さまざまなベンチャー企業の「人材・組織・働き方」をご紹介していくインタビューの第5弾。
今回は、来月出版される「プロジェクト現場のメンタルサバイバル術~16の物語から読み解くプロジェクトマネジメント術と人間術」(鹿島出版会)の執筆統括を務められた、株式会社ダイバーシティ・コンサルティング 代表取締役 柏陽平さんにお話を伺います。
― 「プロジェクト現場のメンタルサバイバル術」の刊行、おめでとうございます。
柏さん どうも、ありがとうございます。
― この本の狙いといいますか、出版されようとされたきっかけは何でしょうか。
柏さん 私自身は、IT企業ではなく自動車メーカーのIT部門にいたので、日本の典型的なSEではないかもしれませんが、ITプロジェクトのプロジェクトマネージャーを長年務めてきました。友人や知人でIT業界にいる人間もいます。
そうしたなかで、IT業界やそれに関連するビジネスでは、まだまだ組織的な成熟度が低く、メンタルヘルスが問題となる大きな要因になっている気がします。
― メンタルヘルスの問題といいますと、どういう問題が発生するのでしょうか。
柏さん たとえば、1人のSEが6カ月休職したとしましょう。実際、よくあることです。
休職前後の各3か月も実質的には戦力にはなりませんから、通算で12か月程度は仕事になりません。すると、1人月100万円の売上とすれば、SE1人が12カ月稼働しなければ、年間で1,200万円の売上ダウンです。
もし、この会社が1,000人のエンジニアを抱えているとすれば、少なくとも5%は、メンタルヘルスの面で問題を抱えるなどの理由で休職していると経験上、推定されますから、1,200万円の50人相当分、つまり、6億円のマイナスになってしまいます。
― 現実には、休職した人が担当していたプロジェクトを引継ぐとか、直接の売上減だけでは済まないダメージも、相当ありそうですね。
柏さん その通りです。誰かが潰れてから対応したのでは、直接的にも波及効果の点でも、企業経営上、大きな損失が発生してしまいます。そうならないように、事前に手を打つのが、賢い経営ではないでしょうか。
― 潰れてしまったエンジニア個人にとっても、企業全体にとっても、何の得にもなりませんね。
柏さん そうです。さらに言えば、仕事を発注して頂いたお客様にも、ご迷惑をお掛けることになるでしょう。
もちろん、エンジニア個人のキャリアを潰してしまう恐れをあります。
― 確かに、プロジェクトマネージャーが潰れても、当人の問題としか、認識されてこなかったかもしれませんね。
柏さん どうしても、メンタルヘルスとかストレスマネジメントというと、精神科医の扱う問題や福利厚生面の課題といった認識しか、されないかもしれません。企業にとっても個人にとっても、問題を元から解決しようとすれば、仕事の構造とかワークスタイルそのものを、改善・改革していかなければなりません。
― 具体的には?
柏さん エンジニアは真面目です。適当に流しておくとか、他人のせいにして責任逃れをするということがありません。だから、放っておくと、プロジェクトマネージャーとなったエンジニアが、すべてを抱え込んで潰れてしまうのです。
プロジェクトマネジメントのやりかた、適切なプロジェクトマネジメントを行うのに必要なスキル、プロジェクトを進める上でのヒューマンスキル、これらを改善していかないと、いつになっても、ITプロジェクトを進めるほどメンタルに問題を生じるエンジニアが増え続けるだけ、ということです。
基本は、プロジェクトマネージャー個人に任せるのではなく、組織全体、プロジェクト全体で、仕事のやり方や環境を変えて生産性を向上させていこう、ということです。
― なるほど。さきほどの試算でも、年間6億円のロスが想定されていたわけですから、1億円かけて仕事の構造やワークスタイルを改善しても、十分にお釣りがきますね。こうした問題意識から「プロジェクト現場のメンタルサバイバル術」を編集・発行されることになったわけですね。
柏さん プロジェクトマネジメント学会編となっており、厚さもある本ですから、難しいように思われるかもしれません。内容は、わかりやすく具体的で、プロジェクトマネジメントに関わっている方々に、ヒントとなるものをご提供しようと意図しています。
