます。

 

― 座間さんが語ってきている、理念とかビジョンというのは、何でしょうか。

 

座間さん 一言でいえば、人材サービスのインフラを作りたい、ということに尽きます。

そのためには、たとえば、採用という点では、間違いなく、マーケティングの考え方や手法が必要でしょう。特に広告の技術、なかでもウェブ・マーケティングの知見を活用して、旧態依然の人事の世界に新しいものを導入していくことが不可欠と思います。

また、課題はありますが、リマーケティングの技術などを活用すれば、転職希望者にその人に合った会社や職場を追跡して紹介するといった手法が、必要でしょうし、十分に実現可能なものです。

 

― 確かに、人事や人材マネジメントの分野では、ITやマーケティングの手法が十分に活用されている、とは言えないのが現実ですね。

 

座間さん 特に、われわれも含めたベンチャー・ビジネスや中小企業が気軽に使える仕組みを実現するということも、やる意義のあるサービスではないかと考えています。

 

― そうしたビジョンについて、社内でもよくお話しされているのですか。

 

座間さん そうですね。ただ、これは、起業する人にもよるし、一緒にやってくれる人たちによるとは思いますが、一般に、ベンチャー・ビジネスのリーダーというと、ビジョンを語る以上に、どうしてもマイクロ・マネジメントをやりたがる傾向が強いように思います。そうでないと、起業なんてできないということかもしれませんが。

 

― ビジョンを語っているつもりが、いつの間にか説教になってしまう?

 

座間さん まあ、自分では、できるだけ、マイクロ・マネジメントにばかり注力しないように、心掛けているつもりです。

むしろ、理念とかビジョンについて、いつでも話すことで、判断基準というか検討する軸というか、お互いに共有できるものを作りながら、ビジネスを進めています。ですから、いっしょにミーティングするなかで、一方的に反対意見を否定したり無視したり、私の意見を押し通したりすることは、なるべくしないように心掛けています。

 

― ただ、そうすると、意思決定に時間がかかってしまうことはありませんか。ベンチャーにとって、時間とかスピードというのは極めて重要なものと思いますが。

 

座間さん 考えて意思決定をするための軸がぶれては、いかにスピードのある意思決定でもダメでしょう。軸がぶれないように理念やビジョンを日頃から話し合っていれば、意思決定に時間がかかって問題になるということは、まず、ありません。

 

― カリスマ・リーダーが引っ張っていくだけでは、起業はうまくいかない?

 

座間さん 事業のアイデアはあったとしても、それを細部まできちっと詰め切るには、自分ひとりで考えていては、年商10億円くらいまでは行くと思いますが、その後のスケールは無理だと思います。必ず、一緒に考えたり、試行錯誤してくれたりする人が必要です。

 

― 「起業はチームで」とよく言いますが。

 

座間さん 本当に他社に真似されない競争優位性というのは、組織を作ることではないでしょうか。

革新的な製品やサービス、それを実行するためのシステムやマニュアル、それらを支えるテクノロジーやノウハウや最新の知見など、確かに競争力に不可欠ですが、それらをいかに継続的に生み出すか、の方が重要です。そうした競争力を生み出すことができる、組織や人材を作り出すことが真に重要ではないかと思います。

そのためには、企業としてもつ社風とか社員に共有されている価値観とか、組織の目に見えないところにこそ、ポイントがあると思います。そこに対して起業する者ができることといえば、理念やビジョンを語ることではないでしょうか。


第4回「起業でも転職でも、本当にやりたいことに出会える人を、一人でも多くしたい」

株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏
株式会社エイチアールグロウス       代表取締役 座間 保 氏

 主に転職市場において人材サービスを展開されている座間保さん。第4回は人材市場および次のサービスについて、お話を伺います。

 

― ところで、人材マーケット、特に転職市場については、どのように見ていらっしゃいますか。

 

座間さん 中途採用と一口に言っても、企業の欲しい職種や年齢層は多種多様ということです。案外、一般の方も、求職者の方も、これは見落としがちな点かもしれません。場合によっては、営業職で4050歳なども求める企業もあります。

 

― ある種の思いこみみたいなものが、人材と企業のマッチングを妨げているのかもしれませんね。

 