― どのあたりが特徴的なのでしょうか。
柏さん 実務経験豊かな執筆陣ですから、さまざまな具体例を御存じです。もちろん、事実そのままを書いているわけではありませんが、事実をベースにしたストーリーを書いていただいています。
― それが、第1章で描かれている16のエピソードですね。
柏さん そうです。IT関連で仕事をされている方であれば、いくつか思い当たるところがあるのではないでしょうか。主人公が一人称で語ることで、読者が主人公に共感し、追体験できることを狙っています。
この本では、こうしたストーリーを、ITとかプロジェクトマネジメントといったことに直接、関係のある方はもちろん、そうでない方々にも、知っていただきたく思います。
ご本人がそうした仕事をされていなくても、ご家族とかパートナーとか友人とか、ITに携わっている人が身近にいらっしゃれば、最悪の場合どうなるのか、それを避けるにはどのような点に注意していたらよいのか、いわば、ケーススタディとして読んでいただくことも可能です。
― 後半は、エピソードというよりも、ヒントを提示されているようですね。
柏さん はい。第2章、第3章では、16のストーリーから得られるヒントをまとめています。特に、プロジェクトにおけるストレスを効果的にマネジメントする理論や方法論を、わかりやすく解説しているつもりです。
― これだけの本を取りまとめるとなると、その作業自体が、一大プロジェクトですね。
柏さん そうですね。私も、この本をとりまとめるというプロジェクトのマネージャーとして、結果が出せたことは、うれしいのですが、一緒に執筆してくださった皆さんが、『またいっしょにやりたい』と仰っていただけたことが、やってよかったと心から思えた瞬間でした。
(2015年9月27日掲載)
今月出版される「プロジェクト現場のメンタルサバイバル術」の執筆統括を務められた柏陽平さんへのインタビューの第2回。今回は、本業のビジネスについて語っていただきます。
― 話が前後してしまいますが、ダイバーシティ・コンサルティングという会社は、何を事業とされているのでしょうか。
柏さん 第1は、IT系のエンジニアを対象としたヒューマンスキルのワークショップ・研修の事業です。
― 前回お伺いした、プロジェクトの現場における生産性向上を狙いとしたものですね。
柏さん たとえば、チームビルディングの研修では、プロジェクトチームを主体的なものに変えていくのが狙いです。
よくある失敗は、プロジェクトマネージャーがすべて抱え込んでしまって、誰にも相談できる雰囲気がなく、結局、マネージャーが潰れてしまう、というものでしょう。
こうした典型的な失敗をなくすには、マネージャーがメンバーにうまく頼って問題を解決しながら、プロジェクトを進めていく、そういうワークスタイルに変えていくことが必要になります。
そうしたことが実行できる仕事の構造やワークスタイルを実現するには、どのようにプロジェクトマネジメントに取り組めばよいか、それを実感して、そのためのスキルを習得していただくワークショップや研修を行います。
― どういう流れになりますか。
柏さん まず、そのプロジェクトのビジョンを明確に示して、目標とか到達すべきゴールを、チーム全体にはっきりとさせてあげることです。これはプロジェクトマネージャーがメンバーに提示すればいいわけです。
― 次は?
柏さん いきなりゴールにはたどり着けませんから、現在地からゴールに至るまでのマイルストンを明確に示すことが必要です。マイルストンには時間軸もありますが、その達成基準やそのときに想定されるチームの状態なども示すことになります。
― なるほど。
柏さん こうして、それぞれのマイルストンごとに、そこに至るプロセスを提示していくことになります。ここでのポイントは、プロジェクトの1合目にあたる最初のマイルストンを、少しだけ、がんばれば達成可能なものでセットし、メンバーにもこうすればできる、1合目につけばゴールまでの道筋も見えてくる、という感覚をもたせることです。
― それから?
柏さん プロジェクトの当初は、マネージャーが自ら引っ張るリーダーとしての役割が大半です。プロジェクトが進むに従って、3合目や4合目では明らかにリーダーの役割が低下し、ファシリテイタ―やメンターの比率が高まっていきます。
イメージとしては、5合目で、リーダー30%、ファシリテイタ―50%、メンター20%でしょうか。7~8合目あたりからは、リーダーは10%もないくらい、ファシリテイタ―20%、メンター70%、というところです。
― それぞれの役割を簡単に説明してください。
柏さん リーダーが自分で意思決定してメンバーに指示するものとすれば、ファシリテイタ―はメンバーの話を聞いてメンバーに意思決定させることで、仕事を進めていきます。
メンターは、メンバーの相談に乗り、同時にメンバーから学ぶことで自分もメンバーも成長していく役割です。メンバーに対して日頃から、「ありがとう」と言葉に出して伝えることや、メンバーから学ぶ姿勢を見せることが求められます。
― 一人のプロジェクトマネージャーが、プロジェクトの進み具合に応じて、異なる役割を果たしていくことになるのですね。
柏さん そうです。それを可能とするには、必要なスキルセットがあります。
はじめに、プロジェクトマネジメントのスキルは大きく分けて、ハードスキルとソフトスキルがあります。
ハードスキルというのは、プロジェクトマネジメントに関する知識や、スケジューリング法などの技術、目標設定とタスクへの落とし込みといったプロセスマネジメントの方法論などです。
ソフトスキルというのは、ヒューマンスキルとか人間関係に関するスキルです。最も基本となるのは、聴く力です。メンバーから当面のリスクや課題を聞きとりながら、その解決策をメンバー本人に考えてもらうとか、より広く関係者を集めて、プロジェクトの現状に対して期待されることや懸念される事項を話し合うミーティングを開催して、いろいろな意見を引き出すとか、実はプロジェクトマネジメントの肝となるスキルです。
― どちらかに偏ったら、トラブルが起きそうですね。
柏さん 残念ながら、設計技術やプログラミングなどの技術者としてのスキルは重視しても、プロジェクトマネジメントのスキル、特にソフトスキルを無視してプロジェクトマネージャーを選ぶ企業が、まだまだ少なくありません。
だから、メンタルヘルスやプロジェクトマネジメントの面で問題がなくならないのです。将来的には、研修などの一過性のものではなくコンサルティングとして、継続的に組織環境の改善に関わっていけたらと思います。
― なるほど。
柏さん こうして、それぞれのマイルストンごとに、そこに至るプロセスを提示していくことになります。ここでのポイントは、プロジェクトの1合目にあたる最初のマイルストンを、少しだけ、がんばれば達成可能なものでセットし、メンバーにもこうすればできる、1合目につけばゴールまでの道筋も見えてくる、という感覚をもたせることです。
― それから?
柏さん プロジェクトの当初は、マネージャーが自ら引っ張るリーダーとしての役割が大半です。プロジェクトが進むに従って、3合目や4合目では明らかにリーダーの役割が低下し、ファシリテイタ―やメンターの比率が高まっていきます。
イメージとしては、5合目で、リーダー30%、ファシリテイタ―50%、メンター20%でしょうか。7~8合目あたりからは、リーダーは10%もないくらい、ファシリテイタ―20%、メンター70%、というところです。
― それぞれの役割を簡単に説明してください。
柏さん リーダーが自分で意思決定してメンバーに指示するものとすれば、ファシリテイタ―はメンバーの話を聞いてメンバーに意思決定させることで、仕事を進めていきます。
メンターは、メンバーの相談に乗り、同時にメンバーから学ぶことで自分もメンバーも成長していく役割です。メンバーに対して日頃から、「ありがとう」と言葉に出して伝えることや、メンバーから学ぶ姿勢を見せることが求められます。
― 一人のプロジェクトマネージャーが、プロジェクトの進み具合に応じて、異なる役割を果たしていくことになるのですね。
柏さん そうです。それを可能とするには、必要なスキルセットがあります。
はじめに、プロジェクトマネジメントのスキルは大きく分けて、ハードスキルとソフトスキルがあります。
ハードスキルというのは、プロジェクトマネジメントに関する知識や、スケジューリング法などの技術、目標設定とタスクへの落とし込みといったプロセスマネジメントの方法論などです。
ソフトスキルというのは、ヒューマンスキルとか人間関係に関するスキルです。最も基本となるのは、聴く力です。メンバーから当面のリスクや課題を聞きとりながら、その解決策をメンバー本人に考えてもらうとか、より広く関係者を集めて、プロジェクトの現状に対して期待されることや懸念される事項を話し合うミーティングを開催して、いろいろな意見を引き出すとか、実はプロジェクトマネジメントの肝となるスキルです。
― どちらかに偏ったら、トラブルが起きそうですね。
柏さん 残念ながら、設計技術やプログラミングなどの技術者としてのスキルは重視しても、プロジェクトマネジメントのスキル、特にソフトスキルを無視してプロジェクトマネージャーを選ぶ企業が、まだまだ少なくありません。