座間さん 採用条件として事前に提示できる事項でも、意外にずれていることがあります。

派遣社員であっても年収1000万円超の人もいますが、そこから正社員になろうとすると、年収は減ってしまいます。では、年収を下げずに、むしろ年収アップを狙いながら、正社員になるには、どのような業界・役割・ミッションなどが求められるのか、単純に年収だけを見て決めるわけにはいきません。

 

― さらに、マッチングが難しいこと、無視できない大事なポイントがありますね。

 

座間さん そうです。社風や上司との関係といったものとなると、なかなか入社前にチェックすることも難しいですし、そもそも自分がどのような社風、どのようなタイプの人と、合うのか合わないのか、わかっている人は少ないでしょう。

 ですが、こうした点こそ、マッチングがうまくいかないと、短期間で転職を繰り返すことになってしまいます。特に若い人ほど、上司と上手くいくか、社風に合うか、ということは、就職・転職に際して考慮すべき重要なファクターではないでしょうか。

 

― 本来、エージェントは、そこをうまく橋渡しできてこその、エージェントのはずですが。

 

座間さん すでにレコメンド型の採用を行っている人材紹介サイトもあります。これは、今まで蓄積された採用基準と似たような人を採るだけであれば、簡単かもしれませんが、今までに全くない形態のビジネスに向けた採用には、難しいでしょう。

 

― 確かに難しいとは思いますが、誰かを採用しないとビジネスが立ちいかなくなります。

 

座間さん まだ、検討段階ですが、「シャイン(=太陽と社員をかけたネーミング)」というシステムを立ち上げる予定でいます。これは、採用と社内システムを連係させて、社内で評価される人がどんな人かをリサーチしたうえで、採用につなげるシステムを考えています。いわば、本音で評価されている人を採用しましょう、という仕組みです。


会議室にて
会議室にて

― それは楽しみですね。

 

座間さん たとえば、求人票で書いていることの本音と建て前を、アルゴリズムを組んで分析することは不可能に近いでしょう。もしかすると、膨大なデータを蓄積できれば、原理的には可能なのかもしれませんが。

 そこで、それに代わるものとして、シャインを考えています。

 

― 新卒についてはいかがですか。何らかのサービスを提供される予定はありませんか。

 

座間さん 新卒マーケットは、大手の寡占状態が強く、いまのところは、参入するつもりはありません。

 とはいえ、新卒で採用された学生が、3年以内に3割辞めるなどと言われています。これは、採用する側にとっても多大なコストをかけている分、実に損なことと言わざるを得ません。

 

― となると、第二新卒あたりからサービスを提供していくことになりそうですね。

 

座間さん 入社して3年で3割、次の3年でまた3割、30歳くらいまでには半分も残っていないのが、新卒を採用し続けている大企業でよく見られる現象です。この層の人たちに、Roots & Visionを見て頂きたいですね。

 QSUKEも同様ですが、弊社で提供しているサービスは、基本的に、小規模で働きやすい会社を応援したいと考えて、生み出したツールです。

 多くの大企業の陰に隠れて、なかなか人材マーケットで注目されにくかった企業であっても、今ではウェブの技術やマーケティングの知見などから、無駄なコストをかけずに、求職者のもとに情報を届けることが可能となってきています。

 

― 転職する人は、もともと大企業にいたかもしれなくても、採用する企業はベンチャーや中小企業を念頭に置いているわけですね。

 

座間さん そうです。起業に限りませんが、転職も本当にやりたい業界・業種と出会うことが重要です。むしろ、一緒にやりたい人(上司や経営者)や会社と出会うことが重要、というべきかもしれません。そうでないと、起業した後、転職した後に、必ず訪れる壁とかハードルを乗り越えることができないと思います。

 弊社のサービスが、一人でも多くの人にそうした出会いを実現する、きっかけとなれば、起業にチャレンジした甲斐があります。

 

― 今日はいろいろと興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

 

インタビューを終えて

インタビュー終了後、写真撮影中に、起業を再度チャレンジされた理由をお聞きしたところ、仲間とワイワイやっているのが好きだから、と、ふと漏らされた一言が印象的でした。

もしかすると、これが、起業を成功させる秘訣なのかもしれません。

 

写真・構成・文章作成:行政書士井田道子事務所+QMS



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