だから、メンタルヘルスやプロジェクトマネジメントの面で問題がなくならないのです。将来的には、研修などの一過性のものではなくコンサルティングとして、継続的に組織環境の改善に関わっていけたらと思います。
― なるほど、研修で終わらず、実際に現場に定着させることは大事ですね。ところで、御社のサービスは研修やワークショップだけではなかったですね。
柏さん 翻訳事業ですか、これは日英の翻訳を行うものです。ソフトウェアやプロジェクトマネジメントに関するものもありますが、精神障害や発達障害に関する支援をしていた際の知識や実体験を強みにして、障害支援に役立つITツールの翻訳を主に行っております。
― たとえば、どういったものがありますか。
柏さん スマートペンというのですが、特殊なノートに書いたメモや文章が、テキストデータや画像データとして保存・共有できたり、録音したものを音声データとして再生できたりするものです。もともと、アメリカで開発されたものを、日本では大手教育出版会社が導入して販売しています。この製品に関する翻訳を行いました。
実はこの製品、文字認識に障害がある人やADHDのある人などを意識して開発されたものです。アメリカには、障害のある人に向けたITツールが、これ以外にも数多く製品化されています。
― 翻訳ならではのご苦労は、何かありませんか。
柏さん 英語を翻訳するのは、私以上にできる方が多くいると思います。ただ、この文章を書いた人は何を伝えたいのだろうという文脈(コンテクスト)を把握して、元の言語と違う言語にしても伝えたいことを正確に伝えるという点に、かなり気を使っています。どう伝えれば読者がより理解しやすいかを考えるという意味では、翻訳はまさにコミュニケーションですね。
― 人事関連の勉強会の運営も、されていますね。
柏さん 「人事労務担当者のための『メンタルヘルスと労務管理』勉強会」というものを、構造計画研究所さんが共催しています。年に何回か、その時々のテーマを決めて、さまざまな業種業界の人事の方々が、お互いに悩みを共有しながら解決策を探っていくものです。
(2015年10月4日掲載)
株式会社ダイバーシティ・コンサルティングを起業されて3年目となる柏陽平さん。第3回は、起業に至るまで経緯を中心にお話を伺います。
― ところで、柏さんは2013年に起業されたそうですが。
柏さん そうですね、ダイバーシティ・コンサルティングを設立したのが2013年です。当初は、ベンチャー神田に入居していました。
― われわれの先輩ですね。
柏さん そうですね。入居期限のこともあり、今年の4月から、ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAに移りました。
― もともと何か起業してみたい、といった希望をおもちだったのでしょうか。
柏さん はい。何か新しいことを創り出したいというポジティブな面と、ネガティブな面の2つが動機としてありました。
実は、私は小学校2年生のころから、心身の不調に長年、悩まされてきました。記憶があいまいなので原因が不明ですが、突然、他の人間に対して説明できないような恐怖と不安が生まれ、不眠、過呼吸や不登校気味になりました。今でも、男性の笑い声やカメラの撮影の音を聞くと、恐怖で身体が固まります。なぜなのかまったく分かりませんが。
また、そうしたことを人に知られるのではないか、という恐怖心も強く、仕事をしているときには普通に見えても、プライベートとなると大変でした。
― 学生や社会人の頃は?
柏さん 大学は経済、大学院は商学、特にIT戦略を専攻しました。それから自動車メーカーに就職しました。
そこで、IT関連のプロジェクトを企画しマネジメントする仕事をしていました。特に、ERPパッケージシステムのグローバル集中保守運用業務を立ち上げるプロジェクトで、インドのスタッフをプロジェクトメンバーにもちました。
― 言葉の問題、物理的な距離の問題、ビジネスを取り巻くカルチャーの違いなど、難題だらけのプロジェクトのように想像されます。
柏さん 確かに、楽な仕事ではありませんでした。
ただ、言葉といっても、英会話だけで打ち合わせをするわけではありません。たとえば、ペーパーに書いたり、図で示したりすることで、相互に意思疎通を図ることは十分にできます。
実際、プロジェクト終了後、インド人のプロジェクトメンバーから、「お前の話はよくわかった」と言われました。単にTOEICが何点だから、実際に英語が使えているということにはなりません。
― そのまま、やっていけそうな感じですが。
柏さん いまお話したプロジェクトが一段落ついたところで、そのメーカーを退職しました。ちょうどいいタイミングということもありましたし、体調の問題もありました。
少し話は戻りますが、成長するにつれて、心身の不調は周期的に起こっていました。相手の感情がまったくわからないままに、極端に社交的になったり、反対に引きこもったりして、大変でした。自分で何とかしないと、周囲に迷惑ばかりかけるのはわかっていても、自己肯定感がもてないままでした。
そういう状態でしたから、カウンセリングを受けることはありました。なかには、とてもカウンセリングとは呼べないようなものにも、遭遇したこともあります。
自分にとって一番リカバリーに役立ったのは、自分と同じ当事者同士が行う、語り合い、聴き合い、学び合うワークショップでした。
― それで、いま取り組んでいらっしゃるビジネスで起業されたのですか。
柏さん 自分が受けていた、カウンセリングの技術やワークショップのファシリテーションが、プロジェクトマネジメントに使えることに、ある時、気がつきました。多分、個人的な経験と仕事上の経験が両方あったからこそ、こうした技術を活用してプロジェクトマネジメントを効果的に行うことを、事業化できそうだ、と自信をもてたのではないかと思います。
― ことわざでいう、災い転じて福となす、ですか。
柏さん 結果論かもしれませんが、起業を通じて、自分の思っていることを表現できるようになりました。自分をありのままに出せるようになっていたのです。不思議なもので、起業することで、なりたい自分になれていることに気がつきました。いまでは、心身の不調も治まるようになっています。
もちろん、起業ですから、自分にとって新しいことに取り組みます。そこから得られる、ワクワク感といいますか、新しいことをやりたい気持ちを実感できるのも、起業の動機かもしれません。
(2015年10月11日掲載)
IT業界において、チームとして、より生産性を上げられるように、プロジェクトマネージャーを助けるサービスとともに、発達障害の人々をサポートするツールの紹介なども積極的に行っている柏陽平さん。
第4回は今後の事業展開について、お話を伺います。
― 前回、起業された経緯や動機についてお伺いしましたが、今後の事業展開という点では、どのようにお考えでしょうか。
柏さん 現状は、セミナーなどに呼んで頂いてストレスマネジメントやメンタルヘルスのお話をさせていただくとともに、ヒューマンスキルを習得できるワークショップなどを、企画中です。
― 収益的にはいかがですか。
柏さん ビジネスとなると、なかなか大変です。IMの方々にも、いろいろとご指導をいただいてきましたが、数字の面では、まだまだです。
数字といえば、自分で会計などをやるようになってみて、高校時代に学んだ簿記会計の知識が最も役に立つことがわかりました。今でもエクセルひとつで、自分で対応できます。
― 営業活動というと、どのように取り組まれていますか。
柏さん 名刺交換をどれほどやっても、なかなか仕事にはつながりません。やはり、私のことをよくご存じの方でないと、直接、仕事につながるようなお話には、なかなかなりません。
これでも、テレアポとか飛び込み営業なども、やっているんですよ。やればやったで、話くらいは聞いてもらえるパターンみたいなものは、わかってきましたが。
― サービスの開発は?
柏さん チームとしてのストレスマネジメント、チームの主体性を引き出すワークスタイル、もちろん、プロジェクトマネジメントやプロジェクトマネージャーに関するものなどをテーマに、半日から1日程度の研修プログラムや個人向けに2時間程度のワークショップなどを企画開発していきたいと考えています。
― 研修やワークショップといえば、どのように効果が出てくるか、といった点も無視できません。
柏さん そうですね。研修内容の定着化という点では、3か月くらいの周期でフォローアップなども行いたいですね。特にソフトスキルというのは、知っているかどうかよりも、実行されているかどうか、が大事です。その点をフォローできるようなサービスも検討中です。
よく言いますが、本に書いていることがいいと思っても、読者のうち実行する人は30%程度で、70%の人はやらないそうです。トライしてみた30%の人にしても、1回やってうまくいかずに、それっきりになってしまうのが20%で、残りの10%の人だけがその失敗を自分なりに反省して、できるようになり、自分のものとなっていくそうです。
― その10%の人を少しでも増やすことができるように、後押しできるようなサービス、期待しております。
今日はいろいろと興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
インタビューを終えて
執筆統括を務められた「プロジェクト現場のメンタルサバイバル術~16の物語から読み解くプロジェクトマネジメント術と人間術」(鹿島出版会)の出版記念パーティーが、発行当日の今月7日に千代田区内で催されました。
当日は、プロジェクトマネジメント学会メンタルヘルス研究会の皆さんをはじめとして、多数の来場者がありました。
出版社の方のお話では、こういったパーティーで出版された書籍の直売をされることはよくあるそうですが、このときほど多く売れた記憶はないそうです。やはり、メンタルヘルスへの関心の高さや、物語で問題を提示するという本書の特徴が注目を集めているのでしょう。
また、一昨日には、柏さんの講演とワークショップが大田区内で開催されました。こちらは、現実にITプロジェクトに従事されている方々が参加者の中心でしたので、皆さんの関心が高いことはいうまでもなく、柏さんが主導されたワークショップも、なかなかの盛り上がりを見せていました。
(2015年10月18日掲載)
写真・構成・文章作成:行政書士井田道子事務所+QMS
このサイトは、行政書士井田道子事務所のホームページです。